【短編小説】『毒と薬』 #シロクマ文芸部【逃げる夢】
逃げる夢を見なくなってしまった。
ずっと昔、おそらく生まれた時からそうだったのだろう。
実家が燃えてしまったあの日も、通っていた大学に殺人鬼が侵入したあの日も、いつも通っているあの帰り道にダンプカーが突っ込んで何人もの死傷者が出たあの日も僕は前日に夢でその光景を見ていたのだ。
ただそれは予知夢とはまた少し違うような気もしていて、どちらかというと「本当に単位を落としたらヤバいテストの数日前に留年してしまった夢を見る」ような、自らの生命の危機を感じた右脳が直感で危険