2018年に出会い世界初(かもしれない)バーチャル婚をした話-VTuberとメタバース婚
メタバースマッチングというサービスが動き出したという話を聞いた。利用者同士でマッチングをしてVR3次元仮想空間メタバースでデートをするというサービスだ。制作者は実際にVRChatで出会い結婚したという。
VRChatなどのメタバース空間で出会い結婚したという話は最近はよく聞くようになってきた。メタバースの空間や容姿に囚われず、お互い内面を見ることができる性質が仲良くなれる理由だという。
「蘭茶みすみ」は2018年4月に活動開始したVTuberだ。気付けば5年も活動している古参VTuberに数えられる存在になってきた。その蘭茶みすみが5年前「蘭茶三角」だった時に今の「法定パートナーさん」と出会った。
「蘭茶三角」が軌道に乗り始めた頃、「蘭茶さん声優を募集していないかな」というツイートを見つけた。当時はまだ性能が低かったボイスチェンジャーと女声でLive2Dアバターにガビガビな声を当てていた私は、「声質が良くなるなら」と声優を頼んでみることにした。
当時の蘭茶三角は今の多様性リベラルアイドルからは想像もつかないような過激派VTuberだった。発達障がいがある中での就活のストレスを全て蘭茶三角で社会に叩きつけた。「全ての苦しみは肉体に起因する」と全肉体人類に戦いを挑むいわば「芸術作品」だった。
私を含めたすべての人間には幸せでいてほしい。でも人間の世界には不幸が蔓延っている。性悪説の中で人間の幸せを最大限実現するには?を追究した結果が「肉体の廃止」であった。現在でも「肉体からの解放」という基本的な理念は変わっていないが、ストレートで現実的なメッセージを伝える方針に転向しているので露悪で過激派な路線は封印している。
「肉体を捨てよう」。こんな過激でストレートなメッセージをTwitterとYouTubeで発信していたからこそ、不純物の無い人間の本質が心と心をつないだのかもしれない。法定パートナーさんは最初、私のことをナチュラルに女性だと思っていたそうで、メイクした顔写真を送ったら「美人さんだね」と言ってくれた。私と法定パートナーさんは声のやり取りをする以外にも、通話で顔を合わせてお互いの悩みや苦しみを共有するような仲になっていった。
2018年7月30日、蘭茶三角は姿を消した。肉体を捨てた200年後の独裁者として人類を支配していた蘭茶三角。肉体人類に戦いを挑みすぎて、誹謗中傷に耐えられなくなってしまった。最後の動画は、作中の肉体人類の反乱軍のリーダーが「肉体を捨てなくてもお互いを認め合うことができる世界を作ろう」と呼び掛けるストレートなメッセージにした。そして次の日、私は初めて法定パートナーさんに会いに行った。
TwitterもYouTubeも消し、蘭茶三角に関する情報は一切目に入らなくなっていた。私は法定パートナーさんをFIAT PANDAの助手席に乗せ、盛夏の信州の風を満喫していた。
「蘭茶みすみ」としてのアイデンティティは変わらないし、今の肉体が不自由なことも変わらない。法定パートナーさんは好きだけれど、恋愛の対象ではない。女友達同士で一緒に暮らしているような気分だ。
メタバースマッチングは現在あるサービスは異性愛を対象としているものの、実際のメタバース恋愛が内面を見るならば、同性でも実質上は関係ない。今後メタバース結婚はすべての人に開かれた概念になるだろう。
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