啖呵バイ(フーテンの寅さんの口上)

啖呵バイ(フーテンの寅さんの口上)

さあて、お立会い。角は一流デパート赤木屋、黒木屋、白木屋さんで紅白粉(べにおしろい)つけたお姉ちゃんから下さい頂戴で頂きますと五千円や六千円は下らない品物だが今日はそれだけ下さいとは申しません!
並んだ数字がまず一つ。物の始まりが一なら、国の始まりが大和の国で、島の始まりが淡路島。泥棒の始まりは石川五右衛門で、博打の始まりが釜坂丁半。助平の始まりがこのオジサン。
二、続いた数字が二。兄さん寄ってらっしゃいは吉原のカブ。仁吉が通る東海道。日光結構東照宮。憎まれっ子世にはびこる。
三、三三六歩(さんさんろっぽ)で引け目がない。
産で死んだが三島のお仙、お仙ばかりが女じゃないよ、かの京都は極楽寺坂の門前で、小野小町が三日三晩飲まず食わずで野たれ死んだのが三十三、とかく三という数字はあやが悪い。
四、四谷赤坂麹町、ちゃらちゃら流れるお茶ノ水、粋な姐ちゃん立ち小便。白く咲いたか百合の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭い。一度変われば二度変わる、三度変われば四度変わる。淀の川瀬の水車(みずぐるま)誰を待つやらくるくると。ゴホンゴホンと波さんが、磯の浜辺でねぇあなた、あたしゃあなたの妻だもの。妻は妻でも「阪妻」ときゃがった。おどろ木 桃の木、山椒の木、ブリキに狸に蓄音機。
五、後藤又兵衛、槍を担いで五万石。結構毛だらけ、猫灰だらけ、お尻の周りは糞だらけ。
六、ろくでもないのが六兵衛さんちのどら息子。朝な夕なの色がよい。たいしたもんだよ蛙のションベン、見上げたもんだよ、屋根屋のふんどし。見下げて掘らせる井戸屋の後家さん。
七、七つ長野の善光寺 八つ谷中(やなか)の奥寺で竹の柱に茅(かや)の屋根。手鍋さげてもわしゃいとやせぬ。信州信濃の新そばよりもあたしゃあなたの側がいい、あなた百までわしゃ九十九まで、共にシラミのたかるまで。
八、やけのやんぱち日焼けのなすび、色は黒くて食いつきたいがわたしゃ入れ歯で歯が立たない。弱ったことには成田さん、ほんに不動の金縛り、捨てる神ありゃ、拾わない神、神も仏もあるもんか。
九、國定忠治は男でござる。かわいい子分と赤城山で泣き別れ。男は度胸で女は愛嬌、坊主はお経で、学生は勉強、庭で鶯ホーホケキョウ。
十、十でとうとう内のかあちゃん、干上がっちゃった。上がっちゃいけないお米の相場、下がっちゃこわいよ柳のお化け。張っちゃいけねえ親父のアタマ、張らなきゃ食えねえ提灯屋。鶴は千年、亀は万年、隣の婆さん後一年。テキ屋殺すにゃ刃物はいらぬ、雨の三日も降ればいい。
これで買い手が無かったらあたし、浅野匠頭(あさのたくみのかみ)じゃないけど腹切ったつもり。ダメか? いくら見てたってダメ。いくら見てたって買わなきゃ。ね、そうでしょ? いくら掘っても畑にゃハマグリ出てこないっていうじゃないの。どう?
たいしたもんだよ蛙のションベン見上げたもんだよ屋根屋のふんどしってね。はい! どうです?お安く負けちゃうよ。なぜこんなにお安い品物かと言うと、本来ならばこれ輸出する品物ですよアンタ。なんで輸出が出来ないかというと、はっきり言っちゃおう!
今まで言わなかったんだ。 わたくしが知っている東京は花の都、神田は六方堂という大きな本屋さんが、僅か百五十万円の税金で泣きの 涙で投げ出した品物! だからこんなに安い。本来ならば文部省選定、衛生博覧会ご指定、大変な品物だこれ。 これだけ安く売っちゃおう。英語の本なんか見てごらんなさいよ。英語、ずーっと書いてある。 最もわかり易いよ、この英語見てごらん。あたしだって読める。NHKにマッカーサー、メンソレタームにDDT。 こういう昔の古い英語から出てるんだから、買って頂戴よ。どう?

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