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2023年6月の記事一覧

【短編小説】自己像幻視

意識だけは妙にハッキリしている。 体の感覚はない。 俺の目には見慣れない角度で地面が映っていて、数十メートル先にはフロントが少しへこんだ車が止まっている。 その車のライトが俺をあざ笑うかのように照らしてくる。 車から50代くらいの男性が顔面蒼白で出てくるのが見え、周りからは悲鳴や救急車を呼ぶ声が聞こえる。 「こんなあっけなく終わるのか...」 自分の状況を理解し、頭の中でつぶやく。 徐々に人だかりができ始め、その中にとても馴染みのある顔が見えた。 細身で長身、ボサ