日記 8/31

 今年の初めはnoteに日記をつけていた。俺は何かと三日坊主で、継続ということが本当にできない。フランス語の例文暗記、単語帳めくりといった勉強面もそうだし、麻雀で強くなるために毎日コツコツ雀魂の段位戦を打つこともできないし、ましてや人に読ませるための日記(人に読ませるため、という時点で「日記」というメディウムの持つ意味が不必要な肥大化を被っているために継続が難しくなっているということは多分にあるが、読ませないためならもっと書けない)も例によって半年強前は半月も続かなかった。そもそも、毎日何かを書いてビューを稼げるようなオモシロ生活を送っている人間など大していない。俺の一日は、12時に起きて、飯を食い、Youtubeを見て昼寝、ちょっと本を読んだり語学をやってたら日が暮れていて、おもむろにシコり、風呂に入って、飯を食って、酒を飲んでいたら日付が変わっている。こんなの誰が面白いんだ?いや、まあ、もちろん、気合を入れた論考やそれに準ずる記事のビューが伸びなかったらそれはそれで悲しいが、日記なんて基本的に誰も読まない。そして読まれない文章を俺は書きたくないだけだ。
 とはいえ、俺にも危機感が出てきた。何の危機感かというと、俺は一か月、まとまった文章を公私ともにほとんど意図的に書いていない。なぜなら、修論のアイデアをむやみにアウトプットしないことによって何かしらのポジティブな反応が俺の中で起こるのではないかという期待があったからだ。だが、どうもそういうのはなかったらしい。俺はどうもアウトプットしていく中でアイデアを練り上げていくタイプのようだ。なので、訓練として手始めに残りの夏休みは毎日日記を書くことにする。何もなかった日でも無理やり書く。それは、ベッドの上で横になってVtuberのYoutube Shortを見てTwitterをやっていたら一日が終わっていた、という日を無理やりヴァリュアブルにしたいからではない。思考を形式に流し込むのではなく、形式を思考に先行させるのだ。
 前置きが長くなったが、とりあえず決意表明をしておいた。以下8/31の日記です。

 今日は人と映画を観に行った。早稲田松竹で今日から行われている興行のダニエル・シュミット特集で、『季節のはざまで』と『デ・ジャ・ヴュ』の二本。朝11時に高田馬場のエクセルシオールカフェで集合だったが、30分早く着いたので時間潰しに中村元『インド思想史』を読む。まだ最初の方だが古い本の文庫版なので若干文章が硬いのと、トピックごとの記述の新書っぽい薄味さが目立ち、当然のことだが同じ著者の今同時並行で読んでいる『ヴェーダーンタ思想の展開』よりも凝縮感は薄め。そうこうしているうちに待ち合わせ相手が到着してしばし喋る。以前から仲の良い高校生の子で、夏休みの課題とか、部活の話とかを聞いて勝手に懐かしい気持ちになった。オアシス再結成の話になったけど、俺は日本に来たとしてライブに行くかどうか微妙かも(『Definitely Maybe』と『(What's the story)Morning Glory』しか聴いてないため)。適当なところで切り上げ、映画館に移動。
 シュミットは以前Bunkamuraル・シネマで『ヘカテ』を観て、まるで映画に出てくるアブサンのような強烈な陶酔感とエロティシズムにクラってしまい、当時まだ一人暮らししていたアパートに帰って一晩中Youtubeに上がっているOSTを聴いた思い出もあるが、『季節のはざまで』も『デ・ジャ・ヴュ』もまさにシュミットの白昼夢的な魔術が隅から隅まで行き渡った傑作。『ヘカテ』でも印象的だったホテルやパーティーのラウンジをパンニングでナメていきながら作為的なキャメラワークに陥らないレナート・ベルタのうっとりするような職人芸に舌を巻き、全てのショットがこうでしかありえないという形でバシバシ決まっているのにわざとらしい感じが全然しない。『季節のはざまで』は全編通して穏やかでしみじみとしたトーンで進行するが、その背後には確実に濃密な死の香りが漂っている。とりわけ印象に残ったのは、ホテルでシャンソンを歌うリロ(イングリット・カーフェン)が小さい頃のヴァランタン(カルロス・デベーザ)と階段で話し込んで、ドイツ語の歌を歌うシーン。「子供だったことあるの?」という問いかけに、「一度もないわ。生まれたときから氷の女王だったから」と答えて絵になってしまうイングリット・カーフェンが美しすぎてね……。もちろん、エンプティ・ショットだろうが人がギチギチに詰まっていようが、ギラつきもせず冷淡にもならず、心地よい夢のように見せてしまうシュミットの手腕に蓮實の「魔術師」という評を思い出しもした。『デ・ジャ・ヴュ』も当然素晴らしかったが、好み的には『季節のはざまで』の方がいいかな。『デ・ジャ・ヴュ』は一言も喋らないキャロル・ブーケの凛々しさと怖さが印象的だった。一緒に行った高校生の子は10月にモネも観に行く予定なので美術に関心があるのは知っていたが映画に関しては未知数だったので楽しんでもらえるか若干不安だったものの、観終わった後やTwitterの感想で満足していたようだったのでよかった。俺も高校生の頃10個離れたオタクにマハヴィシュヌ・オーケストラとか菊地成孔のCD貸してもらったり蓮實とかバルトの本もらったりしてたし、こういう形でレガシーは継承していきたいですね。終わったあとはまた喫茶店でお茶して17時に解散。が、どうしてもウイスキーとブランデーをひっかけたくなり、早く開いてる喫煙可のバーでジャックダニエルのロックとカルヴァドスをやる。マスターと母校が同じどころか博士満退で俺の将来を見ているようだった。やるか、バーテンダー……。
 帰りしなの山手線で打ち合わせ中だったタトゥーの予約がほぼフィックスになる。普通の店で彫ったら5万ぐらいのサイズのところを見習い価格で2万なのでまあいいでしょう。バイトもしてるし。モノトーンのアブストラクトを左腰にブチ入れます。9月に予定通りシフト入れれば5万ちょいぐらい稼げるはずなんで、できれば11月にタトゥー入れてkohshiかサノマの香水買いたい。10月以降のバイトもインスタで面接希望送ったけどまだ帰ってきてないです。俺を雇ってくれ~!帰宅して風呂入って飯、のち酒。あとは寝るだけです。

 また明日。


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