見出し画像

令和の鬼殺隊は授乳していた!

 大正時代を舞台に、鬼に家族を食べられた主人公が、鬼と戦う漫画「鬼滅の刃」が大人気だ。最近の子どもたちはみんな鬼殺隊に憧れているといい、入隊希望者は日々増加している。

 「鬼滅の刃」の主人公、竈門炭次郎(かまど たんじろう)は、鬼にされた妹を人間に戻すために鬼と戦っている。鬼たちは元々人間で、鬼にされると理性を失い、食欲の限り人間を食べるようになってしまう。鬼を一方的に敵とみなす周囲とは違い、不遇な鬼たちに救いの手を差し伸べようとするのが炭次郎の魅力だ。

 現代社会にも鬼は溢れている。差別、貧困、家庭内暴力、パワハラ、過労など、人間を苦しめるストレスだ。人は苦しむと耐えられなくなり、他者を傷付けるようになってしまう。鬼は伝染し、苦しみの連鎖は止まらない。しかし、誰も悪いことをしようと思ってしているわけではない。苦しいからそうせざるを得ないのだ。

 人の心に潜む鬼たちと戦う令和の鬼殺隊は果たして存在するのだろうか。「なりたい姿になれる場所」VRChat(バーチャルリアリティー会員制交流サイト)にいた。「授乳カフェ」だ。ここに来た人間は、現世のしがらみや苦しみといった「鬼」たちを(一時的にしろ)洗い流し、生まれたばかりの心に戻って授乳される。ママたちも全力の愛で包み込む。

 授乳カフェのママたちは修練に暇がない。ママ同士で授乳しあったり、個人的に授乳したりと、愛の表現のために全力を注いでいる。その様子はまさに妹を救うために修練に励む炭次郎のようだ。「全肯定の呼吸」で人間を無垢な心に戻し、癒しを与えるママたちこそが令和の鬼殺隊かもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?