見出し画像

事業性融資の金利を決める3つの要素

おはようございます。現役信用金庫マン 兼 中小企業診断士事務所代表の山西です。当noteでは、経営力強化につながる情報を経営者や支援機関に向けて発信しています。

中小企業の経営者の皆さん、お借入れをされてますか?

中小企業の経営者として、事業拡大や資本改善のために外部資金を求めることは避けられない場面が多々あります。金融機関からの融資は、中小企業にとって重要な資金調達手段となっています。

しかし、融資を受ける際には金利が伴い、この金利が企業の負担となり、経営を難航させる要因となることも少なくありません。金利は借入額に対するコストを示すものであり、適正な金利で融資を受けることができれば、経営は安定します。

そこで、融資の金利がどのように決定されるのか、そのメカニズムを理解することは非常に重要です。

そこで今回は、一般的な融資の金利決定メカニズムを知ることで、適正な金利を知り、理想の融資利率で借入をするためにどのような行動が必要なのかをお話しします。

事業性融資の金利は、いくつかの要因によって決まります。以下に主な要因を挙げてみます。

①基準金利(店頭金利)

基準金利は、金融機関が市場金利などを基に決定する「定価」のような金利です。住宅ローンなどでよく使われる用語ですね。

調達原価と期待収益率から構成されます。

(1)調達原価

調達原価は、金融機関がお金を調達するためにかかる費用のことです。人件費など様々なものが含まれます。

(2)期待収益率

期待収益率は、金融機関が融資でどれくらい収益を上げたいかという比率です。調達原価にオンされ、合わせて基準金利となります。

基準金利は金融機関が独自に決定するものなので、借り手側の業況は関係なく決定され、コントロールもできません。

②信用リスク

お借入企業の信用状況も金利に影響します。

信用リスクとは、借り手がきちんと返済できるかという信用に関するリスクです。業況が芳しくない事業先の信用リスクは高くなります。

経営における「信用」については、前回の記事もご参考にしてください。

(1)デフォルト率

デフォルトとは債務不履行のことで、要は借金を返済できない状態のことです。

借金を返済できない可能性のことをデフォルト率と言います。金融機関は、このデフォルト率に応じて貸倒引当金を計上します。

例えば、1億円の借入がある企業が、2%の確率でデフォルトすると金融機関が判断すれば、1億円×2%=200万円を貸倒引当金として繰り入れます(未保全の場合)。

金融機関としても貸倒引当金は負担となるため、それを見込んで、デフォルト率の高い企業には金利を高めに設定するのが一般的です。

(2)未保全率

仮に返済ができなくなったとしても、担保があれば、ある程度借入金の返済に充当することができます。

保全とは、資金の返済を確実に受けるための措置や保証のことを指します。代表的なものに「担保」「保証」があります。

未保全とは借入の保全が無いことです。借り手がデフォルトした際には、未保全部分がそのまま金融機関の損失となります。

未保全部分が多ければ多いほど金融機関のリスクが大きくなるため、その分を金利に上乗せする必要があります。

以上の「信用リスク」については業況次第で変わってくるため、業績を改善していくことで、低いコストで調達できるようになります。

③期間リスク

貸出期間も金利に影響します。

貸出期間が長ければ長いほど、返済可能性が低くなり、またその間金融機関の手元現預金が減少し、不自由するためです。

貸出期間に応じて金利が設定されているのが一般的です。もちろん、長くなればなるほど金利が高くなる傾向にあります。

適切な金利で借りるためには、貸出期間も十分に精査する必要があるでしょう。

金利交渉の注意点

金利が低ければ低いほど良い訳ではない点にご注意下さい。

前述の通り、金利の中には調達原価が含まれています。つまり、手厚いフォローがある金融機関の場合は、人件費等が多分にかかるため、金利は高くなりがちです。

貸しっぱなしで担当者の訪問が全くないケースも時々聞きます。貸出先への訪問をしなかった間に業況が悪化し、倒産に追い込まれたケースも知っています。

中小企業の事業再生等に関するガイドラインの中で、平時における金融機関に求められる対応として、以下の4点を挙げています。

① 経営課題の把握・分析等
② 最適なソリューションの提案
③ 中小企業者に対する誠実な対応
④ 予兆管理

中小企業の事業再生等に関するガイドライン

しかし、あくまで努力義務のようなものなので、遵守しないケースも見受けられます。遵守しなければ労力がかからず人件費が低く抑えられるため、低い金利で融資できる訳です。

あくまで金利だけを重視するのか、しっかり訪問してもらって財務分析や情報提供をしてもらいたいのか、借入の際に何を重視するかは経営者の価値観次第です。

まとめ

・一般的に金利は、基準金利+信用リスク+期間リスクによって決まる。
・信用リスクと期間リスクは、借り手の業況や意思によって決まる。
・金利だけ見て借入する金融機関を決めるのはよろしくない。
・借入する金融機関を選ぶ際には、サポート体制も見ると良い。

次回予告

次回は、「最高のマーケティング」について投稿します。11月18日(土)投稿予定ですので、ぜひご覧下さい。

当noteでは、毎週土曜日に、経営者や経営支援者に向けた経営力強化につながる投稿を行っています。仕事のご依頼、お問い合わせは画面下の「クリエイターへのお問い合わせ」よりお願いします。

投稿者(山西良明)プロフィール

強い企業を作る」ことを理念に、中小企業の経営力強化に向けた支援をしています。

【経歴】
・現役信用金庫マン
 2014年より信用金庫で勤務中。営業、業務推進、融資審査、事業支援を経験。
・中小企業診断士事務所代表
 信用金庫で働きながら、2021年に中小企業診断士として個人事務所を開業。認定経営革新等支援機関として登録。

【強み】
①「資金繰り支援」と「本業支援」という両輪の経験を「現在進行形で」持っていること
徹頭徹尾やり切る性格。広く色々なことができるタイプでは無いですが、限られたことを徹底してやり尽くす性格です。

【現在受け付けている業務内容】
①経営パートナー契約
 中小企業様とのパートナー契約により、経営力強化を目的として、毎月訪問(又はリモート相談)で支援をしています。
事業計画書協同策定・実行支援
 創業/経営改善/事業再生等に向けた経営力強化支援を行っています。事業者様とともに事業内容を見直し、共同で事業計画書を策定、フォローしています。
資金繰り改善支援
 資金繰りに関する分析および提案、実行・フォローに至るまでのトータル支援をしています。資金繰り改善支援の一環として、融資承諾支援、補助金申請支援も行っています。
(1)資金調達支援
  利益向上を目的としたご融資の承諾に向けたご支援を行います。お借入に関する事業計画書(設備投資計画や創業計画書等)策定支援および交渉に関する諸支援です。
 (2)補助金採択支援
  利益向上を目的とした補助金採択に向けたご支援を行っています。持続化補助金、ものづくり補助金、事業再構築補助金など。メインは補助事業計画書策定支援です。補助金交付決定金額の10%を基本とした成功報酬制で受け付けています。

【主な保有資格】
・中小企業診断士
 コンサルタントとしての唯一の国家資格。2017年取得
・販売士(リテールマーケティング)1級
 BtoCのマーケティング資格。2018年取得
・応用情報技術者
 IT系国家資格。2021年取得
・認定事業再生士
 事業再生の国際資格。2022年取得

【尊敬する人】
・三枝 匡(事業再生専門家)
・森岡 毅
(マーケター)

【趣味】
・マラソン
 地元大会で2時間30分切りでの優勝を目指し、年365日走っています。
・読書
 海外SF、文芸誌、ビジネス書を読みます。愛読書は『三体』『V字回復の経営』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?