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解釈伝え意識を共有 - 元コミュ障新聞記者が使う「聞くだけ話法」

 バーチャル世界でも物質世界でも「なかなか人と話せない!」という悩みがありませんか?特に「何話せばいいかわからない!」という方や、「自分のことを話しすぎて避けられる!」という方に共有したいのが、発達障がいの私が記者生活の中で苦しんで編み出した「聞くだけ話法」です。

 会話は、共感を求めるものも、目的を達するものも、前提となるのは「概念の共有」です。「聞くだけ話法」は概念の共有を広めたり深めたりするもので、基本的には五つのターンを組み合わせるだけ。相手からの情報収集と、概念の組み立てに専念し、それを相手に返すだけなので、「何か話さなきゃ」という焦りに脳内のリソースを支配される必要がありません。

 「聞くだけで大丈夫?」と思うかもしれませんが、だいたいの人間は自己顕示欲が強いですから、自分に深く興味を持ってくれて真剣に聞いてくれる人のことは肯定的に見てくれる可能性が高く、むしろ喜ばれるかもしれません。相手がコミュ障でも、質問が具体的なら会話が続きます。むしろコミュ障であることをお互いに理解した上で、安心して特に会話せずにのんびりするという手もあります。

 「聞くだけ話法」五つのターン

 ①「どんなことされてるんですか?」

 会話のエンジンをかけます。初対面の相手とは「普段」、久々に会った相手とは「最近」、昨日会った相手とは「今日」、数時間前に会った相手とは「あのあと」と言うように、会わなかったスパンと合わせて時制を変えるだけですから簡単です。

 ②相づちを打ちながら単語を拾う

 相手の目を見ながら、会話の節々で相づちを打っていきましょう。相手の目を見るのが怖いのは、自分が見られてると思うからですが、こっちは聞くだけ。むしろ相手の内面に迫る立場ですから怖いことはありません。

 相手が話し始めると、さまざまな単語が登場します。意味がありそうな単語、理解できない単語、気になった単語、珍しい単語が、固有名詞などがあったら、その場でその単語を呟きましょう。わかりそうな単語は「●●」と噛み砕くような感じで、わからない単語は「●●?」と聞くような感じで。それぞれが具体的なトピックへの入り口です。自分が話したい内容に関する単語に、より大きいリアクションを取れば、自分の望む方向に話を誘導することもできます。

 ③「なに?なぜ?どうやって?」

 相手がこちらが返した概念やトピックに引っ掛かったら、具体的な質問をします。これも機械的ですから悩む必要はありません。「●●って何ですか?」「いつやるんですか?」「誰がやるんですか?」「どうやってやるんですか?」「何故やるんですか?」と言った5W1Hを聞いて具体化するだけです。単純ですが相手は「かなり興味を持ってくれてる」と思うかもしれません。ただ、「何故やるんですか?」はちょっと批判的な印象を持たれやすいので、同じようなニュアンスで肯定的な「魅力は何ですか?」「どんな楽しみがありますか?」にするといいかもしれません。

 ④概念を組み立てよう

 質問をしながらも、頭のメインは概念の組み立てに使いましょう。概念の組み立ては「自分が既に知っていた情報だけで説明できるようにする」行為です。「犬って、首輪を着けて四つ足で歩いて、ワンって吠える生き物なのでは?」という感じです。細かい質問はそれを補うために機械的にすればいいだけです。

 ⑤解釈を確認してもらおう

 解釈が固まったら「●●って、こういうことですよね?」と、自分なりの解釈を投げ返してみましょう。間違っていても相手は修正を入れてくれます。人類は愚かですから、無知が基本。恥ずかしいことなんてありません。最終的に解釈が一致するように組み立てることに集中しましょう。真剣に理解しようとする様子は伝わっていれば、嫌な思いをする人はあまりいません。大切なのは概念を共有していること。ここで一言感想を言うとさらに喜ばれますが、言わなくても「なるほど、ありがとうございます!勉強になりました!」と明るい声で感謝を伝えれば大丈夫です。

 自己開示は潤滑油程度に

 会話が始まったら②~⑤のターンを繰り返すだけで話しは弾みます。それでも止まるときは、潤滑油程度に自己開示を行いましょう。やり方は簡単。自分の経験や知識の中から、似たような現象を引用してきて「私もそういうことある」「これはこうだと聞いたけど、これに近いのかな?」というだけ。共通認識が生まれれば、相手も話しやすくなります。

 終わらせるときは?

 今続いている会話のターンが⑤に行き着いたところで切り上げます。今のトピックに関する解釈のあと、全体を総括した解釈を投げ返せば、だいたいきれいにまとまるので、気持ちよく終らせることができます。

 共感にも討論にも使える

 相手に投げ返す解釈を、肯定的にするか、擦り合わせるようにするか、批判的にするか調整するだけで、共感を求める会話にも建設的な議論にも、討論にも使えます。また、等身大で主観的な解釈から、俯瞰的な解釈まで、相手に投げ返す解釈を調整することで、相手に対する立ち位置も「同調する人」「反発する人」から「アドバイスする人」「優位な存在」まで調整することができます。

 大切なのは尊重

 会話において一番大切なことは相手への尊重です。自分を人間として大切にしてくれる人のことは、だいたいみんな大好きです。好きな人には何でも話したくなります。尊重は礼儀と感謝が伝われば表現できます。また、大変な内容だったら「大丈夫だった?」、楽しい内容だったら「おめでとう!」というような、ちょっとした思いやりや共感のことばも大切です。また、嫌がるときは深入りしないことも大切。明確な「これ聞いて大丈夫?」みたいな確認も大切です。尊重あってこそ有意義な会話が成り立ちますから、相手への礼儀と、教えてもらったことへの感謝は全身で表現しましょう。

 人間のコミュニケーションの一番大切なことは「概念の共有」です。皆さんも概念を共有しながら、会話を楽しんでいきましょう。

 

 

 

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