4年前の伝説が小説になったと思ったら現実になったGW ~ぜったい天使くるみちゃん再臨と、鈴波アミを待っています~

この間のGWに、私は早川書房から出版中の、Vtuberが題材の小説「鈴波アミを待っています」を読みました。

あまり詳しく書くとネタバレになるので、ぼんやりとした感想を書きますと。

「デビュー1年目のとあるVtuberの突然の失踪を、ファン目線から見つめる」というその小説は、「どれだけ思い入れがある人物であろうと、ある日突然いなくなってしまうとその行方を捜すことも出来ない」という、インターネットを介した様々なコミュニケーションにはある意味ありがちですらある、そんな悲劇を描いたお話でした。

Vtuberが好きな人にとっては、とても身近で、その寂しさに共感が出来て、そしてちょっとだけそのご都合主義な展開を羨ましく感じるような物語だったように思います。

私にとっては、感情移入も出来る読後感のよい小説でした。




そんな小説「鈴波アミを待っています」の登場人物、鈴波アミにはモデルとなるVtuberがいることが、以前読んだWebメディアでの記事に掲載されていました。

そのVtuberの名前は「ぜったい天使くるみちゃん」。

活動期間はほんのわずか。
2018年の1月から、2月14日までの約1カ月です。
その活動は、アーカイブも、YouTubeチャンネルも、Twitterまでもが消えてしまっています。

しかしそんな彼女は、例えばVtuber同士の「コラボ」や「ユニット」「歌配信」などのパイオニアとして、また彼女の独特な「個性」や、その謎に満ちた「活動の終わり方」などについて、同時期以降にデビューした多くのVtuberや、古参Vtuberファンたちに今なお語り継がれている存在でした。


<当時の活動がまとまった記事はコチラ>
https://www.moguravr.com/vtuber-kouhaku-utagassen/


私は彼女の配信をリアルタイムで見たことは無く、それこそ古参Vtuberファンの伝承からそういった彼女の伝説を知ったこともあって、彼女には「Vtuber史に残る偉人」のようなイメージを持っていました。

そして、そのたくさんのVtuberや古参Vtuberファンたちがネット上に残した、彼女がいつかひょっこり帰ってくるのを待ちわびる声を多くの場所で目にしながら、私は「きっと私が彼女を見る機会は無いのだろうな」と、そう思っていました。

なぜなら、そんなご都合主義の展開は小説の中でぐらいしか起こらない、ほとんど奇跡のような出来事だと思っていたからです。




私が知る限りでも、これまでにいったい何人のVtuberがいつの間にか行方知れずになった事でしょう。

もちろん「あるVtuberがいなくなった後、同じ声だけど別の名前や姿のVtuberが誕生した」なんて出来事については何度となく目にしてきました。

しかし「別の姿の、声がものすごく似ている人」はやはり「別の人」なのです。

そして、いなくなったVtuberが同じ名前、同じ声、同じ姿で戻ってきた例なんて、それこそ私が知る中では、自分の引退1周忌に自分で唐突に配信した「さはなくん」ぐらいしか居なかったのです。


<さはなくん1周忌の記事はコチラ>
https://note.com/laterfestival/n/n31bddd211f52


ましてや「謎の失踪」を遂げた彼女が戻ってくるなんて。

私にとってそれは正直な所、夢にも思わない事態、でした。




ところが。
2022年5月8日の深夜、突如「ぜったい天使くるみちゃん」は復活を遂げます。

設立されたばかりの真新しいtwitterに投稿された彼女の4年ぶりの挨拶動画には、沢山の「おかえりなさい」の声が寄せられました。

そして、日付が翌9日に変わったころに開始されたスペースには、たくさんのVtuberや古参Vtuberファンが集まり、twitterやファンディスコードは大騒ぎ、といった実に賑やかな深夜になりました。

その輪の中には「鈴波アミを待っています」の作者様の姿もあったように思います。

また「ぜったい天使くるみちゃん」の口からも「鈴波アミを待っています」の話題が登場し、現実のモデルと創作の奇妙な邂逅がなされていたことにも、ちょっとした驚きがありました。

なんにしても、Vtuberファンにとってはドラマティックな夜でした。


<復帰ツイートはコチラ>
https://twitter.com/zti_krm/status/1523310879252824065?s=20&t=XKthVBGMgUMDhzsaCfs6JA


私はそんな彼女の驚くべき「事実は小説よりも奇なり」な復活を、たくさんのツイートやディスコードの動きで知りました。

そして、彼女の復活を祝うたくさんの幸せそうなツイートやスペースを見ながら、今回の「小説よりもドラマティックでご都合主義的な出来事」に、過去の配信を見ていない自分が当事者として関われていない事が少しうらやましくなりました。

2018年当時から彼女の帰りを待っていた人たちの喜びは、果たしてどんなものだったのでしょうか。その喜びを私が共有できないことは、どうしようもないことではありますが、ちょっと残念なことでした。





ただ。

これまでは私にとって、現実味のない伝承のいわゆる過去の存在だった「ぜったい天使くるみちゃん」は、これから何かをやってくれるかもしれない、活動を再開したVtuberという未来の存在に、今回生まれ変わりました。

そのことについては、とても嬉しく思います。

4年前に伝説になった彼女が、これからいったい何を見せてくれるのか。そしてこれだけ沢山の人に「おかえり」を言わせる彼女は、いったいどんな魅力を持ったVtuberなのか。

ものすごく視聴ハードルを上げているような気がしなくもないですが、私はそれを見られるであろう未来が今後やってくることが、とても今楽しみです。


そして今回の出来事は私にとって「ひょっとしたら今回のケースのように、あの音信の途絶えた人たちも、何かの機会に帰ってくるかもしれない」という、ご都合主義の展開が現実に起こりうるんだという事例として、私を再び淡く期待させてくれたという点でも、ちょっとだけ嬉しい出来事だったような気がします。





<関連URL・記事>

RealSound掲載
元VTuberが“VTuberの失踪”を題材に小説を書いた理由 「インターネットは最後までやりきっていなくなる人の方が珍しい」
https://realsound.jp/tech/2022/04/post-1003640.html

MoguLive掲載
個人VTuberユニットのさきがけ・ぜったい天使くるみちゃんと「天魔機忍ver.G」が切り開いた2018年
https://www.moguravr.com/vtuber-kouhaku-utagassen/

MoguLive掲載
2018年に引退したVTuberぜったい天使くるみちゃんが復活
https://www.moguravr.com/vtuber-zettai-tenshi-kurumi/

PANORA掲載
ぜったい天使くるみちゃんが復活 「まず肉声を聞かせるから」あれから4年
https://panora.tokyo/archives/48516

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?