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アイヌ神謡集と日本の原風景

本記事は NHKE 100分de名著 「アイヌ神謡集」知里幸恵 ちり ゆきえ 第2回 (初回放送日 2022年 9月12日) の内容がとても充実していたことを受けて、放送内容の概要と各々の点に関する感想や考えられることを記載する。

(※)本記事でのアイヌ語表記は主にローマ字表記(*1)とし、カタカナ表記は補助的なものとする。

アイヌ神謡集とは

「アイヌ神謡集」とは 知里幸恵 ちり ゆきえkamuyyukarカムイユカラ(= 神謡しんよう) をローマ字と日本語訳で記載した作品
1923年(大正12年) 郷土研究社

青空文庫で全文閲覧可能(👇)
書籍データ(メタデータ)
✔ 本文

「アイヌ神謡集」には 13本の 神謡しんようが収録されている。以下に、収録されている神謡しんようの一覧(アイヌ語・日本語訳)を示す。

(※)初期表示では文字が小さくて見にくいと思われるので、下の画像をクリックして画像拡大してご覧ください。

「アイヌ神謡集」 目次(アイヌ語)
「アイヌ神謡集」目次(日本語)


神謡の仕組み

ここでは、主に100分de名著で解説された内容にしたがって、kamuyyukarカムイユカラ(= 神謡しんよう)が音声的にどのような構成・仕組みであるかを記す。

神謡における音節のルール

アイヌの韻文いんぶんは基本的に1句が4音節ないし5音節となっている。

04. うさぎが自ら歌った謡 Sampaya terkeサンパヤ テレケの冒頭
Tu pinnai kama ● re pinnai kama ● terkeas kane ●
sinotas kor ● yupinekur osi ● ekimun payeas.
(※)● が 2字空け

tu pin nai ka ma ➔ (5音節) 2つの谷、
re pin nai ka ma ➔ (5音節) 3つの谷を
ter ke as ka ne  ➔ (5音節) 飛び越え飛び越え
si no tas kor   ➔ (4音節) 遊びながら

サケヘ

サケヘ(アイヌ語 sakeheサケヘ)とはリフレインの句のことで、神謡しんよう本文の内容と直結せずに規則的に繰り返されるフレーズ(句)を指す。

サケヘの間に物語の本文を挟んで語りが進行するのが神謡しんようの一番大きな特徴と言われる。

言葉の意味は分からないものが非常に多い。
(※)神謡しんようタイトル末尾のカタカナ部分に相当

サケヘの役割
✔ 主人公が何者かを示す場合がある。
✔ 今、誰が語っているかを示す場合がある。

主人公を示す例
  han cikiki ハン チキキ ➔ スズメ
  han cipiyak ハン チピーヤク ➔ オオジシギ
  han kakkok ハン カッコク ➔ カッコウ 
  hum pakpak フン パクパク ➔ 雷(雷鳴) 
  ape mermer … アペ メルメル … ➔ 火 

今、誰が語っているかを示す例
  hotenao ホテナオ  ➔ 小狼のsakeheサケヘ 
  pii tuntun ピートゥントゥン ➔ 小男のsakeheサケヘ 


フォーミュラ(formula)

口承文芸における常套句、定形表現・定型句をさす用語。

フォーミュラの例
kor wenpuri enantuyka eparsere
コロ ウェンプリ エナントゥイカ エパラセレ
持っている悪い性格が、顔の上に、燃え上がった
(※)3句 4音 4音 4音 になっている

[kor ~を持つ]
[wen-puri 悪い・性格]
[e-nantuyka 接頭~に・顔面]
[e-parse-re 接頭~のことで・燃え上がる・ 接尾~させる]

asurpe utur ta (rokas kane) okayas.
アスルペ ウトゥッタ (ロカシ カネ) オカヤシ
耳と耳の間に私は居ました
(= 魂が肉体から抜け出て、自分の頭の上に座っている)
➔ 私は死んでいる (という状況を伝える)

番組「100分de名著」概要

NHK Eテレで毎週月曜日 22:25 から放送されている番組 
1回分の放送時間は 25分
通期 MC  伊集院光 安部みちこ

2022年 09月 「アイヌ神謡集」(#01~#04) 出演者
指南役(解説) 中川裕なかがわ ひろし (言語学者・千葉大学名誉教授)
語り(ナレーション) 宇梶剛士うかじ たかし
朗読 木原仁美きはら ひとみ (※)神謡しんようの日本語訳の朗読

以降、発言・ナレーション・朗読を引用する場合の話者を以下のマークで表記する。
[伊] 伊集院光
[安] 安部みちこ
[中] 中川裕
[宇] 宇梶剛士

以下、発言引用は全文ではなく抜粋です。

第1回の内容

第1回放送のテーマは「アイヌの世界観」 

(導入部分)
知里幸恵 ちり ゆきえ(1903-1922)
  1903(明治36) 北海道幌別ほろべつ郡(現・登別のぼりべつ市)に生まれる
  1909(明治42) 旭川に移り 伯母・金成マツと
    祖母モナシノウクと暮らす
  1918(大正07) 言語学者 金田一きんだいち 京助きょうすけと出会う 

[中] アイヌの伝統的な考え方ではすべてものに魂がある。そのうち、人間と同じような精神をもったものがkamuyカムイと考える。kamuyカムイは日本語の「神」とも「自然」ともちょっと違う。じゃあ、「環境」と言うしかないんじゃないかと思う。

[中] kamuyカムイinaw イナウをもらうと kamuyカムイの世界での格が上がるらしい。

以下、3本の神謡しんようが日本語で朗読された。
07.梟の神が自ら歌った謡 「コンクワ」
13.沼貝が自ら歌った謡 「トヌペカ ランラン」
03.狐が自ら歌った謡 「ハイクンテレケ ハイコシテムトリ」

上記 07.の解説時の参考として、NHKが昭和21年に録音したcarankeチャランケ のレコード音声が再生された。

第2回の内容

第2回放送のテーマは「語られる物語としての神謡しんよう」 

放送内容の流れ

(導入部分)
[中] 残念ながら知里幸恵 ちり ゆきえ自身の録音は残っていないのでどのようなメロディーが付いていたのか分からない。しかし、他の地域に「アイヌ神謡しんよう集」と似た物語の録音が残っている。

[伊] 喋っている側からすると、文字にされたら削ぎ落とされることがいっぱいあって… 

06.小狼の神が自ら歌った謡 Hotenaoホテナオの紹介
類似の「ホテンナオ」という神謡の録音が白老地域に残されている。これを元に再現された(紙人形劇)動画が放送された。   語り ニヌム (荒田このみ) 

[宇] 「ホテンナオ」のように繰り返される言葉を サケヘ といいます。

[安] みんな同じ言葉で謡えるんですか? 
[中] 同じ人が2回やっても表現は変わってくる。
別の人が同じ話をやっても別のものになりますが、それは同じ話なんだとみんな認識しているわけです。

[伊] 僕が習ってきた(かじった)落語に似てますね。
[中] 非常に共通するところはありますね。ストーリーは決まっているが、表現は即興的に繰り出されていく。ただ、即興と言ってもまるっきりゼロから表現を作っていくわけではなくって、決まり文句(= フォーミュラ) というものを使ってひとつの話を再現していく。(フォーミュラの解説) 

[中] 昔のおばあさん方は「聞いたことをそのまま語っている」と言うんだけど、実際にはかなり違う表現もある。でも
ストーリーが同じであれば全く同じものだという認識になる。

神謡しんようにおける音節おんせつのルールの解説

[中]フォーミュラを覚えておけば自動的に音節おんせつそろったきれいなフレーズができる。

アイヌ民族文化財団のホームページ
oruspe オルシペ suwop スウォプ(= 話・箱)
同サイトに公開されている動画を紹介
『ハツカネズミが酒をつくった』
  (※)歌い出し ハンキリキリー ハンキリー … 

『オキクルミの妹』
  (※)歌い出し ホレホーレ チェプ…

[伊] うちのおじいちゃんに桃太郎を話してもらうと、桃が流れてくるさまを「ドンブラコッコ、スッコッコ」って言うんだよね。あの楽しさを思い出しました。

サケヘ の解説

06. 小狼こおおかみの神が自ら歌ったうた  Hotenaoホテナオ
日本語朗読 木原仁美
歌い出し 
  ホテナオ ある日に退屈なので 浜辺へ出て、遊んでいたら

アイヌ語朗読 中本なかもとムツ
CD 『「アイヌ神謡集」をうたう』より
歌い出し
  hotenao sineantota ホテナオ シネアントタ
  hotenao nismuas kusu ホテナオ ニシムアシ クス
  hotenao … ホテナオ …

[中] (サケヘ の意味は) 最初から隠されているのかもしれない。あるいは、kamuyカムイ の言葉だから人間には分からないということかもしれない。

[安] あと、あの、思い浮かぶのが、ヤーレンソーラン (*2) みたいな、何かちょっと似てる感じがします。

[中] 囃子詞はやしことばのようなものと言っていいのですが、本文の内容と直結せずに規則的に繰り返すのがサケヘなんです。

二次的なサケヘ (本文の内容と連動するサケヘ) の解説

02. きつねが自ら歌ったうた  Towa towa toトワトワト
日本語朗読 木原仁美
歌い出し 
  トワトワト ある日に海辺へ食べ物を拾いに出かけました。

アイヌ語朗読 中本なかもとムツ
CD 『「アイヌ神謡集」をうたう』より
歌い出し
  sineanto ta, towa towa to
  armoisam un, towa towa to
  nunipeas kusu, towa towa to
  sapas, towa towa to
  sumatum chaschas, towa towa to
  nitum chaschas, towa towa to

[中] (上記の最終2行の先頭部分の)
sumatumスマ トゥム chaschasチャシ チャシ, nitumニ トゥム chaschasチャシ チャシ は、走っていく場面にだけ使われる。フォーミュラと異なり、上記表現はこの話にしか出てこない。

[安] (上記の) chaschasチャシ チャシの部分を知里幸恵 ちり ゆきえの訳は「ちゃらちゃら」となっていますね。

[中]「ちゃらちゃら」ってなんだかよく分かんないでしょ。それは知里幸恵 ちり ゆきえが正しく訳しているんですね。" chasチャシ"を辞書で引くと「走る」と出てくるけど、知里幸恵 ちり ゆきえの出身地の幌別ほろべつ地方の言葉ではない。

[中] (この部分は)文法的にはちょっと普通じゃない言い方なんですよね。だから意味もよくわかんない。このようなものを二次的なサケヘと呼んでみているわけです。

[伊] きゃりーぱみゅぱみゅの「つけまつけま…」って、付けまつ毛を付けます、楽しく付けます、しょっちゅう付けてます、ということとかをギュッとして言っている気がするんですね。そういう遊び感というかリズム感みたいのを出すときに「を」を入れないと文法的におかしいから入れましょうって言われると、とたんに楽しくなくなっちゃうっていうか。

[中] 「銀のしずくるまわりに」って言葉は何なんだろうと考える時に、二次的なサケヘが重要になってくるんですね。
(終わり)

特筆すべき点

筆者(LangDicLab)が特に注目する点を以下に記す。
✔ 中本なかもとムツさんの朗読音声がNHKの電波に乗って全国に放送された(= ネィティブ話者のアイヌ語音声は貴重) 

✔ 中川裕なかがわ ひろしさんの解説がとても良い
  ➔ 具体的なアイヌ語の例を示しての説明がとても良い

また、番組の本筋とは直接関係ないが、cipiyakチピヤク(= オオジシギ)の鳴き声急降下の映像と音声が放送されたことは、とても良かったと考える。

アイヌ文化ではいろいろな鳥が重視されるが、cipiyakチピヤクもそのひとつだと思われる。

第3回の内容

第3回放送のテーマは「銀のしずくるまわりに」 

放送内容の流れ

「銀のしずくるまわりに」 日本語訳朗読 (1/4)
(※)以降、単に 「日本語訳朗読」と記す。

(表現の解説)
cisantekehe citurpa wa nean ponai ciesikari
チサンテケヘ チトゥルパ ワ ネアン ポナイ チエシカリ
私は手を差し伸べてその小さい矢を取りました。

[中] ここの「手」は魂の手であり、「心臓に当たって死んだ」という意味なんですね。

ciseチセ(アイヌの伝統的な家)の説明 イラスト : いとうみちろう
第一の窓(神窓) の説明

[中] 神窓 は kamuyカムイにとっての玄関、人間が出入りする玄関とは反対側にある。神窓 の先(真正面に)に nusasanヌササン (= 祭壇)があり、kamuyカムイにいろいろな捧げ物・贈り物を送る場所なんです。

日本語訳朗読 (2/4)
[中] 礼拝することをアイヌ語で onkamiオンカミと言う。(男性のあいさつの作法説明)

フォーミュラ 「耳と耳の間に坐っていました」 の説明 (図示)
[中]  魂は人間の姿なので、鳥の姿と人間の姿の二重写しのような感じ。

日本語訳朗読 (3/4)
宝物の積場の説明(図示)
  sintokoシントコ(行器ほかい) patciパッチ(鉢)など漆器類や着物などが飾られる

[中] この部分(= 宝物の描写)はアイヌの物語として一般的ではない。類話で授かるものは、猟運(狩りの運)や雄弁(弁論の能力)だったりする。その時代に猟運や雄弁を授けるということがすでに分かりにくくなっていたかもしれない。

[中] nispaニシパ (= 立派な人) が「お金持ち」と訳してあるのが若干違和感があるんですが、これも分かりやすくするというのがあったのかもしれない。

日本語訳朗読 (4/4)

サケヘの解説
sirokanipeシロカニペ ranranランラン piskanピシカン 銀の滴降る降るまわりに
konkanipeコンカニペ ranranランラン piskanピシカン 金の滴降る降るまわりに

[中] (上記)冒頭 2行 は いわゆるサケヘではなく二次的なサケヘのように思える。そうだとしたら、本来のサケヘは何? という疑問が出てきて次の謎になる。

類話に示された別のサケヘ
二谷にたに国松くにまつ 『神謡55 班文鳥の神の自叙』 (沙流地方の伝承)

サケヘ (sk) : apiskatu apiska アピシカトゥ アピシカ
次のように朗読される(中川氏の朗読 節付き)
sk シロカニペ ランラン ➔ 銀のしずくたらたらり
sk コンカニペ ランラン ➔ 黄金のしずくたらたらり
sk セコン ネシ ➔ と
sk レカシ キ コロ ➔ さえずりながら

[中] ただ、(知里幸恵 ちり ゆきえの)「銀の滴」にこのサケヘ(= apiskatu apiska) を付けると piskanピシカン がはみ出してしまって、リズム的に変な格好になってしまう。 どう考えれば良いか?と思っていた時に、『「アイヌ神謡集」をうたう』 CDが作られたんですね。

CD 『「アイヌ神謡集」をうたう』
制作 : 片山かたやま龍峯たつみね (映像作家)
うた : 中本なかもとムツ (千歳地方のアイヌ文化の伝承者)

[中] この二人がアイヌ神謡集13話全部にメロディーをつけて歌ってみるという斬新なことをやったんですね。この中本さんが歌ったのを聴いて、あー、これだわと思ったわけ。

同CD音源の再生
sirokanipe ranran piskan シロカニペ ランラン ピシカン
konkanipe ranran piskan コンカニペ ランラン ピシカン
arian rekpo piskan アリアン レクポ ピシカン
ciki kane piskan チキ カネ ピシカン

[伊] piskanピシカンがサケヘだった。 (= 謎が解けた)

[中] (実は、)ちゃんと最初っからサケヘは書いてある。piskanピシカン は 「まわり」 という意味。「まわり」だけでは印象的ではないので、「銀のしずくるまわりに」として表題にしたという推測ですね。

『アイヌ神謡集』のための直筆ノート 説明(図示)
草稿では次のようになっている。
  あたりに 降るふる 銀の水 
  あたりに 降る降る 金の水 ・ ・

[中] 「銀のしずく」という言葉を生み出した彼女(= 知里幸恵 ちり ゆきえ) は最初に「書かれたアイヌ文学」を作った人だと思う。

(終わり)

特筆すべき点

筆者(LangDicLab)が特に注目する点を以下に記す。
✔ 類例として 二谷にたに国松くにまつさんの神謡が紹介された
  ➔ 類例・類話でサケヘが異なる場合がある

片山かたやま龍峯たつみねさんと中本なかもとムツさんの作品 CD 『「アイヌ神謡集」をうたう』 が紹介された
  ➔ 「銀のしずくるまわりに」のサケヘ  解読のキーとなる取り組み(仕事)である。この作品がなければ、どのように伝承(朗読)されていたかがずっと謎であった可能性があり、たいへん貴重な仕事であった。

第4回の内容

第4回放送のテーマは「知里幸恵のおもい」 

「アイヌ神謡集」 序文の朗読

アイヌと和人に関する年表を提示して説明

fig03 アイヌと和人に関する年表


[中]
 実を言うと、アイヌの同化を一番妨げたいたのは金田一きんだいち 京助きょうすけなので。

知里幸恵日記(大正11年7月12日)の紹介 
「私はアイヌだ。」...
「口先でばかりシサムになったって何になる。」

アイヌ民族の権利回復の動き紹介
1994年 萱野茂がアイヌ初の国会議員に当選
2019年 アイヌ新法制定 

現代のアイヌ文化発信者紹介 
  ✔ しとちゃんねる 関根麻耶さん
  ✔ OKI (ミュージシャン) 
  ✔ マレウレウ (女性ボーカルグループ)
「KANE REN REN」(アニメーション)紹介

[中] 自分と違う人間がいて当たり前、… 日本は歴史上、単一民族であったことは一度もない。そのことを認識することがまず出発点。

まとめ・所感

100分de名著 「アイヌ神謡集」(全4回)を通して感じたのは改めて「言語とは音である」ということである。その意味では、第2回と第3回で放送された(ネィティブスピーカーによる)アイヌ語の朗読音声はとても貴重な機会であった。

アイヌの口承文芸とされるkamuyyukarカムイユカラ(= 神謡)は独特の節(メロディー)を持っている。

奄美群島や琉球・八重山にも独特の節(メロディー)を持っている歌が多く残る。それらは、楽器が無くても声だけで歌い継がれている。(※)おそらく、部分的には2000年以上続いてる節・歌い方もあるだろう。

では、日本人が心に響く古くから伝わる日本語の節(メロディー)はあるのかと考えた場合、たとえば、最古の歌集とされる万葉集に節(メロディー)があるかと問われれば、多くの人が「分からない」と答えるのでは?

和歌にがなかったのではなく、もともとあった節が忘れ去られたと考えるのが妥当だろう。

文字に記載したことにより、口伝えの重要性が薄れて、結果的に節(メロディー)が残らなかったのでは?
(※)節がない文章を読むと、しだいにお経を読むようなトーンになってくる。

いわゆる和人(倭人)と古い時期から隣接していたアイヌ・奄美・琉球の歌は、縄文時代に日本列島の各地にあったであろう様々な歌と何らかの共通部分を持っていたはずである。

アイヌ・奄美・琉球・八重山の口承文芸を研究することは、
✔ 古代日本の歌の歌い方・節(メロディー)
✔ 古代日本語の発音
を解明する上で、とても重要と思える。

kamuyyukarカムイユカラの響きは古い日本の情景を想起させるように思う。それは、農耕以前の縄文時代から脈々と続く言葉の響きなのではないか。だとしたら、日本語の成り立ち・由来におおいに関係あると考えられる。

アイヌ語には縄文時代の日本列島で話された言葉(縄文語)の発音が多く保たれていると思われる。それゆえに日本人や日本語を研究する人にとってもアイヌ語の録音記録と研究がとても重要である。

放送後の反響

Twitterでツイートされた一般ツイートからワードクラウド風画像を作りました。放送の反響をかなり拾えていると思う。

収録単語フレーズ 193件
有効ツイート頻度4回以上で最大フォント
(※)有効ツイートは主観で抽出しています。

fig04 ワードクラウド風画像

脚注(Footnote)

*1  「アイヌ神謡集」原文のローマ字表記はいわゆるヘボン式表記に近いものである。本記事では必要に応じて『アコㇿ イタㇰ』方式 (北海道ウタリ協会編 (1994))に変更して表記する。(そのほうが、視認性が良いため)

*2
 ヤーレンソーラン はソーラン節のリフレイン。
  ニシン漁の労働歌とされるが、アイヌ語で解釈可能な語である。
  ya ren, so ran [網・沈む, 滝が落ちる]

改訂(Revisions)

2022 1007 第4回の内容にアイヌと和人に関する年表を追記 
2022 1001 放送後の反響(ワードクラウド風画像)を追記 
2022 0927 第4回の内容を反映 まとめ・所感を更新 
2022 0920 draft 改訂 第3回の内容を追記 
2022 0915 draft 改訂 目次画像追加 ルビ表記などを整理した
2022 0914 draft 初版


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