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アメリカ大学院入学への道のり④撃沈の学部長面談

4月2日。何年も着ていなかった無難な黒ジャケットを羽織って、私はダウンタウンへ向かっていました。L先生にこれ以上ないくらい背中を押してもらってメールを出した数時間後、学部長であるS教授はすぐに返信をくださり、わずか3日後には教授のオフィスに呼ばれていました。

【最初から読んでくださる方はこちらからお願いします。】
アメリカ大学院出願への道のり① 出願決心〜手探り準備編
アメリが大学院出願への道のり② ピンチの数々編
アメリカ大学院出願への道のり③ L先生からの後押し


TESOLを学びたいと思ったきっかけ、第二言語を学ぶことへの思い、本帰国する年が決まっているためどうにか今年入学したいこと、自分がプログラムに貢献できること… 。

キャンパスに向かう運転中も、1時間も早く着いた駐車場の車内でも、伝えたいことを何度も口に出してシュミレーションを重ねました。思いだけはあるという自負はありながらも、緊張で胸はいっぱい、深呼吸しても身体はガチガチ。とにかくストレッチをしてみたり、ここまで来たことに思いを馳せて自分を鼓舞し、覚悟を決めてオフィスのある建物に向かいました。


4階までエレベーターで上り、学部の敷居をえいっとまたぐと、正面の壁にはDepartment of Applied Linguisticsの文字。それだけでも圧倒されます。受付で用件を伝え、少ししてS教授が迎えに来てくれました。彼女のオフィスに迎えられ、持参したレジュメと志望理由書を手渡します。面接というよりカジュアルな面談という感じ。


S教授:So… how about telling me about yourself? 
カジュアルなトーンでS教授が本題へと舵を切ってくれました。
きた、志望動機。わかりやすい展開に安堵しつつ話始めます。

私(英語):ボランティアの機会をいただき、コミュニティカレッジで英語のクラスを手伝っています。主にグループワークの補助をしたり、個別に質問に答えたり、そうやって生徒さんと交流する中で気づいたんです。彼らからの「ありがとう」が私にとってすごく意味のあることだと。
…とここでうっかり感極まって涙ぐんでしまう私。泣くな、泣くな…!
深呼吸して仕切り直し、まずはなんとか伝えたかったことを一通り話すことができました。

レジュメも見ながらじっくりと話を聞いてくれるS教授。何かプログラムについて聞きたいことはある?とのことで、あらかじめ用意してきた質問を二、三投げかけます。が、答えてくれる教授の顔をまっすぐ見つめながら、私はどこか話半分で座っていました。

S教授のオーラ、壁一面の存在感ある蔵書、贈り物なのか民芸品やカードが本棚の所々に並べられてある様子、S教授の落ち着いた声。教授の話してくれていることを追おうとする一方で、私あのことちゃんと言えてたかな、てか面談で泣くってメンタル弱いって言ってるようなもんじゃん、いや、せっかく来てるんだから、他に何か言えることなんだろう…。

私:日本の英語教育も変わってきているのでその辺りもシェアできたらいいなと思ってます。
S教授:へぇ、どう変わって来ているの?
私:あ、えっと……………..。(冷や汗…!!!)

何か有益なこと言わなきゃととっさに口に出した一言が私を窮地に立たせました。いや、ざっくりの情報で詳細はよく知らないし、ポツポツと浮かんでくることを英語でなんていうかもわからない…。

かすれそうな声でなんとか一つの例を説明、というか文にすらなっていないそれこそカタコトの単語のつなぎ合わせで答えて話題は流れ、面接は終わりへ向かいます。最後に今後について、2週間程度で結果の通知がいくと言われ、約30分の面談は終了しました。

お礼を伝えオフィスを出て、来た廊下を戻りエレベーターを降り、ふらふらと歩いていると構内にコーヒー屋さんを見つけました。とにかく一旦座ろう。マフィンとコーヒーを買って、合皮のソファにどさっと腰を下ろすと、身体中からするすると力が抜けていくのがわかりました。


終わった…。

というか終わった。
私終わった。


貴重な時間もらっておいて、自分の気持ちだけで胸がいっぱいになって泣きそうになって。準備してきてない内容を自分から振っといて、日本について答えられないって。言語学、教育学のプロフェッショナル前にして何やってんだろう。大学院で学ぼうっていう奴が普通の会話さえままならないって何なんだろう。たとえ拙い英語力だったとしても本当に英語教育に関心があったらそんな当たり障りないことなんて言えないはずで。こんな大事な場面を迎えるにあたってまで、私はなんて最低なんだろう。

張り詰めていた緊張の糸が切れたと同時に、後悔と恥ずかしさと申し訳なさが一気に押し寄せてきて、気付くと人目もはばからず泣いていました。何を考えても涙が出て、マフィンを飲み込んでは泣き、涙を拭ってはマフィンを口に詰め込み。春休み明けの活気が漂うキャンパスで、私は反省という名のダメ出しを続けました。


終わった。これで本当に終わったわ。
そんな私に翌日S教授からメールが届きます。
⑤に続く


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