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DINNER IN AMERICA のディナーとは

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「ムショはアメリカで唯一まともな晩飯が出ると彼は言いますが、あれもまた一つのアメリカを表現しているつもりです。お金を仕送りしてもらうことで、他の囚人とは違う食事ができる」アダム・レーマイヤー監督

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最初に出てくるローストビーフが、凶悪で食べたくなくてすごいんですけど、↑のことを踏まえると、ストーリーの経過と共に段々まともな食べものになっていくのでしょうか?

🍽ローストビーフ

「ディナーインアメリカ」で、一番初めに出てくる食事はローストビーフ・粒コーン・ロメインレタス・栄養強化ゼリー(ビタミンCだろうおそらく)です。
この食事は手をつけられずに、ゲロがかかります。
直後にサイモンが食べる他家の日曜日のディナーは、ローストターキー・グリーンピース・カットいんげんの何らかのキャセロール・マッシュポテトとオリーブ・ゼリー・スタッフド茹で卵etcです。
これはいかにも余剰であり、床に叩き落とされます。

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🍽サンドイッチ

この映画の強烈な画面のひとつが、バス停のベンチに太ももを開いて座り、袋からサンドイッチを食べるパティです。
座り方で太った人間であることを表し、とろみのある茶色いソースがかかった何らかのサンドイッチをモソモソと食べています。そしてクソまずいといじめられます。

その後、バイトをクビになった後もパティは同じ行動を繰り返します。ああ、この映画では食事は個人の社会性の無さのメタファーとして描かれるのかなあ、と思い至ります。

🍽パティの家。タコスサラダ/チキンコルドンブルー

少し戻って、パティの家のある日のディナーはタコスサラダ・チョコレートケーキです。パティの家はあまり余剰に食事を出しません。しかしデザートが毎夕食につく模様です。
家族揃って食事を取る時に、パティのフラストレーションは最も高まります。
(そしてストレス解消が必要になります)

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サイモンが居候する事になる日のディナーは、チキンコルドンブルー(冷凍食品、とても古いメニュー)・牛乳・粒コーン・インゲンの何らかのキャセロール・プリンです。
もしや、パティ家はデザートを食べるので炭水化物を抜きぎみかも知れません。

そして、毎週木曜日は米国人のソウルフード「クラムチャウダー」が出る、当たりの献立との事です。
英国と同じく、日曜日の礼拝とご馳走の習俗があり、その他の曜日も恐らく献立が固まっているのだろうということが分かります。
冷凍食品を使っているとは言え、パティ家のディナーを揃える暮らしは豊かです。そして、タコスを取り入れるぐらいには革新的で保守的というわけではありません。
と、ここまで来ると、ストレス≒食事・食卓ではないんだな、となります。

🍽おごりのランチ/ハンバーガー

ハワイアンバーガーは、バーガー自体の明確なビジュアルは出て来ません。(ハンバーガー屋さんの内装の明確なビジュアルは出てくる、笑)
関東近県の人が「行きつけのmyソバ屋」を持っているように、米国人の行きつけの店のジャンルは大人も子供も「ハンバーガー」なのでしょう。
パティとサイモンがガツガツ食べるハワイアンバーガーには、もしや「子供っぽい」という意味が乗るのかも知れませんが、日本人から見ると米国人はおおむね大人も好んで食べている印象があります。

🍽刑務所のステーキ

弟のガールフレンドのスイーツ、サイモンの実家のランチ(というかテーブルセット=食器)を挟んで出てくるのが、刑務所の食事です。
牛ステーキ・レンズ豆・コーン・ロメインレタス・何かのトマト煮かプルーン煮。
確かに、まともです。

🍽まとめ

ここまでネチネチ見てきて、何が言いたいのかというと、
「ディナーインアメリカ」は、読み解きが進みに進んだ食事シーンについて、出だしこそ旧来の意味づけに沿った作りをしているけれども、訓練された観客が期待するほどには(宮崎駿ほどは)意味付けをしていないのではないでしょうか。逆に。

「ディナーインアメリカ」だけど、ディナーは句読点、いまのアメリカのスケッチであって、さらっと見てもよいのでは?実は。と思いました。

追伸:
冷凍豆(グリーンピースなのか、コーンのことなのか)で青タンを冷やして、って言うのが興味深かったです。食品というよりも物品に近い。

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