米津玄師と俺

まえがき

(8/23に見直して書きました。記事を書いたのは8/8)

 二週間前くらいに酔って書いたので、そもそもこんな下書きがあったことに驚いた。誤字だらけで酔っぱらった勢いで標準語と関西弁のキメラみたいなオタクのとんでもない地獄みたいな吐瀉物みたいな文章が下書きに残っててマジでびっくりした。記憶なかったもんね。

 酔ってるおれは妙に饒舌で、なんか面白いのでひどい誤字だけ訂正してこのまま投稿することにする。

 やってることは、俺が「米津玄師大好き♡」っていろんな言葉で自分の語彙から褒めてるだけ。まあ、動物園の動物を見る感じで気軽に読んでくれたらいいなと思う。人生の半分くらいずっと米津玄師の曲が好きなオタクの吐いたゲロやね。

YANKEEで力尽きて寝ていたようなので、BREMEN以降は俺にお酒を渡すと書くとおもう。続きがよみたかったら俺に酒をよこせ。素面で書けるかこんなもん。


米津玄師と俺

 米津玄師が新曲を出して、もうしんどい。ここ数年アルバムをとにかく待っていたので供給に脳が追い付いていない。浮かんでくる米津玄師への感動の気持ちを片っ端から吐き捨てていかないと爆発しそうなので急ぎでnoteを書く。誤字とかもうそういうのも無視してとにかく決壊する前に書き切ろうと思う。

0.遊園市街

https://music.apple.com/jp/album/%E9%81%8A%E5%9C%92%E5%B8%82%E8%A1%97/726965009?i=726965344

 とりあえず1曲目はこれ。もっと遡ってもいいけど今回はこれから。正確にはハチ名義だけどボーカロイド用のイベントに作ったCDの最後に自分で歌唱してるからこれ。米津玄師名義だと「あなた」って二人称が多いけどこれは「君」だから珍しいかも。カウントしたことないから俺の気のせいかも。「もう動かない 観覧車 その中で君は泣いた」が全てやね。「空が溶けだす その前に」の切なさと本当に遊園地の情景が浮かぶくらいの元気な音が大好きです。あ、そう俺は別に音楽知識なんてないから歌詞の尊さと俺が好きであることを回りくどく書くだけやからもうあと100曲くらい同じこと繰り返すで。これをアルバムの最後にペッて作れるならもうお前は成功が約束されとった。予定調和や今の成功は。「ボカロのアルバムに何入れてんねん」って文句を思いつきもしないくらい綺麗なピースとしてハマってる。ボーカロイドで大成功した曲と新規書き下ろしの最強曲を引き連れていながらアルバムを綺麗にまとめて米津玄師に繋げた傑作だと思う。

1stアルバム『diorama』

1.街

 アルバム『diorama』の1曲目。もともとは生放送とかで披露してた『降る朝』(歌詞はここ)って曲なんだけど今のサビを追加してこの形になったのかな。多少歌詞が変わってるけど元の歌詞も素晴らしい。だいたい生放送で先に披露する歌詞の方が言葉選びのセンスが俺は好きだな。『diorama』がどういうアルバムなのか、まさにオープニングみたいな感じでこれからの曲への期待をどんどん高めてくれる。でも絶対単品じゃ聴かない。『diorama』っていうアルバムの文脈で最初に歌われるからこそ愛しくてワクワクさせてくれる曲に感じる。

2.ゴーゴー幽霊船

 動画はこちら。ボカロの投稿から暫く時間が空いて「引退したのかなあ」みたいなのが囁かれていたなかで突然投げられて全人類がおったまげた曲。ハチのどんちゃんした、繰り返し聴きたくなる強さをちゃんと自分で歌って米津玄師名義で投げて来たので全人類は死んだ。これでアルバム出しますっていうんだからもう当時中学生だったおれは受験勉強なんてできなかった。責任を取ってほしい。ほんでこれまた歌詞が意味わからんのよ。共感もできひんし何を歌ってるのかもわからへん。語感と言葉選びがもうめっちゃええとしか言われへん。ただ『diorama』の中ではめっちゃ攻撃的で突き刺してくる曲のくせに突出してキャリーするみたいな曲じゃないからすごい。ハミ出て単品で聴くと、これ以降のアルバムの曲よりは・・・ってなる。でも『diorama』の統一感を損なわないけど、「米津玄師はハチが一歩踏み出した姿です」って語ってる。

3.駄菓子屋商売

 『diorama』発売よりも前に『ゴーゴー幽霊船』は発表されていたので、『街』から知ってる曲で盛り上がった俺はもうビックリするわけ。なんか突然変な声を加工したサンプリング?っていうのが滅茶苦茶してるもん。「何の音?」ってパニックになってる俺を

さあさ始まる新時代までの声もなくなった幾千年

で殴ってくる。もう俺にできることはない。これから米津玄師の投げる言葉を全部耳から脳に書きつけるだけで精一杯だった。

とうに廃れた知識なんてほら全部全部全部置いて行け

なんて言われたら「その通りにします」としか言えない。これから米津玄師が新しいアルバムを見せてくれるんだもの。どこか投げやりでノリの良い曲。ゴーゴー幽霊船で昂ったリスナーの心を完全に射止めて殺しにかかってる。

4.caribou

 お前~~~~~~マジかお前~~~~~って女のオタクみたいな反応をさせにくる。めっちゃ昔の曲のリメイクだから。もう好き。カリブーのカップル二人の口喧嘩をこれだけポップに表現できるやつ、おる?童話音楽やらせたら世界一やお前は。なんか共感性の高い歌うたって全人類代表するよりも、好きに絵本作って歌って山奥で暮らしてくれ。もうお前の絵本と童話しか聴きたくない。

両方が両方を見下すもんだから 二人はいよいよ宙に浮く

ってコミカルかつ上手いこと描写するのずりいよ、お前はええ声でええ曲を歌ってるのに詩まで上手いことするんか。なんなんだよもう。

5.あめふり婦人

 サビ前の語感の良さ世界一。「この街で一番語感の良い曲を出してくれ」「あいよ」つって

おどろに揺れるマッチの火を抱え どうやらとても暖かく

を提供してくれる。「どうやら」とか「とても」なんていう言葉を重ねたら気持ち悪いのに違和感もなくスラスラとむしろ気持ちいい音の連続にしてくるところが嫌。「内に内在」とかブログで使っちゃうくせに語感のセンスがずばぬけてるんだからもう。

6.ディスコバルーン

 暗いパンダヒーローみたいなサビ、って例えるとなんだか貧相な語彙でよくない例え方をしてるみたいなんだけど割とマジでそれっぽい。これもサビ前が世界一カッコいいことで有名(米津玄師は世界一なので世界一が並列することはよくある)。

美徳などありはしない 受け取る心もない  光って回る地球儀が落ちた

って人生に一度は手書きで写してみたい。中学生だったから俺はノートの端っこに書いてみた。めちゃくちゃ気持ち良かった。オススメです。サビは「ラララララ」なのにそれ以外の歌詞は徳島最後の希望。ララララ!小気味いい言葉ぱっぱ!最強!

7.vivi

 動画はこちら。童話やらポップな曲やらで押してきたのに、ここに来て「いや、感動させたるわ」つってぶん殴ってくる。米津玄師のすごいところは、歌詞の意味が全然わからないくせに納得させてくるところだと思う。

愛してるよビビ

これはもうめっちゃわかる。「愛してるんやなあ」、と。人間、「愛してるよ」なんていう言葉には弱いわけで、ストレートに言われたら「愛してるんやなあ」となるよね。でも

明日になれば 今日の僕らは死んでしまうさ

ってちょっと考えないとわからない歌詞じゃん。眠りに落ちたあとの自己同一性とか、米津の考えていたことが書かれているんだろうけど俺らにはそんなんわからん。なのに「明日になれば 今日の僕らは死んでしまうさ」と言われると、「明日になれば 今日の僕らは死んでしまうさ」ってことなのかあ、って納得させられるパワーがある。わからないのに、ちゃんと言葉の角を落としているせいで違和感がない。ずるいぞ。

8.トイパトリオット

 いにしえの曲のリメイクその2。サビは完全に『toy parade』という曲そのまんま。

年老いたその時も変わらずに 褪せた色に続いていけばいい

の歌詞ほど寂しくさせてくれるもんはこの世にないわ。これからも昔の曲のリメイクやってほしいなあ、って思わせてくれる。中高生でこれ書いてるとかちょっともう俺の中高生はなんだったんだろうって感じ。割とこれも自信ある曲っぽく、ラジオで流したりもしていたのでどうせなら動画アップしてほしかった。

9.恋と病熱

 動画はこちら。宮沢賢治の『恋と熱病』からタイトルを借りたとか。もともとはまんま『恋と熱病』だったらしい。この後に続く『乾涸びたバスひとつ』は生き別れの兄弟で

錆びた金網ぶら下がって ボタン千切っては揶揄った

って歌詞が配信で披露されたときにはあった。『乾涸びたバスひとつ』では

錆びた金網にぶら下がり ボタン千切って笑ったこと

っていう歌詞がある。生き別れの兄弟じゃん。

些細な嘘から炎症が起きた

ここは誰もが共感できることをタイトルの世界観に掛けて言っててこの頃からもう共感性の片鱗はつかめてるんじゃないかなあと思う。

10.Black Sheep

 自由奔放、ここに極まれり。サビの歌詞が歌ってる発音と何一つ一致していない。

何を話しているのかはよくわからなかった

なんて歌詞を「○×△☆♯♭●□▲★※」って歌う自由さが偉すぎる。「黒い羊が一匹……」って数えていく詩も言語としてわかるんだけど何を言ってるのかはわからない。でもクセになる。

ここは誰かのジオラマなのだ

みたいな核心を突く歌詞もあるけどここでは考察しません。

いつの間にか酷く時間が経って

ここ文面通り、後悔やら惰性やらを含ませて歌うのが本当に上手い。歌詞には書いてないけど歌い出しに「あぁ、」という音が入っている。聴いたことあるならわかるはずだ。まさにベッドで寝て時間が過ぎたときの感情をそのまま歌に表現していて、「うわっ気持ち悪っ」てなるよ。ベッドで横になってだるくて時間がそのまますぎていくのを歌にしたらこうなるっていうかこれ以外ありえないだろってくらいそのままな歌。

11.乾涸びたバスひとつ

 感動で殴る系の第二弾。

ねえ あなたとふたりで逃げ出した あのほの灯りへと行きませんか

つって。行くよ!もう。『恋と病熱』を聴いた後にこの歌詞やら曲やらを聴くと、名言されていないのに絶対に続編だって思わせられる。実際たぶんそうなんだろうけど、ひとことも明言されてないしタイトルも全然違うのに続きだって思わせられる。『恋と病熱』はMVが公開されてるのにこれはアルバム内だけなのずるいよね。こんな良い曲なのに。っていうと『diorama』の半分くらいは単品で出しても偉い曲なので半分くらい公開しないといけないことになってまう。オーマイゴッド。

12.首なし閑古鳥

 俺は勝手にヨネケンサンバって呼んでる。明るいのに陰がある不思議な曲。見たことない表現で、知ってることを言い尽くされて気味が悪い。

愛されてるのは 確かでないから形になって欲しいけれど

と歌う。その通り。その通りなんだけど、愛に確かな形が欲しいことをやわらかく独り言みたいに言い訳臭く歌うのは人類で米津玄師ただ一人やろ。

なんとも歪な形で生まれて 成す術なんてなかったけど
あなたによく似た 心があるのさ
それさえ確かであればいい

 身体の歪さとか疎外感とか全部ひっくるめて歌ってくれる米津玄師、そりゃついていくでこんなん。俺ら気持ち悪い人間にも心あるよなって思うで。それさえ確かであればいいもんな。愛されてるのが確かでなくてもな。いや共感してまうって。

13.心像放映

 物語に出てくる女目線まで上手いんか貴様は。米津は性癖なのかしらんがたいていの女の一人称は「あたし」と発音する。「私」と書いてあっても99割は「あたし」と読む。

睫毛の下から絵の具のような心の一部が落ちていく

 いや、「泣きました」って書くだけでそんな言葉使う?ただその事実ひとつを言うためにどんだけ遠回しに言うねん。でもこのこだわりが世界観を作ってる重要な要素やもんな。

 diorama・ベスト・さわやか・ソングの世界一位。これで締めるのはあまりにも世界の本質を理解しすぎている。こいつが日本で一番偉い歌手になるのはもう生まれたときから決まっとるんや。

がらくたみたいな心でも 何かプレゼントできるかな

って、何食ったら書けるんや。がらくた食ったらええんか?なあ。自分の事を下げながらも詩的で優しい例えやんこのひらがなの「がらくた」って。んでもう音もめっちゃ気持ちええ。がらくたやでがらくた。百回くらい言えるわ。がらくた~~~~~。ほんでそのがらくたっていう役に立たない物、いらない物の表現からプレゼントを対にできるセンス。何もないけど何かあげれないかなって。愛しいよこの女の子。歌詞書いたん米津玄師やけど。

14.抄本

 語ることはない。ここまで書いて未だにこのアルバムを聴いてないやつがおったらムカつくからや。「最後はキミの目で確かめてくれ!」ってやつや。実際にこれはほんとうにマジでアルバムを通して聴くしかない最後の曲。サブスク解禁やねんからこの機会に『diorama』だけは1から14まで通しで聴け。マジで。

1stシングル『サンタマリア』

1.サンタマリア

 動画はこちら。閉じこもって遊んでいた米津玄師少年が外へと目を向けて、これから大衆やそれらに向けた音楽シーンと向き合っていきますよという曲。インタビュー記事とか漁って読むと決意が感じられて面白い。「一緒に行こう あの光の方へ」つってね。お前が光やっちゅうねん。太陽ですよもう日本の太陽。サン・オブ・ジャパン。お前がナンバーワンや。

2.百鬼夜行

 生放送で割と披露されてた曲。弾き語りやとめっちゃ期待されてたんやけど、実際音源化されるとちょっと期待外れやった感は否めない。何があかんのやろ。音楽的な話は俺にはわからん。歌ってる物語は割とわかりやすくて、和風ノリノリな曲なんやけどなんか、なんかちゃう。本人もそれはわかってたんかちょっと控えめ。好きやしリピートするけど、もっと化けたんじゃねえかって配信の弾き語りを思い出してしまう。

3.笛吹けども踊らず

 「Flamingo」の先祖。酔っぱらった感じの表現そのまんまやね。割とこの文脈が今に続いてる感はある。これも歌詞がめっちゃわかりやすい。タイトルで締めるところとかめっちゃ好き。こういう物語調の歌詞ひとつとっても米津玄師っぽさが常に現れてるからええねんな。

俺は酒を飲んだんだ 夜の淵踊ったんだ
そしたら靴が脱げ落ちて 夜の魚に食べられた

 あと〆の「笛吹けども踊らず」の「踊らあああ゛あ゛ぁ゛……ず」の部分がめっちゃ昔っぽい歌い方で興奮した。

2ndシングル『MAD HEAD LOVE/ポッピンアパシー』

1.MAD HEAD LOVE

 動画はこちら。両A面シングル。俺にはよくわからないが、どっちもええ曲でメインを張れるらしい。こんなラブソングありなんか?ってくらい乱暴に愛を歌ってる。タイトルも「LOVE」って入ってるもんな。「ベイビーベイビビアイラービュー」の清々しい語感に振り切った歌詞。語感の天才か。口に出すだけで気持ちいい言葉やわ。「疲れ果て果て果てど愛してる」ってくらい、疲れ切ってうんざりしているその果てを一文に落とし込んだ才能が怖い。それでも愛してるって結論を出して歌うんよ、米津玄師は。この頃がどれだけ凄いか力説しても俺の言葉じゃ足りんやん。こんな暴力的で新しくて才能に満ち溢れた歌が登場しても、今ほど誰も目を向けなかった。俺はムカつくね。

2.ポッピンアパシー

 動画はこちら。「MAD HEAD LOVE」が他人との関係を歌ってるなら、こっちは自分の内側に深く入り込んだ歌やと思う。一人称も二人称も出てこないけど、ずっと日本語特有の主語省略があると感じてる。ずっと「俺」だか「僕」だかが頭にある。米津玄師とハチは一緒の人間やと思い出させてくれる音と歌詞。「悲しみの中で」じゃなくて「悲しいの中で」と表すのは細かいけど大切なポイントだと思う。たいていの人は無理やり「かなシミのなかで~」って語数を押し込めて歌うと思うんやけど、米津玄師は「かなしいのなかで~」って歌える。「悲しみ」には所有を表す言葉が必要やけど(俺の悲しみとか、君の悲しみとか)、「悲しい」は文脈なしで登場しても一人称の「悲しい」って絶対にわかるもん。誰にとっても一人称の「悲しい」やからスッて米津玄師の一人称に吸い込まれる。

3.鳥にでもなりたい

 「笛吹けども踊らず」からずっとそうやけど、何か新しいことを試さないと気が済まないらしい。デンドンデンドン。鳥にでもなりたいんかなあ、って感想以外はあんまり書かれへん。でも好き。

2ndアルバム『YANKEE』

 ついに来てしまった最強のアルバム。工作で自由に自分の作りたいものを作って、自分の言いたいことをとりあえず言った1作目から『サンタマリア』を経て外へ向いたんですよ、米津玄師は。ラブソングを自分の文脈に取り入れて滅茶苦茶しても、決定的に違うのは童話やら小説みたいに登場人物がいないってところ。普遍に届く歌を歌ってたんよ。タイトルの由来は移民って意味でのYANKEEらしい。メジャー音楽シーンにボカロとか暗い場所から移動してきた米津らしいよね。

1.リビングデッド・ユース

 動画はこちら。トップバッターからして、めっちゃロック。米津は、帰りの会で謝らされた経験のある全国の少年少女の味方だ。学校でクラスの人間と壁を感じた人間全員に向けて歌っている。カッケエんやわ。居場所がない人間の味方。ヒーローなんよ。

精々生きていこうとしたいんだ 運命も偶然も必要ない
遊ぼうぜ 明けぬ夜でも火を焚いて今
そんな そんな歌を歌う

 頑張ろうぜって言ってくれる。「あいつの作った作品すげえらしいぜ」っていう『diorama』から、明確に誰かを意識した歌に変わってるのが『YANKEE』。これが『YANKEE』が最高な理由。「弱いまま逃げてしまえたらいい」って肯定している。めっちゃ元気もらったもん当時。今でもめっちゃ聴く。

2.MAD HEAD LOVE

 重複するので省略。

3.WOODEN DOLL

 動画はこちら。もう完全に語り掛けてるやん。「ちゃんと話してよ 大きな声で」って。それでも変わらないのは、米津の言葉選び。やることが変わっても、ちゃんとそれに適した仕方で言葉を選んで撃ち抜いてくる。

いつだってそうだ 心臓の奥で誰彼彼も見下しては
見下される恐ろしさに 苛まれて動けずに

 「内心見下してて、ブーメランが怖い」をこんなに滑らかな音と雰囲気で並べられるなんて。ジャンルが変わっても最適なセンスを持ってる。だれかれかれ。これで全人類を表してるやん。だれかれかれって。いっぱい言いたいね。舌触りの良い言葉が上手すぎるねんほんまに。

4.アイネクライネ

 動画はこちら。どうやって共感を呼ぶか、薄々米津玄師は気付いてた。物語風の作品を作る時にも実は割と必要やし、感動する物語を書くなら意識せなあかんもんな。でも自分の世界観での物語じゃ共感されにくい。完全にラブソングに舵を切って共感を狙いました、みたいな。

 大成功。ここまで『ゴーゴー幽霊船』でも5000万再生なのに(8/8現在)、アイネクライネは2.4億再生。恋愛ソングの共感、強すぎる。東京メトロのなんかにも使われてたと思う。関西人やから知らん。これがめっちゃ売れたので、ツイキャスのコメント欄は雑談をしていても「アイネクライネ歌ってください!」で溢れかえった。俺はニコニコして見守っていた。ホント。でも俺は帰りの会で吊るされるタイプなのでこの曲に共感できない。米津玄師は帰りの会で吊るされる人間にも、パリピにも刺せる天才なんだ。真逆やのに。米津玄師はたぶん学校に嫌な思い出が多いタイプやのに、どうやったら共感できる歌が作れるかわかってる。怖いでゴンス。

5.メランコリーキッチン

 ベスト・ヨネヅケンシ賞世界一位。左右でチャカポコ鳴ってんのが気持ちよすぎる。いちいち発音が快感。寂し気な世界観の歌詞の完成度といいこれを超える曲まじでないってくらいすごい。と俺は思う。小説風で誰もが共感できるように仕上がっていて、これこそ普遍性を持ってる。少し大げさなくらいに寂しさを描写していて、なのにスっと頭に景色と情緒が入り込んでくる。

あなたの頬や鼻筋が今 静かな机に並んで見えた
少し薄味のポテトの中 塩っ気多すぎたパスタの中

 もうめっちゃ寂しい。部屋に自分以外誰もおらんのやろうなってなる。小説も絶対上手いと思う。ずるい。並べられた言葉のすべてが世界観に馴染んでいて、一本の小説から抜き出して歌詞を作りましたって言われても納得できるレベル。世間が流すべきは『Lemon』とかじゃなくてこれ。『メランコリーキッチン』だけ一生流しといたらええねん。一生で一番多く流したことのある曲はこれ。記録更新する曲が出てくるとしたら米津玄師からでしかありえないし、そもそもこの時期の米津以外にこんな曲が出せるとも思わない。ほんとうに最強の一曲。

6.サンタマリア

 ボーカルだけ録りなおしたらしい。省略。

7.花に嵐

 『YANKEE』が素晴らしいのは、物語系と共感を呼ぶ系で共存しているところ。これもどっかの小説から文脈の途中で断ち切って持ってきましたって感じの歌詞。でもメランコリーキッチンよりは掴み取りにくく、儚げな雰囲気だけが読み取れる。花をもらうっていうのはキーワードになってて、割とこれも人を意識していてまさに『diorama』から変化の途中の曲だと思う。だからめっちゃいいのよ。

8.海と山椒魚

 『サンタマリア』って「祈り」っぽいくせにめちゃくちゃ決意表明みたいな感じで、本当に「祈り」っぽいのはこっちだと思う。自殺した友達を想って歌ったとか、そういう曲らしいのであんまり歌詞の推測とかはできない。ただ、ズッシリと重い曲から少しもズレのない、選びに選び抜かれた言葉たちがパズルよりもキレイにはまっている。

心あるまま縷々語る

これに尽きると思う。

9.しとど晴天大迷惑

 どんちゃんした曲を作りました、って曲。歌詞にひっかけた野球応援みたいな音が面白い。とにかくテンポよく、映画のシーンが次々切り替わるみたいに言葉が飛んでいく。米津玄師の頭の中にある街を駆けまわっているような気分にさせられる。アルバムだけでMV公開がないけど、割と好きな曲としてよく挙げられる気がする。楽しいし繰り返し再生したくなる。

10.眼福

 これまた新しくボーカルとギターだけ。歌が優しすぎる。もし俺がギターを弾けて歌が歌えたなら、首を軽く動かしながら座り込んで弾き語りたい。

「きっと二人は大丈夫さ」
子供みたいに笑う
その鼻先が頬を突いて笑う
言葉を捨ててまた笑う

 惜しいのは、外で聴くと雑音で聴こえないこと。「よっしゃ、やるか!」とはならないけど、ただ落ち着いて、穏やかに耳を傾けることができる新しい米津の曲だと思う。だいたい全部の曲で音が多くて、しっとりした曲でもざわざわを掻き立てられていた。でも『眼福』は「あたしはそれで眼福さ」って感じになる。

11.ホラ吹き猫野郎

 『しとど晴天大迷惑』はギターの普通な主張が強くてなんかその辺でも聴けそうなイントロだったけど、『ホラ吹き猫野郎』は米津玄師だけのどんちゃん騒ぎだと思う。「日本語でこの曲にノリノリな歌詞を付けろ」ってお題に対して100点満点で答えてる曲。歌詞が先か曲が先かは知らんけど、俺はこんなリズミカルでオシャレな歌詞他に知らない。日本臭くて、昭和臭くて、底抜けに明るいおちゃらけた曲。大好き。一生聴いていたい。『メランコリーキッチン』と『ホラ吹き猫野郎』はMVとか出してない意味がマジでわかんない。世界獲れる。すくなくとも何人かの脳を破壊して米津玄師以外聴けなくすることはできるとおもう。

12.TOXIC BOY

 再生したらドキッとするサンプリング音。駄菓子屋商売以来、こんなにびっくりしたのは。『ホラ吹き猫野郎』でどんちゃかしたくせに、連続でこんな球投げて来てもう俺らキャッチできひんでこぼしてまうわってくらい騒がしい。クルクルパー!よくわからん世界観が、首を振ってノッてたら過ぎ去っていく。

心ここにあらずのままでオーライオーライ

らしいです。これもめちゃくちゃリピート再生してまう。だからMVを出せ。『YANKEE』全曲MV付けて出してほしい。米津玄師はすげえんやぞ。

13.百鬼夜行

 省略

14.KARMA CITY

 これまた新しい試み。打ち込みだけで最初はインストのつもりだったけど後から歌を入れたらしい。でもちゃんと〆なだけあってアルバム全体が引き締まる感じがする。知らんけど。『TOXIC BOY』じゃ最後は飾れないし、やっぱり『KARMA CITY』が「アルバムはこれで終わりや~」って物語ってくれるからこそ1枚のアルバムとしてここまで素晴らしいんやと思う。


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