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今週の金ローは『アルマゲドン』 〈上司にしたい!〉頼れる男たちの名言に胸熱

爆速初動対応のNASA指揮官

もし実在してくれたらどんなに頼もしいだろう!
そんなリーダーたちが中心となって、映画『アルマゲドン』(マイケル・ベイ監督)の物語は動いていく。

この映画は、ニューヨークに隕石群が降り注ぎ、焼け野原になるという衝撃シーンからはじまる。観測の結果、更に巨大な小惑星が地球に向かっており、18日後に衝突すると判明。米国大統領への報告を済ませたNASAの指揮官・トルーマン(ビリー・ボブ・ソーントン)が、管制室で指示を出す。

「いいか諸君。衝突回避のための方法を考えうる限り提出してくれ。どんな小さなアイデアでも構わない。ピザの箱や紙ナプキンに殴り書きしたスケッチでもいい。日頃疑問視されているNASAの存在意義を見せてやろうじゃないか!」

このセリフから、トルーマンが形式ばらない性格だということがよく分かる。きっと彼の職場は風通しがいい。その後の会議では、小惑星に穴を掘って核弾頭を埋めるという実際に採用されたアイデアだけでなく、太陽光線で小惑星を熱して破壊するといった奇抜なものまで、あらゆる案が検討された。

また、トルーマンは宇宙へ送るクルーを決めるときも、任務に就く適性さえあれば経歴は問題にしなかった。彼は当初、石油採掘技術者のハリー(ブルース・ウィリス)を招いてNASAの宇宙飛行士たちに掘削のノウハウを教えるよう頼むつもりだった。しかし、ハリーは「餅は餅屋」と言わんばかりに、普段から穴掘りをしている自分とその部下たちこそ宇宙に行くべきだと主張する。トルーマンはハリーの専門性の高さを認めて要求を受け入れ、ハリーの部下たち(薬物中毒者や前科者といった問題児ばかり!)に訓練を施すことを決める。

しかもトルーマンは、こんな重大なことを即断即決しているからすごい。ハリーに返答するのに1秒もかからなかった。作中、NASAで爆速の初動対応が展開されたのは、まさしく彼のおかげだ。

真逆の「ヘタレ・リーダー」を描く映画もある

2021年、トルーマンの真逆をゆくリーダーが登場する映画が公開された。巨大隕石の衝突を描くSFコメディ『ドント・ルック・アップ』(アダム・マッケイ監督)だ。

映画の冒頭、主人公の天文学者(レオナルド・ディカプリオ)が地球へ接近中の彗星を発見して、衝突の可能性を訴える。しかし米国大統領は間近に迫った中間選挙のことしか頭になく、「静観し精査する」と返答。その後しばらく経ってやっと対策チームを指揮するが、思わぬ理由でミッションを中止してしまう。

『ドント・ルック・アップ』は、現実の気候変動問題になぞらえて制作された映画だ。国を引っ張るリーダーたちが、責任ある意思決定から逃げ続けてしまう。気候変動だけでなくコロナ禍を経験した我々にとっては、『ドント・ルック・アップ』こそがリアルなストーリーで、『アルマゲドン』はかなり理想化された社会を描いていると感じるかもしれない。

『アルマゲドン』のキャラが理想的なリーダーとして行動するシーンは他にもある。宇宙へ向かう前々日、ハリーがトルーマンの一枚上手をいくナイスな判断をする。ハリーとトルーマン、そして宇宙飛行士・シャープ大佐の会話を引用しよう。

ハリー:明日の夜は全員オフにしてくれ。
トルーマン:どういう意味だ?
ハリー:休みだよ。出発までに最低10時間、外出許可をくれ。
トルーマン:そんなことが認められるはずがないだろう。機密が外部に漏れたらどうする? それにケガでもしたら?
ハリー:みんな訓練で疲れ果てている。このまま宇宙に送り込む方が危険だろ。あいつら精神的に限界にきてるんだ。いきなりこんなところに引っ張ってこられて、明日が地球で最後の夜になるかもしれないんだから、家族とゆっくり過ごさせてやるぐらいいいだろう。
トルーマン:どう考えてもそれは……。
ハリー:大佐、子どもは?
シャープ大佐:娘がふたり。
ハリー:あんたも娘の顔が見たいだろ? 譲らないぞ。これだけは絶対。実現させろ。

結局トルーマンはハリーの主張を受け入れ、クルーたちは基地を飛び出して休暇を楽しむ。家族や恋人と過ごす者もいれば、巨額の借金をこさえて夜の街へ行き、警察のご厄介になる者も……。トルーマンの心配どおりだったが、クルーたちの様子を見ると、皆元気を取り戻していた。前の日までピリピリしていたのが嘘のようだ。

ハリーはまさしく理想の上司で、部下たちは本当に幸せ者だ。一方、トルーマンはどうか。クルーの休暇を実現するため、きっと苦労してNASAの関係各所に説得して回ったに違いない。彼もやはり上司の鑑だ。

ハリーやトルーマンみたいな上司が欲しい。あるいは、彼らみたいなリーダーになりたい。そう思ったとしても、あまりに高い理想かもしれない。でも、一晩くらいは夢をみたっていいじゃないか。『アルマゲドン』のアツすぎるドラマにどっぷり浸って、最高のクライマックスにスカッとしよう。今週の金曜ロードショーの放送(3/17の21時 日テレ系)、お見逃しなく!


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