運転資金って何?
おはようございます。現役信用金庫マン 兼 中小企業診断士事務所代表の山西です。
事業をする上でよく聞く「運転資金」という言葉。よく聞く割に非常に曖昧な言葉です。
みなさんは、運転資金って何?と聞かれて、明確に回答できるでしょうか。
私自身、信用金庫に就職してすぐ「運転資金」という言葉をよく聞くようになりましたが、何となく分かりつつも、何となく分からない存在でした。
そんな運転資金の正体を今回説明していこうと思います。
1.運転資金とは
運転資金とは、経常的に発生する収支のズレに伴う必要資金です。大切な要素は2つで、「経常的に」と「収支のズレ」です。
①「経常的に」とは
経常的発生するもので無ければ運転資金とは呼びません。ですので、数年に1度しか発生しない資金ニーズは運転資金ではなく、設備資金と呼びます。
季節性の資金については、毎月発生するものではないものの、毎年周期的に発生するものなので、運転資金に分類されることが多いです。
どれくらいの頻度なら「経常的」と呼ぶのか基準はありませんが、1年に1度以上発生するものであれば、運転資金と呼ぶのが一般的です。
②「収支のズレ」とは
企業は、リソース(人・物・金等)に投資した後、そのリソースを活用することでリターンを得ます。その中で、どうしてもリソースへの投資とリターン獲得までの期間に事業を回すお金が必要となります。
特に、経常的に発生する収支のズレの期間を「CCC」(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)と呼びます。
運転資金にしろ設備資金にしろ、世の中にある金融は、この収支のズレを解消するために行われます。
2.運転資金には色んな種類がある
①経常運転資金
一般的に運転資金と言えば「経常運転資金」のことを指すことが多いです。経常運転資金は、売掛金+受取手形+棚卸資産-(買掛金+支払手形)で算出され、仕入支払いから販売代金回収までの収支のズレに伴う必要資金を指します。
あらゆる運転資金の中で、最も基本的なものと言えるでしょう。
②創業時の運転資金
創業時の運転資金とは、創業直後、資金が回るようになるまでに必要な資金のことを指します。
例えばあなたが、美容商材を仕入れて販売する事業を始めたいとしましょう。そうなると、最初に商品の仕入資金が必要になります。また、商品を置くバックヤードとして店舗を借りるのであれば、その店舗の家賃や水道光熱費も必要になります。
こういった、商売を始めて売上でお金を回収するまでに必要となるのが、創業時の運転資金です。
業種にもよりますが、だいたい3ヶ月〜6ヶ月分の仕入資金・固定費を運転資金として計上することが多いです。
創業時の運転資金の特徴は、固定費も含める点でしょう。一般的に運転資金と言えば、固定費は含みません。しかし、創業時に限っては固定費も借りなければ事業が軌道に乗らないため運転資金に含むのです。
③増加運転資金
運転資金の増加額のことを増加運転資金と呼びます。運転資金を考える上で非常に大切な概念です。
運転資金が増加する場合は、その増加要因が良性のものか悪性のものかを明確にする必要があります。悪性のものである場合は、借入をする前に、その問題解決策を考えておかなければなりません。
運転資金が増加する要因は主に2つ。売上増加要因と収支のズレ要因です。前者は売上が増加することによる運転資金の増加のこと、後者は仕入支出から販売代金回収までの期間が延びることによる運転資金の増加のことです。
運転資金の増加分だけ手元資金を増やさなければ、資金繰りが悪化してしまいます。
④季節性運転資金
季節要因による増加運転資金を季節性運転資金と呼びます。
アパレル業などが分かりやすい例でしょう。季節の変わり目の前にどっと仕入れて季節ごとに販売するので、年間4回程度仕入れるタイミングがあり、運転資金が増える時期があります。
季節性運転資金が発生するかどうかは、だいたい業種によって決まります。アパレル業以外にも建設業や酒造場等の場合は、普段から季節性運転資金の資金繰りを経営判断に織り込んでおく必要があります。
3.運転資金の正しい借り方とは
会社が大きくなるにつれて、あるいは業種によって少なからず運転資金が必要となります。そして手元資金で運転資金を賄えない場合は、運転資金を借りる必要があります。
運転資金には正しい借り方がありますが、私個人の経験としては、正しく借入できているケースはそれほど多くない印象です。
そこで、次回は正しい運転資金の借り方についてお話ししていこうと思います。
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