見出し画像

第十八回書き出し祭り 第一会場感想

書き出し祭りとは…

はい。というわけで感想です。だいぶ遅くなりました。思ったことをただ書いているだけです。

第一会場はこちらですね
https://ncode.syosetu.com/n3123ie/

1-01 Me et eam falsam accusationem fugae

途中からラッパが聞こえてくるような場面転換に華麗なる登場。これはコメディと言いつつ実はかっこいいアウトローたちの物語になるのでは?と思ったらちゃんとコメディでした。賞金首の理由がずらりと揃って、彼らの物語もこの先拡がるのだろうなと思います。艦内の様子を想像するとなかなか凄まじい光景ですね…。

1-02 絶対正義が異界を裁く

詩的な感じがするのは短文がメインだからでしょうか。ダークだ!異世界だ!と思ったらのどかな気分に浸る間もなかったシビアな世界すぎる。罪を裁く、という言葉をすんなり受け入れているわけではないようので、そのあたりの葛藤もこの先見られるのかもしれません。

1-03 ポンコツ魔女は終身雇用されたい ~婚約した領主の溺愛は呪いに阻まれる~

ゲームが出来そう。極貧以上の激貧領地を豊かにしよう!呪いを解こう!悪者成敗!なんてあらすじで思っていたら、冒頭から他人事とは思えないくだりに首が回りません。つらい。読み進めてもなんて世知辛い。レヴィンにはまだ何か隠していることがありそうですねえ。

1-04 転移、のち檻の中

これは新しい異世界転移。もふもふの柔らかな感触から一転、どん底へ叩き落すような異世界の正体に気分は落ち込むしかない。暗く冷たい用水路の中を歩いて心細さと不安が極まっている所へ、血の混じる恐怖が入り込み、そして、と気になる所で書き出し終了。ジル……大丈夫なんですかジル……

1-05 私の父は公衆の面前で脱糞して憤死しました。

とんでも神事を真面目に設定を詰めて語ると本当にありそうな気がしてくる……本当にDNAに刷り込まれていそう。とにかく文章が上手でするすると読めてしまい、別に自分が耐えているわけではないのに一緒に耐えている気分になった時に最後のあれ。トレーニングやその他、あまりにも事細かなので実践したことがあるのかなと思いました。書き出しというより掌編として終わっても面白い。

1-06 奇天烈卿のヴンダーカンマー

あーこれも面白い。ネーミングがどれもこれもかっこいい。収集された品々や奇天烈卿の姿を想像するだけで世界観が作られていくよう。色合いや匂いや音までも。強烈な個性が成せる技だなあ。最後に飛び出す奇天烈卿まで綺麗にまとまって、そしてあらすじにあるような面白道中に繋がるんだなあと、あらすじ含めてセットで面白くて続きが気になりました。

1-07 メイド、いりませんかっ?〜美人の同級生を助けたらメイド服で押しかけてきたんだが〜

アニメを見るように映像の浮かぶ文章でした。映像が流れる途中で「無料だから!」の台詞が妙に現実味を増して面白く、絢香ちゃんの性格の一端が少し見えたかな……と思ったら、妹の暴露でそれどころではなかったでした。更に女の子が登場するのなら、平穏無事な日常であるはずがないなあ。

1-08 ロッティンガプル

クロウの正義がそのままガレキたちを救う、という真っ直ぐな話にはならず、この先の困難が想像出来る一方、ガレキとのやり取りが軽妙で楽しかったです。二人の会話で難問が明らかになっていく様子を見たい。タイトルの意味がまだわからないので、これがどう本編に繋がっていくのか。単語の端々にSF味を感じてまだそういう要素が出て来るのかなとワクワクしています。

1-09 異世界追放された悪役令嬢と冒険する?

異世界転生をただの現象として流すのではなくて、そこから話を発生させていくのが面白いなあ。姓名についての説明があるのはここで二作目?異世界転生の知識があってチートではなく、そのアビリティをまるっと体ごとなくして本当の裸一貫ならず魂一貫からだ……アリアンテの古めかしい口調がきゅっと物語を締めてくれている感じがしました。続きが気になります。

1-10 メスガキ探偵と監獄女学院

なるほど!学校の名前が独特だなと思ったら!探偵ものと思って読み始めているので、どの発言も後の伏線になるのではと思ってしまう。自販機の売り切れは伏線ですか……(考えすぎ)。後半で話の雰囲気がれいなと一緒にガラッと変わってぶっ飛びました。タイトルに書いてあったね。彼女が探偵の罪悪に耐えられるまでの物語になるのかなあ。

1-11 ヴァイオレット・シュガーナイト 〜魔女と飼い人〜

リッタの気分になって割と最後まで落ち込んだ……光が見えん……。魔女には魔女の世界での規範があって、彼女たちには常識でもリッタには受け入れ難い。二ニーナの決して間違ってはいない素直さが二人に、あるいは人と魔女の世界にどう作用していくんだろう。象徴的にすみれ色と出て来るので、シュガーナイトというタイトルと共にすみれの砂糖漬けを思い浮かべました。

1-12 半年遅れのレシピブック

大切な人の喪失からの日々を淡々と積み上げていって、奥野さんの登場で静かに下降している日常に小さな波が立つ。そこで見つける妻のもう一つの「日々」に、もう繋がるはずのない手が伸びた気がして泣く。あとタクシーの運転手さんが優しい。奥野さん含め、こういうささやかな優しさが響きますね。ご飯のおかわりお願いします。

1-13 俺と彼女たちのハート争奪戦

タイトルがかわいらしくて油断していました。結構しっかり血生臭くて、この先の魔法によるバトルも面白そう。急転直下の展開にたっくんでなくとも叫び声を上げたくなります。ほむらの登場のインパクトが強すぎたので、ハル姉や伝承のさわりでも、もう少し見たかったかも。

1-14 解体一課の新人

東日本、西日本というと電圧だカツ丼だと余計なことを思い出したことはさて置き……ムラサキの境遇や日本を襲う災害など、どこまでも暗くなれる所をムラサキのやんわりとしたキャラクターが緩めてくれるのですが、それが一方で不気味にも見え、そこにこの話の怖さと面白さがあるのかなと思いました。”ひとでなし”の正体の片鱗をもう少し見たかったです。

1-15 じゃじゃ馬辺境伯夫人の幸せな日々

こういう話は何系と言うのでしょうか……?わからないけれど、ともかくも馬!そして軍馬となれば今のほのぼのとした光景から殺伐とした風景まで幅広く話が展開していくのだろうかと想像が膨らみます。国の状況からイレーネの背景まで綺麗に話へ組み込んでいくので、すっと情報が入りやすかったです。

1-16 魔法少女は34歳

かっこいい。キラキラした魔法少女ワードに反してひどく事務的な魔法の発動と玲奈の姿がミスマッチにならない。セイレーンをリアルに描いているからでしょうか、魔法の発現はファンシーですがそれによる攻撃がミサイル打ち込んでいるような重量感がある。ハードボイルドSF魔法少女ものが始まるのかと期待してしまいます。面白い感覚でした。

1-17 中性人間れいちゃん君

タイトルやあらすじから滲むユーモア感とドクターの語りから始まる本文の温度差がいいですねえ。不気味さが増す。れいの日常を幼少から追っていくのですが、鮮やかできらきらとしていた日々がぼんやりと色も温度も失っていくようで、どういう方向に進むのかが読めず面白かったです。そして冒頭一文目が読めなくて検索しました。魂消ましたな。覚えたぞ。

1-18 壊滅的な開発者ニーニャ

レトルトとあったので勝手にSFかな?と思っていたらめくるめく魔法の世界でした。しかもニーニャさんかなり優秀とお見受けします。ここから壊滅的と言われる開発者の成り上がりが始まる気配がしつつも、青筋立てたメディアンが走って片づけていくんだろうなと思うと微笑ましかったです。

1-19 アウトロは雨催いの残照の中で

雨模様の中に見える夕陽がこの世界を焦がしていくようです。何ものにもなっていない翔平の、彼一人だけとなった部屋の、文字の増えない画面の。あの湿った空気と燃えるような色合いに急かされるような感覚。その中で出会った少女と翔平どうなるんですかね……得体が知れなさ過ぎて女の子怖い。

1-20 桜子お嬢様は政略結婚相手に俺をご指名です

美しく成長した従妹に自分も思わず昔の面影を探してしまう。彼女が登場するまでは襖の向こうで泣きじゃくる小さな女の子だったものが、登場と共にガラッと作品の色合いが変わるんですよね。そして庄吾の秘密も明かされてまた変わる。桜子には明かしていない秘密がありそうで、更に雰囲気が変わっていくのかな。

1-21 不死の少女はただ終焉を希う

これはタイトル通りに進んでしまうのでしょうか。ティオの明るい様子に反してウォーレンとリタの背負うものの重さが際立ちます。ティオの手を取ってほしいけれど一筋縄ではいかなそうですね。鐘の音が鳴るシーンが印象的でした。もうちょっとじっくり風景や人物の動きが見たかったです。

1-22 魔王討伐村『こっそり』運営記~大賢者シドの三百年~

ケイナの押しが強い。その強さなら生活における主導権を握れると思いますし、かつての勇者に面影が似ているという部分で何かしらのエピソードが出てきそう。シドの世捨て人ぶりが、ハイエルフのキラキラした感じとは対照的で面白かったです。魔王討伐における嘘を明らかにする部分をもう少しじっくり読んでみたかったけれど、村運営ファンタジーになるのでしょうか。あとクローネのことももう少し知りたかったです。

1-23 呪われた天使に口付けを~幼馴染を助けるために運命の番(つがい)を探します~

フィルの描写を読むたびにかわいくていいですね。馬ならではの部分で感情を豊かに表現してくれる。対照的な性格のアリーヤとのコンビもまたかわいらしく、更にアリーヤが使う魔法の仕草がこれもまたかわいい。まさにかわいいの詰め合わせ。あらすじと合わせて運命の番ってもう……とにこにこしながら続きを待ちたくなりました。

1-24 治癒魔術事始

信仰が弱いと治癒の行き届かなかった治癒魔術のこれまでの進歩。これを読んでいると、医療における歴史を魔術のある世界に置き換えて見ているようで面白かったです。人体に流れている魔力は抗体かなあ、など大して知識がなくてもちょっと見当をつけてみるのも楽しい。カーデルの行った外科的治癒魔術とでも言ったらいいのでしょうか、これがこの世界にどう影響を及ぼすのか、それに信仰が関わって来るのか、カーデルの下剋上も合わせて楽しみです。

1-25 妹の婚約者を盗りました。なぜならその男は結婚詐欺師だからです。

婚約破棄ものー!と思ったら破棄をした側の、それも復讐のための、そしてタイムリープ!てんこ盛りですがとても読みやすくリリスの気持ちがすっと入り込んでくるのでライネルが出てくると鳥肌立ちますね。すみません。復讐に凝り固まってしまうのだろうか、と思いましたがカイルの優しさで少しは光が見えたかな……?でもここから落とすのかな?とハラハラです。


以上、第一会場感想です。ありがとうございました!

投票はこちら
一位 奇天烈卿のヴンダーカンマー
二位 半年遅れのレシピブック
三位 転移、のち檻の中

脱糞小説も悩みましたが、とても綺麗にまとまりすぎて「書き出し」かな?と思ったので。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?