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「ユメノグラフィア」サービス終了への驚き

先日(11/17)、ANYCOLOR株式会社が運営する「バーチャルキャラクター(キャスト)と『1対1』で対話できる」サービスだった「ユメノグラフィア」が2021/12/30でサービスを終了する、という発表が行われました。

その発表の詳細については公式noteでご確認いただきたいのですが。

なんにしても今回のこの突然の発表には、ずいぶんと驚かされました。

この件に関して何に一番驚いたかというと、「サービス終了を迎えるにあたっての予兆の無さ」なのですが。

例えばそれは、にじさんじ所属「舞元啓介」による体験動画あたりが代表的な企画、Vtuberによる「ユメノグラフィア体験動画」のリリース間隔などからも、全く見て取ることは出来ませんでした。

こちらは、つい2か月前にもハニーストラップ所属「周防パトラ」による体験動画がUPされており、この「他事務所Vtuberをも宣伝に起用する」というこれまでにも何度か行われた挑戦的な取組みからは、サービス終了の気配は全くしませんでした。

また、10月末にも「準備期間中に重大な運用上の問題が発見され、体験会当日までに解消の見通しが立たない」という発表があり結局は中止になってしまったものの、横浜ぴあアリーナMMで開催のにじさんじが行った2daysのライブ「NIJIROCK NEXT BEAT」「initial step in NIJISANJI」の際にも、会場の一角で「ユメノグラフィア体験会」という企画が実施予定でしたし、

その「体験会」では、これまで女性ばかりだったユメノグラフィアが初めて行う「男性キャストの先行体験会」が実施予定だったこともあり、私はてっきり、いよいよ女性視聴者層向けの方面にもサービスを拡大し、これからますますユメノグラフィアは賑やかになっていくものだとばかり思っていました。

これまでサービス運営自体も堅調にやれていたイメージをいくつかの報道等からも抱いていただけに、今回のサービス終了には本当に何から何まで「寝耳に水」という思いです。

私は、ユメノグラフィアが行っている「バーチャルキャラクターと視聴者が1対1で対話できるサービス」は、もう早ければ数年後には来るであろう「みんながアバターの姿で仮想空間内で双方向に交流する」いわゆるメタバース時代のサービスコンテンツの一翼を担う革新的なサービスだと思っていましたし。

もっと言えば、「Vtuber」というアニメーションよりも視聴者にとって身近な点が魅力である存在が、ANYCOLOR社という企業の中で「にじさんじ」という「少しだけ視聴者から距離を取って大多数の視聴者を魅了するタレント的存在」と、「ユメノグラフィア」という「視聴者個々人との距離をさらに詰めたホスト・ホステス的存在」へと、サービスとして分岐していることにとても面白みを感じていたのですが。

このユメノグラフィアの今回の結果を見るに、仮にVR機器など視聴環境の普及状況などを無視したとしても、やはり「1対1」のコンテンツへと購買対象を縮小する以上、現行Vtuberの主収益である投げ銭やグッズ販売のような大多数の顧客から少額を多量に徴収する仕組みに匹敵する仕組みを、一人の顧客からより多額の収益を徴収する形で構築できなければ、サービスとしては残念ながら大成しない、ということになるのかもしれません。

もっとも「ユメノグラフィア」のビジネスモデルで、いったいどの程度の売り上げをあげれば、twitterでの田角社長の言う「大成させる」ことになったのか?という点には、いまだ若干の疑問が残りはするのですが。

それが「ユメノグラフィア」の黒字化を指すのか、はたまた「にじさんじ」に匹敵する収益を「ユメノグラフィア」が上げる事だったのか、などといったところについては、もはや我々には推察するしかないことなのでしょう。

現在「ユメノグラフィア」以外で、Vtuberと視聴者層とが「1対1」で対話できるコンテンツは、私の知る限りでは、にじさんじの「にじFANTalk」や、他にもV-Clanの企画する「バーチャル推し電WA!!」、PANORA主催の「ネットおしゃべりフェス」などのような、いわゆる「アイドルの握手会」的な企画としていくつか開催されています。

しかし、その企画のどれもが単発イベント形式かつ、視聴者一人当たりの時間を極端に短くして回転率を非常に重視しており、それでいて収益はチケット売り上げが主と、収益構造としては「ユメノグラフィア」よりもかなり視聴者側に厳しめな設定であることを考えると。

果たして今後「ユメノグラフィア」のような、よりVtuberと視聴者との距離を縮めた「1対1」の対話に重きを置くVtuberの常設サービスというものを生むことは、可能なのかどうか?という点には、今回の件でかなり疑問符が付く形になったように思います。

その際には少なくとも、メインの視聴環境であるVR機器の普及状況が現行よりも大きく増加するなどのプラス要素が必要になるのかもしれません。

今回は、あらためてVtuberビジネスの難しさを感じた出来事でした。


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