石モザイクと人と世界
これは、今回の展覧会で壁面に掛けられているモザイク達。
全て、碧さんが、石を購入し、時には拾い、大きなスティック状のものを割り、更に細かく割り、時にそれを一つ一つ面取りし、など、途方のない工程を経て、一つ一つの小さな欠片を選んでピンセットで置いていき、目地も入れられている。
あるものは、このように、漆喰の上に置かれ、
あるものは、このように、モルタルの上に置かれ、
同じモルタルの上でも、このように進化を遂げていき、
こちらが、この手法の最新から2番目の作品。
(本当は、↑が一番大きい。)
白が二重になっている上の層になっているようだが、近づくとこんな感じ。
こちらが最新作の『NOSTALGIA』
この下に並ぶこれらは、ギリシャの伝統的な技法で間接技法と呼ばれ、水につけると剥がれる特殊な糊が塗られた布の上に、布に置かれた面が平らになるよう、一つ一つ面取りをした石を、置いていって、置いてる時に見ている面には、漆喰を流し込むので、置き終わった後、漆喰を流し込んだら永遠にそれまで見ていた面は見ることができず、漆喰が硬まった後、面裏をひっくり返し、これまでその面を覆っていた布を剥がすと出て来た面が表になる。ちょうど版画のように反転する。そんな、本来教会の壁など建物の一部になったり、舗道の一部になるからこそ凹凸が許されない、そんな技法を応用した作品達は、碧さんの中で、こんな風に変化していった。
表現したいもののの為に、石を割って、割って、形を揃えて、面取りして…の世界、ミニマムな色彩の世界から、だんだん割った沢山の石の欠片の中から、割れた石そのものの形を選んで、調和するように、色で遊びながら作ろうと、このような形もできた。地衣類をイメージしているとのこと。
今回、お客様が来られた時に、特に、地衣類の3作の美しさから、「これは天然石(例えば真ん中のものは翡翠?というような期待とともに。)が使われているのですか?」という質問があったのに対して、「砂利です。」と、答える碧さん。
一瞬「えっっ?!」、と、なりましたが、造園資材の砂利の中からそれぞれの色の石を選び出し、さらにどの形とどの形、どの色とどの色を隣り合わせたら美しいかを考えながら置いていってできた美しい世界。
しかも、石の来し方は様々。色々な国だったりする。
この、天然石と砂利のやり取りを聞いた時、自分がかつて、私と娘達が「プカビー」と略して呼んでいた近所の「プカプカビーム」と言う名の今は亡きファンシーショップの名店で300円で売っていた紫の大き目のラインストーンでできたクロス(十字架)の指輪をしていたら、過去にお金持ち系の二人に「素敵なアメジストの指輪ね。」と言われたので、その度「え?近所のプカプカビームで300円で買いました。」と答えたら、二人が二人とも「それ、絶対他の人には言っちゃダメよ。」と言われたのですが、そこが「天然石」かと聞かれて「砂利」と答える碧さんと、同じ価値観だなぁと。
自分が身に付けているものの場合、アメジストを身に付けているのに300円に見られるよりは、その逆の方がよっぽどいいと思いませんか?
そして、作品の素材という意味では、私も過去に、ある大きなお寺の修復、新装を終えた後の落慶法要に行った際、できたばかりの、ある著名な画家の方が障壁画にふんだんにラピスラズリを使って群青、プラチナ箔を使って星々を表していたのを見たことあるのですが、食傷気味になったというか、想像の世界に遊べないというか、関西弁でいうところの「そのまんまやないかい!」な気分になったことがあって。
砂利から美しい部分を注意深く抽出して、美を創り出す方が、よっぽど意味のある仕事だと思いました。
さて、ちょっと価値観の方向に話が向かいましたが、
この、特に地衣類。私が理想としている世界を表しているような気がします。
色々な色の、色々な形の、色々なところから来た石があって、美しい世界を構築している。
今回も(いつも)、展示作品については、点数など何も考えずに持って来て、出してみて作品の行きたいところに配置したらピッタリな「人間の意図の入らない自然任せ」なのですが、
この、作品の中での石の配置も、多分、あまり考え過ぎず、サクサク並んでいるのだとも思いますが、もし、ここではアーティスト、碧さんがやっている、配置するコンダクター的なリーダーが必要なのだとすると、その人がすべきことは、「それぞれの石を、そのままに、それ以上矯正することなく、美しく配置すること」だけなんじゃないかと。
なんや、「適材適所」に置く能力やん。と、今。
正直、試験に合格した人ばかりを集める、っていうのも、実はつまらないような…。さっきのラピスラズリとプラチナ的な・・。
ああ、玉石混淆な素材を適材適所に置いて美しい世界を作るのがリーダーの役目ってことか。
石にまつわる諺って、沢山ありますね。
そもそも何が玉で何が石かはその時々の価値観でも変わるから表裏一体。
どちらに転んでも、輝く居場所があるから安心できる世界に。
さて、今日単独では紹介しなかった作品の紹介は次回に。
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