「『SHINOGRAPHIA』序に代えて」無料公開


 以下に6/23(日)、東京流通センターにて開催のShiny Star Festival 07(SSF07)にて60部頒布予定(本日を以てオンライン予約20枠はフル・リザーブとなりました。代表から御礼申し上げます)のシャニマス文芸同人誌『SHINOGRAPHIA』より、代表・ツァッキによる序文(1362文字)を無料で全文公開します。もちろん、パッケージ版の迫力をお手に取って確かめていただきたく(黒地に白抜きの文字が映える非常に美しいレイアウトです)、短い文章ではありますがこの序文を読んだ皆様がパッケージ版に胸と期待を膨らませてご購入の一助になることを願っております。また、本記事にはカリグラフィによるエピグラフのフランス語とその和訳も掲載しますが、これも紙面での味わいを是非体験していただきたく思います。オンライン販売は締めきってしまいましたが、当日のお取り置きもまだまだ間に合います。皆様のお運びを心よりお待ちしております。
 

「『SHINOGRAPHIA』序に代えて」―ツァッキ

Aux 28 filles qui sont crucifiées sur l'éternité.
(「永遠」に磔にされた28人の少女たちへ。)

 フリードリヒ・ニーチェは、その晩年にイタリアで老いた馬を見てしどけなく歔欷したというエピソードが残されている。私たちがシャニマスにおいて流す涙は、ニーチェの馬のようなものだったのだろうか。同情?共感?あるいはそのまた別の何か?いや、私たちがシャボン玉色の夢に見る景色はそのどれでもないし、ニーチェが流した涙もまたそういった安っぽい感情に左右されるものではなかっただろう。『アイドルマスターシャイニーカラーズ』は新たな生命を吹き込まれ動き出す。来るべきものを予感させながら、私たちの足元に恐るべきテクストの現実が絡みつく。私たちが最終的な賭け金とすることによって命がけのゲームにベットするのは、シャニマスの持ついくらでも選び取りうる真理をひとつに決定することができるかどうか、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、の可能性である。
 『SHINOGRAPHIA』は、シャニマスに関する批評、小説、詩、エッセイを掲載する文芸同人誌である。私たちがここで実現しようとしているのは、ひとつの強度であり、そして速度である。テクスト内の論理は常に開かれるとともに強靭であることが要求され、細部には神が宿り、全体を構成する計十四本の諸作品の熱量は書き手が選び取った真実を抱えて目にも止まらぬスピードで走り去る。この速さにあなたはついてくることができるか。真っ赤なカブリオレよりも速く、強く、ヴィヴィッドな文章の瞬きを、あなたは一瞬たりとも見逃すことができない。私たちはノクチルに、七草にちかに、八宮めぐるに、またあるいはプロデューサーに、何を見出してきたのかという問いが形式の如何を問わず『SHINOGRAPHIA』から噴出する。この雑誌は「あなたの」シャニマスが一体何なのかということに揺さぶりをかける毒であり、そしてシャニマスというゲームそのものに対する挑戦状である。
 さしあたって私たちにできることは、美少女によって仮託されたエクリチュールの戯れをまずは真に受ける、、、、、、、、ことである。『天塵』のラストシーンで打ちあがる花火とその前で誰にも振り向かれることなく、蒼いままに歌い踊る少女たちが偽であると、誰が証明できようか?『VS』で和泉愛依が流す涙の純度を、何に比べることができるだろうか?私たち「光空学派」が『SHINOGRAPHIA』でやろうとしていること、それはシャニマスといういずれ忘れ去られるべき未来の廃墟から本当の言葉をすくい出そうという試みである。その実践がつまり批評であり、小説であり、詩であり、エッセイであるわけだが、そこにおいて語られる言葉はおのおのの書き手にとって常に真実であり続ける――たとえ『アイドルマスターシャイニーカラーズ』というゲームが忘れ去られようとも。そこに語るべきテクストがあり、語られたテクストがあるという事実の責任の一端を、この雑誌を手に取ったあなたには担ってもらうことになる。書かれたテクストはそれだけでは不十分で、テクストは読まれることによって最終的に完成する。同じ志を持って書かれた諸テクスト群の熱量と完成度に胸を打たれ、自分にも何かを書いてみたいと思ったあなたこそが、次のシャニマス言説を構築する最初の一人となるだろう。
 虹色の彗星が瞬くまであまり時間は残されていない。輝きのうねりのなかへ飛び込むのだ。そして、あなただけの空を染めるダイ・ザ・スカイことが、『SHINOGRAPHIA』の書き手の総意である。

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