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マッカーサーの顕微鏡

オリンパスの古い生物顕微鏡を購入してから、顕微鏡にはまっている。

私の場合、望遠鏡もそうだが、使うことよりも道具にこだわってしまう部分が大きい。
つい、星をみるよりもカタログを見る方が楽しくなってしまう。

小学校のころから骨董市に通ってヤカンを集めたり、弾けないバイオリンを買ったりしてたので物への執着が強いのかもしれない。

顕微鏡もその例にもれずオークションを眺めながら、携帯顕微鏡というものに興味をもった。

NikonのH型という顕微鏡が気になるが高価で手がでない。

http://micro.sakura.ne.jp/mws/model_h.htm

最初に購入したのは、歯科医院で使われていたという携帯顕微鏡にカメラとモニターがセットになった物だった。

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メーカーも書かれてないがダイコーサイエンスのDSM−Ⅱという物にそっくりな物だ。

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オークションを見ていると違うメーカー名で同じような形の顕微鏡もある。

もう少しネットで調べてみると、アメリカのSWIFTという顕微鏡メーカーのFM−31という顕微鏡にルーツがあるようだ。

http://www.microscope-antiques.com/fm31.html

google翻訳を頼りに見ていくとマッカーサータイプの一つと紹介されており、製造は日本ということなのでOEMかクローンで色々なメーカーから出されているようだ。

http://www.microscope-antiques.com/mcarthurs.html

憧れのNikon H型顕微鏡もマッカーサータイプとして紹介されている。大元のマッカーサー顕微鏡はどんな物かを調べてみると、イギリスのマッカーサー博士が開発した小型で高性能な顕微鏡らしい。

マッカーサー氏の顕微鏡は、やはり高価で希少なため手に入れることは難しそうだった。しかし、イギリスの放送大学である、OPEN UNIVERSITY の学生向けにプラスチック製の携帯顕微鏡もデザインしているということがわかった。

さっそくebayで探してみると数千円で手に入った。

見かけはおもちゃのようだが、その性能とよく考えられたデザインに目を見張る。

ツァイスの顕微鏡との比較画像

マッカーサー顕微鏡の日本語情報はなかなか見つからなかったが、マッカーサー博士と交流をもっていた方の随筆がみつかった。

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なんとマッカーサー博士はマラリアの研究中に日本軍の捕虜になっていたことがあり、その時に軍の軍政部長が特別に研究を支援してくれたそうだ。その研究の中で屋外で使える携帯顕微鏡の必要性を感じ、顕微鏡の開発をスタートしたということだ。この筆者の方が当時の軍政部長を探しだして、紹介したことで直接会うことはできなかったが、手紙で交流することができたそうだ。

ちなみにその軍政部長の稲川龍雄氏は極東裁判でも活躍した検事ということで複雑な歴史を感じさせる。

アフリカ向けにプラスチック製の顕微鏡を開発していると書いてあるが、エリトリアについてのこの記事の内容が関係しているようだ。

エッセイには博士は試行錯誤の末、試作も完成させて、日本のメーカーに製品化を依頼したが、断られた。その後そのメーカーから同様の顕微鏡が販売され驚いたとある。

同じエッセイが英語でも書かれているが、そちらにはより詳しい事情が書いてある。

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[3] 1983年9月30日付けの彼の手紙の後半で、ジョンは次のように述べています 。...最初に、3つの日本企業が私の知らないうちに私の顕微鏡を作ろうとしましたが、試みたために失敗しました。それ自体で、私の目的と方向性が何であるかを完全には理解していません。1954年にフィリピンで開催されたマラリアに関するWHOの会議に出席し、顕微鏡のデモンストレーションを行った後、東京のニコン工場に招待され、この会社が製造に興味を持っていることを理解しましたが、帰国後、彼らはこれに反対することにしました。 しかし、1、2年後、同じ会社が私の顕微鏡のコピーを市場に出しました。実際、1945年の私の出版物から信じています。この初期のニコン顕微鏡は、私自身の設計の多くの利点を逃し、幅広いものを受け入れることができませんでした。特に実験室での作業のために説明されたアクセサリーの範囲。光学的には優れているが、機械的には劣っていて、いくつかの大きな欠点があることがわかりました。それ以来、このニコンの顕微鏡は、特にアメリカを信じて市場に出回っていますが、私の汎用性に欠けているなどの理由で失望していると言われています。...  「google翻訳(楽器を顕微鏡に修正)」

ニコンのH型顕微鏡は、ベトナム戦争の野戦病院やNASAの宇宙ステーションでも使われるなど素晴らしい性能を持っているが、発明者のマッカーサー博士としては不本意な経緯があったようだ。

このように物には色々なストーリーが隠されていて面白い。またNikonのH型顕微鏡の開発についても調べてみたい。

こうして、使うことよりも物の持つストーリーに興味を持ってしまう癖は治らないのだ。


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