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設備資金借入の審査ポイント②:保全

おはようございます。
前回は、設備資金借入の審査ポイント①をご紹介しました。

今回は引き続き2つ目の審査ポイントをご紹介します。

保全とは

保全とは、返済不能に陥った際に借入金を回収する手段のことです。担保や保証等があります。

保全はなぜ必要なのか

金融機関は、他人からのお金(預金)を使って融資しています。そのため、貸したお金を回収出来なければ、預金者に迷惑をかけてしまいます

また、貸したお金が返ってくるためには、融資先の資金繰りが良くなければなりません。設備投資のために融資した会社がその事業に失敗して資金繰りが悪くなると、返済に懸念が出てきますよね。しかし、融資先の将来の資金繰りを100%読むことは出来ません。

この金融における2つの性質(融資は返済されなければならない、融資先の将来の資金繰りを100%読むことは出来ない)から必要となるのが「保全」です。保全があれば、仮に融資先の資金繰りが悪くなったとしても、最悪、別の手段でお金を回収することが出来ます。

保全に過度に依存することは好ましくありませんが、上記2つの性質上、全く徴求しないのが難しい局面も多々あります。特に融資金額が大きい事業への融資、先を読むのが難しい事業への融資、業界全体が減退局面の事業への融資の場合は、返済の懸念が大きいため、保全の必要性が高くなります。

保全(1):担保

まずは「担保」です。担保とは、将来生じ得る不利益を補う物です。要は、返済できなくなった際に、「どうやって返済するか」に焦点を当てたものです。

担保を入れることで、金融機関は「万が一のことがあっても、回収不能(貸倒れ)になるリスクは少ないな」となって融資が出やすくなります。

また、担保を入れて貸倒れリスクが少なくなれば、その分、低金利で借入できる可能性が高くなります。金利は基本的に貸倒れリスクによって上下するためです。

担保の最たるものは不動産(土地・建物)でしょう。また、一般的ではないですが、「動産担保」というのもあります。動産の例としては、預金、売掛金・機械設備等が挙げられます。

近年では、「事業成長担保」という概念も生まれました。これは、事業そのものをまとめて担保とする考え方です。

保全(2):保証

「保証」とは、賠償責任を負うことです。借入における保証のことを特に「債務保証」と呼び、保証人は、主債務者が返済できない場合に代わりに返済する(代位弁済)ことになります。

借入人が返済不能に陥った場合に、先ほどの担保のように「どうやって返済するか」ではなく、「誰が返済するか」に焦点を当てた概念です。

担保と同じく、保証があることで貸倒れリスクが低減されるため、融資が出やすくなったり、金利が低くなったりするメリットがあります。

保全(2)-1:保証人

保証人とは、当該融資に対して連帯保証を負う人のことです。一般的に、法人が借入する場合の保証人は、その法人の代表者になります。

法人で借入して返済不能に陥った場合、その保証人たる代表者が返済義務を負うことになります。法人の代表者による保証を「経営者保証」と呼びます。

例えば、法人で1000万円借入をして、600万円返済したものの400万円を返済できない場合は、その400万円を返済する義務は代表者が負う必要があります。

近年では「経営者保証のガイドライン」が制定され、経営者保証をなるべく徴求しないようにする考え方が浸透し始めています。

金融機関としても、全ての企業から経営者保証を徴求しないことは、保全の考え上、難しい面があります。そこで、「こういう法人からはなるべく代表者保証を徴求しないようにしよう」という基準を設けたのが、この「経営者保証のガイドライン」です。

このガイドラインを有効に活用すれば、経営者保証が不要となるため、思い切った経営が可能となります。

個人事業主の場合は、事業者個人への貸付となるので、保証人を取る場合は事業者以外の人を保証人とする(第三者保証と言います)必要があります。第三者保証の保証人となるのは、事業者の配偶者や後継者等です。

しかし、近年では「原則、第三者保証を取らない」というのが一般的になっています。予見できるような大きな懸念(事業者がかなりの高齢、大病を患っている等)が無ければ、基本的には第三者保証無しでご融資が受けられるケースがほとんどでしょう。そもそも上記のような懸念がある場合は、融資自体を受けるのが難しいとも言えます。

保全(2)-2:保証協会

保証協会とは、保証債務(保証による返済責任)を負うことを業としている機関のことです。

金融の実務では、この保証協会が付いた「保証協会付融資」が多用されます。前述の通り、保証が付くことで融資を出しやすくなるメリットがあります。

万が一、主債務者が返済できない場合は、保証協会が代位弁済しますが、あくまで主債務者の返済義務が免除される訳ではありません。代位弁済後は、主債務者は保証協会に返済していく必要があります。その点に注意する必要があります。

また、保証協会からの保証を受けることで、金融機関の貸倒リスクが低減されるため、低い金利で借入することができますが、その一方で保証協会に対して「保証料」を支払う必要があります。保証料は様々な要素で決まりますが、1%前後になることが多い印象です。

そのため、必ずしも保証協会が付かない融資(プロパー融資)よりも安く借入できるとは限りませんので、こちらも注意が必要です。

次回予告(設備投資借入の審査ポイント③)

次回は設備資金借入の審査ポイント③をご紹介します。4月6日(土)投稿予定ですので、ぜひご覧ください。

当noteでは、毎週土曜日に、経営者や経営支援者に向けた経営力強化につながる投稿を行っています。仕事のご依頼、お問い合わせは画面下の「クリエイターへのお問い合わせ」よりお願いします。

投稿者(山西良明)プロフィール

「強い企業を作る」ことを理念に、中小企業の"経営力を鍛える"取組みを行っています。

【経歴】
・現役信用金庫マン
 2014年より信用金庫で勤務。営業、業務推進、融資審査、事業支援を経験。
・中小企業診断士事務所代表
 信用金庫で働きながら、2021年に中小企業診断士として個人事務所を開業。認定経営革新等支援機関としても登録済み。

【強み】
「金融支援」と「本業支援」という両輪の経験を現在進行形で持っていることから、以下の点に強みを持っています。
強み①:本業と資金繰りをリンクさせて考える力
事業先の本業(利益獲得のための諸活動)と資金繰りをリンクさせて考える経験を積んできました。本業を良くして資金繰りを改善する、バランスシートを整えて資金繰りを改善する等、本業と資金繰りを絡めて業況改善の方法を考える力に強みがあります。
強み②:結果までしつこくフォローする継続支援力
金融機関の支援は「継続的な返済」を見据えた支援となるため、入口だけの施策提案を行って終わりの支援ではなく、必要利益・必要キャッシュフローが確保できているかどうかまでしつこくフォローしていくことが習慣になっています。あくまで結果(利益・キャッシュ)を出すための経営力の修得を目的とした支援を得意としています。
強み③:業界横断的な視点
金融機関として、また個人の診断士事務所として、様々な企業の本業や財務情報を横断的に見ているため、業界内外の他社比較や相場感に長けていると思います。

【現在受け付けている業務内容】
①経営パートナー契約
 中小企業様とのパートナー契約により、経営力強化を目的として、毎月訪問(又はリモート相談)で支援をしています。
事業計画書協同策定・実行支援
 経営力強化を目的として、事業者様とともに事業内容を見直し、共同で事業計画書を策定します。ただ計画を立てるだけでなく、活用していくためのフォローをしています。
補助金採択支援
 補助金申請を代行するような支援ではなく、あくまで自ら事業計画書(補助金申請に必須の書類)を策定できるようになる力を身に付けるための支援を行っています。具体的には、事業計画書策定に必要な問いかけを重ねて一緒に考えていくことで、補助金申請に必要な計画書を完成させます。持続化補助金、ものづくり補助金、事業再構築補助金など。補助金交付決定金額の10%を基本とした「成功報酬制」で受け付けておりますので、お気軽にご相談ください。
④創業相談対応
 これから創業する、あるいは創業間もない方の経営を良くしていくための相談対応を致します。売上増加、収益性改善、資金繰り、資金調達等、全般的にご対応させて頂きます。初回無料。2回目以降5,000円/回(50分程度)

【主な保有資格】
・中小企業診断士
 コンサルタントとしての唯一の国家資格。2017年取得
・販売士(リテールマーケティング)1級
 BtoCのマーケティング資格。2018年取得
・応用情報技術者
 IT系国家資格。2021年取得
・認定事業再生士
 事業再生の国際資格。2022年取得

【尊敬する人】
・三枝 匡(事業再生専門家)
・森岡 毅(マーケター)

【趣味】
・マラソン
 地元大会で2時間30分切りでの優勝を目指し、年365日走っています。
・読書
 海外SF、文芸誌、ビジネス書を読みます。愛読書は『三体』『V字回復の経営』


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