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blowin in the wind (詩)

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ただひたすら、かんじるままに
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記事一覧

寒水腐らず~大寒の時~【詩】

来る年を迎えひと息つけば 冬も終焉(おわり)を告げんとする頃
山に囲まれた盆地の都は 一年で最も寒い 大寒

吹きすさぶ寒風が頬を突き刺し 大地と水面を固く閉ざすも
白い霧の向こうに微かに射す 陽光に春の希望を見い出す

底冷えに身も心も凍てつく 暖かな春に包まれるために
避けて通れぬ厳しさに耐えよと 言うは易く行うは難し

されど 寒中に汲む水腐らず 寒冷が自然のいのちを引締め
豊かな味わい深さ
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凍える大地~小寒の時~【詩】

艱難辛苦の往く年見送り 想いも新たに春を迎える
日の射す時間はやや長くなり 季節は緩やかに移ろいゆく

されど冷気はぴんと張り詰め 凍てつく寒さが骨身に沁みて
止め処なく降る白地を踏みしめ 真冬本番「寒の入り」を知る

人生は短いようで長い 地を這いつくばる逆境の日々
吹き荒れる寒風にさらされ 果てしなく続く先に底を見る

かかる寒中にありてこそ 心身鍛練の限りを尽くせば
迷い苦しみはやがて消え去
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夜明け前の~冬至の時~【詩】

暗雲立ち込める灰色の空から 音ひとつ立てず激しく降れば
凍てつく水面に白化粧の木々 孤独な冬至の深き夜の長さ

されど明けない夜はかつてなく 目覚めた朝には眩しく光る
澄みわたる空と白銀の世界 一陽来福 好転の兆し

仕事納めの師走の暮れに 往く年を想い起こし振り返る
欲望 過ち 悔恨 失意 他人を責めては己れを責める

苦悩の日々もこの日が節目 日はまた昇り 日は長くなる
ゆっくりとしかし確かな
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冬来たりなば~大雪の時~【詩】

漂う朝靄に独り佇む 見上げた曇り空は重く澱み
頬を刺す北風に枯れ葉が舞い 凍てつく大地に真っ白な吐息

静まり返ったその光景は 生きとし生けるもの動きを止め
地中深くに冬籠もりする いよいよ大雪(たいせつ) 冬将軍の到来

見通せぬ視界は灰色に染まり 向かい風に折れんばかりの心
なすことのすべてが裏目に出て ひたすら耐え忍ぶばかりの日々も

「冬来たりなば春遠からじ」 身を屈(かが)めつつもその先
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散りゆく運命(さだめ)~小雪の時~【詩】

暖かな小春日和も過ぎて 降るものは少しずつ白くなり
役割を終えた街路樹の葉が 木枯らしに吹き落される小雪(しょうせつ)

街角は往く人影もまばらで 交わす言葉もなくただ行き交うのみ
いつもと変わらぬ今日を確かめ 地下鉄へと滑り込み帰路辿る

「萌え出れば やがて色づき 舞い落ちる」 いのちの芽生え響き見え始め
鮮やかさを備え魅了しても 散りゆく運命(さだめ)のはかなさを知る

努力が実を結び奇才は
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ひと風ごとに~立冬の時~【詩】

山河を彩る紅葉も 役割を終えて舞い落ちる頃
「秋の入り日はつるべ落とし」と ひと風ごとに天地も冷えゆく

秋と呼ぶには最早時は過ぎ さりとて冬本番には遠く
狭間の穏やかな小春日和 戯れるひとときが暖かい

季節も人生もその日常は 居心地よく穏やかに流れる
冷たい北風が頬を刺しても 木漏れ日に暖かく包まれる

されど足元の落ち葉を拾えば 確かな節目に気づかされる
楓の絨毯を踏みしめながら 冬支度に
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晩秋の温もり~霜降の時~【詩】

秋の夜長の「後の月見」に 想いを馳せれば 今は夢の中
山里に朝靄が立ち込めて 澄みきった冷気が素肌を刺す

草木に揺れる水晶玉も いつしか凍り始める霜降(そうこう)
奥深き山は深紅に燃え盛り 晩秋を惜しみ彩りを添える

閑散とした電車の窓の 外は色鮮やかなショーウィンドー
君に見とれる間もないほどに 流れゆく景色を目に焼き付ける

ケーブルカーの終着駅から 霧雨に濡れた落ち葉を踏みしめ
離さぬ手の
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欠けたところに~寒露の時~【詩】

天高くどこまでも澄みわたり 柔らかな木漏れ日が眠り誘う
耳を澄ませば元気よく駆ける 子供らの声が空響き渡る

白露の十五夜は満月なれど 秋の長雨におぼろげに霞む
寒露の十三夜の欠けた月は 遮るもののない「無双の月」

あるべき姿とここにある姿 横たわる溝の深さを受け止め
諦めることもなく突き進む 非の打ちどころなき完璧さ なれど

この世に生きる誰ひとりとして 欠けるところなき者などいない
完全無
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裏腹の揺らめき~白露の時~【詩】

寝苦しさに目覚めた熱帯夜も いつしか過去の記憶となり始め
朧月夜の灯りに照らされ 網戸越しの風 虫の鳴き声

朝靄立ち込める山の麓 草花に降りた露のしずくが
水晶玉のごとく光り輝き 季節は足早に駆け抜ける

咲き誇る花のいのちは短く 舞い上がる花火は一瞬の輝き
消えて散りゆく運命(さだめ)と知りつつ 溢るる涙を隠しきれない

街路樹をもてあそぶ暴風雨 やがて来るあの厳しさの前触れ
感傷を胸にしまい
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置き去りのこころ~処暑の時~【詩】

彼方の朧げな灯し火に 在りし人在りし日々の想い出
浮かんで消える 真夏の夜の夢 目覚めて聴こえる 初秋の足音

昼間の残暑はまだ厳しくとも 朝夕は涼風が心地よく
雲の隙間から上弦の月が 霞んで見える 処暑の今宵

映画のような胸躍る出逢い 千分の一の男性(ひと)に巡り逢い
あの空も この海も その夢も 輝くすべてを抱きしめた夏

景色はひとつとして変わらない あなたがいないことを除いては
季節は静
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送り火と兆し~立秋の時~【詩】

都会の暮らしの疲れを癒す 田舎の盛夏の原風景
日射しの木陰 蝉の鳴き声 小川のせせらぎ 耳澄ます君

突き抜ける空の彼方の記憶 戻る頃には微かに感じる
目に見える真夏の景色の中 目に見えぬ立秋の風の気配

永い人生のいつかは違えど 必ず最盛期は訪れる
培った経験に裏打ちされ 眠っていた才能が開花する

目に見える成功に酔いしれる その頃はすでに変化の兆し
目に見えぬわずかだが確かな それを感じる真
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沸き起こる衝動~大暑の時~【詩】

祭囃子の音消える頃 長く続いた梅雨も明けて
どこまでも高く澄みわたる空 日めくり暦に「葉月」の二文字

四方を山々に囲まれた 盆地に吹き下りたまる熱気に
街並みは蜃気楼の中揺れて 額に汗滲む 大暑の季節

縛り付けるすべてを解き放ち 突き刺す日差しの視線を浴びて
吹き出しほとばしる汗そのままに 本能をさらけ出し駆け抜ける

知らぬ間に眠っていた衝動が 立ち上る入道雲のごとく
無心の中から沸き起こり
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みやこの喧騒~小暑の時~【詩】

過去振り返り 穢れを祓い 未来の無病息災願う
節目の折り返しの日を過ぎて 新たな気持ちで一歩踏み出す

かかる梅雨時の夏至を越えれば 祇園祭の囃子が響き
灼熱の都に夏が訪れ 梅雨明け真近の小暑の熱気

出逢いの春から育んできた 静かな想いが実を結び
浴衣の君と夜風に吹かれ 古(いにしえ)の時の旅に出掛ける

あれから幾年月が流れ 寄り添う傍らには別の女性(ひと)
記憶を引き出しにしまい込んで 変わ
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闇に差す光~夏至の時~【詩】

豊穣の祈り込めた芒種も 過ぎて川岸集いて涼む
降り続く梅雨の晴れ間の熱に 季節の変わり目感じる文月

真昼の長さと深夜の短さ 光の眩しさに心躍れど
月明かりの逢瀬の喜びも 比肩するほどのかけがえのなさ

終わりなき旅のごとき人生 様々な人や出来事に出逢う
光に満ち溢れる日もあれば 暗闇の底に沈む日もある

暗闇にさす一筋の光 いつにも増して輝いて見える
光の意味と有り難さを知る その暗闇は必ず力と
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