詩歌によせて16

一休さんの思い
 
 一休の有名な歌に、「有漏路より無漏路へ帰る一休み雨降らば降れ風吹かば吹け」というのがある。これが一休の名前の基になったという。
 
 有漏路というのは煩悩の多い世界、この世のことである。だから、有漏の身である凡夫の境涯が有漏路である。その煩悩の世界から迷いのない無漏路に帰るまでの一休みというのだから、一休はすごいと思う。我々のような煩悩から抜け出せない凡夫にとっては、無漏路は遙かな彼方のことであり、とてもとても帰ることなどできない。帰ることができないのであれば、この迷妄の娑婆に身を沈め、わずかな慰めに下手な狂歌でも詠もうか。

「有漏路をばうろうろ彷徨う凡夫なり無漏路遙かにとても行かれず」
 お気づきのとおり、一休の「極楽は十万億土遥かなりとても行かれぬわらじ一足」の一部も使わせてもらった。私の下手な狂歌などどうでもよいが、あと何年ほどこの煩悩に満ちた世界を生きなければならないのだろうか。その日が来るまではひたすら生きていくのが生まれてきた人間としての勤めであると思う。

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