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1日目 そういえば教習所は警察の世界だった

朝、6:00起床。11:37、山形駅。

同僚が誤って年越し、ウラジオストク旅行の手配をしてしまい、凍死するかもしれないと言っていたけれど、ニュースで大雪に閉ざされた山形の様子を見たときは、こんな中で車を運転しようという自分も似たようなものだなと薄ら笑っていた。
それが新幹線を降りてみると道はきれいに除雪されており、気温も脅されていたほどには低くなく、拍子抜けする。マイナス17度の国へ向かう同僚の身を案じる。

今日から15日間の免許合宿が始まる。

駅で待ち構えていた送迎バスの運転手さんの言葉が訛りがきつくてうまく聞き取れず、寒さとは違う異文化を予感する。

不安になる

教習所に着くと、トイレに行く暇もなくオリエンテーションが始まる。
スケジュールは山形駅への集合時刻以外にこれまで知らされておらず、何が起こるかもいつ宿舎へたどり着くのかもわからない。
事務オペレーションの効率が悪く、そこここで食い違いが発生してざわつく中、「あー、遠くに来てしまったな…」とぼんやり。
持ち物に書かれていなかった「印鑑」を忘れて手続きが滞る。
写真撮影の列に並びながら、不安のあまり「これからミンチにされるのかもな…」と友人に連絡。

もちろんそんなことにはならない。
ただ色々と雑で共有も甘く不安になることは確かなので、後続の諸氏におかれては注意されたし。

パワハラ肯定の世界観

学科2時限、技能2時限、適性検査が夜までみっちり詰め込まれていて、疲労もあったがそれ以上に学科の授業で教官の発言に耳を疑う。

教習ビデオを見ている最中うとうとしていた生徒を、怒鳴りつけつまみ出したのが始まりだった。

昔と違って若い人は五感が鈍っていてどんなに教えてもうまくならない。
教習で上手なだけじゃダメでメンタルを鍛えなければダメだ。
優しく教えられてもダメ、年配者の教官に厳しく怒鳴られて教わらないと。
運転免許は国家資格の中でも最高の資格だ、取るならそれなりの態度を見せろ。
俺は高校卒業するときに狭き門に通ってトヨタから働かないかとオファーが来て、受けるのに免許が必要だった。小5から親に車の運転をさせられていたから一発試験で通った。教習所は少し通ったが混んでいて間に合わないからやめた。教官より俺の方が運転がうまかった。
今は学科だけを教えているが全国各地の教習所からうちに来ないかとオファーが来ている。

あまりにびっくりして思わずメモを取ってしまった。

そういえば教習所は警察の世界だった。ここは警察学校だと思えば納得が行く。そうなんとなく考えるが、別に警察学校に詳しいわけでもないので納得してはいけない気もする。
走る凶器を操る資格を取るのに居眠りはもってのほかである。
理解できたのはこの一点のみだった。

6年前に免許を取得した自宅近所の教習所では、こんなことはなかった。
料金差額10万の違いと取るべきか、校風の違いと取るべきか、それともまた違った要因があるのか、あまり公表したくない回答も複数頭をよぎる。

車を動かすのはやっぱり楽しい

6年ぶりの運転は夜の教習所だった。勘が鈍っているのと実家の車とブレーキの効き方がかなり違うので多少難儀したが、経験者なのはすぐ教官にバレた。
路上に出たら怖いと思うのかもしれないけれど、車を動かすのはやっぱり楽しい。

「私はもう大人だし力もあるから、環境を適切に利用することができる」

ふとそんな言葉が浮かんできて、人生2度目の教習で1度目より上手くなりたいなと、ぱっと灯るような気持ちで思うのだった。

宿舎にて

生徒の中心は18になったばかりの高校生や大学生だけれど、少しずつ打ち解けている。
立っている地点の違う人たちに囲まれて、自分の輪郭がはっきりしてくるような心地がする。それは少しずつカルチャーショックという形で続いて行くのだけれど、それはまた後日の記事にまとめるかもしれない。

なにせ15日もあるのだから。

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