見出し画像

介護サービス事業所・施設のキャリアパスについて

 前回、介護サービス・施設におけるキャリアパスが明文化されていることをお話し、介護業界で働く方は確認をお勧めしました。就職活動での応募先選定の条件ともなると思います。

ところでキャリアパス(ルート)とは、事業所においては「目指す職位・職責、職務等に就くための経験の積み方、能力を高めていく順序などをステップとしてあらかじめ示してある」ものです。昇進や昇格、あるいは専門職として能力を高めていくためのルートや方法を示したものです。

 キャリアパスは、事業主にとっても従業員の確保・定着のために大切な仕組みです。事業主の経営理念や提供するサービスや規模に基づいて作られたもので、働く人が自分の将来像を描き、職場での目標設定につなげることができるものです。事業主も、OJTなど研修体系や人事・評価体系を整備しておくことも必要です。そこで働く人、自らが主体的に学習すべきことも見えてくるわけです。キャリアパスは、従業員一人ひとりの自己実現が可能となる道筋を示すことにもなります。これらは事業主と従業員の間で合意された将来像と目標ともいえます。

 介護サービス事業所・施設にはもう一つ、キャリアパスが導入されている背景があると感じています。それは厚生労働省の施策「介護職員処遇改善加算」とも関連しているからです。

 厚生労働省では、介護現場で働く介護職員の方の処遇改善を図る努力を続けていますが、そのひとつに「介護職員処遇改善加算」を用意しています。

 介護サービス事業所・施設を、区分に分け、その区分ごとに設定した要件を満たしている場合、そこで働く職員の方の賃金改善を行う加算を行っているのです。そして加算を取得した事業所は、加算相当額の賃金改善を行うことができるわけで、そうしなければならないのです。
その区分には2つの要件、「キャリアパス要件Ⅰ,Ⅱ、Ⅲ」と「職場環境等改善要件」があります。つまり国の支援「介護職員処遇改善加算」を受けるためにはキャリアパスを明らかにしなければならないのです。

「キャリアパス要件」のⅠは、職位・職責・職内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること。
Ⅱは、資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること。
Ⅲは、経験もしくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期的に昇給を判定する仕組みを設けること。 です。

 特に、キャリアパス要件Ⅲによる昇給の具体例として、以下の3例をあげています。

〇「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組み。
〇「介護福祉士」や「実務者研修修了者」などの取得に応じて昇給する仕組み。
〇「実技試験」や「人事評価」等の結果に基づき昇給する仕組み

 まさに「介護福祉士実務者研修」の受講と修了、そして「介護福祉士」資格取得は給料アップにつながってくるのです。


<参考>
キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱ、Ⅲを満たす内容によって加算Ⅰ~Ⅴの5つに区分され介護職員1人当たり下記の加算があります。介護サービス事業所・施設が
加算Ⅰ、月額37,000円相当。キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと職場環境等要件のすべて。
加算Ⅱ、月額27,000円相当。キャリアパス要件Ⅰ、Ⅱ、と職場環境等要件の三つ。
加算Ⅲ、月額15,000円相当。キャリアパス要件ⅠorⅡと職場環境等要件の二つ。
(※なお加算Ⅳ・Ⅴについては令和3年3月末時点で1年の経過措置を設けたうえで、令和2年度で廃止となっています。
加算Ⅳ、月額13,500円相当。キャリアパス要件ⅠorⅡor職場環境等要件のいずれか
加算Ⅴ、月額12,000円相当。キャリアパス要件も職場環境等要件も満たさない。)

・・・04/05/10・・・