2021/4/14 柑橘パフェ
気がついたら3月全くnoteを書かずに終わってしまった。
いやはや。
言い訳をさせてください……とnoteを書かない理由を並べて書こうとしたけれど、どうやっても暗い感じの文になってしまいそうで筆が乗らない。
いや、だってここ最近の記事とちょっと前の毎日書いてた時期の記事を読み比べてみてくださいよ。一目瞭然じゃあないですか。
先日、アイドルの解散ライブに行った。
いや、ライブに参加してはいないので「行った」という表現は正しくない。いわゆる「会場推し」というやつである。ただオタクの友達と会うためだけに池袋の会場に足を運んだ。
会場前にいる人たちはいつもと同じように物販に並んだり、知り合いは声をかけたら気さくに話してくれた。
いわゆる「ラストライブ」というものには何回か参加したことがあるけど、たいていの場合そこに参加する人間が恐ろしく落ち込んでいたりということはなく、なんならいつもよりカラッとした感じを受ける。腹を括った人特有の後腐れのなさだろうか、それとも、大体ライブ中か終演後にはぐじゃぐじゃの顔になっているので、涙腺をぎっちりと閉じているだけなのだろうか。
どちらかと言えば前者に見えたし、自分は今まで後者のパターンの人間を見たことがない。
ライブハウスに入場する知り合いを一通り見送った後、同じく会場推しに来ていた友達と池袋をぶらついた。
彼の提案した「よくサンシャイン通りで呼び込みをやっている500円のお笑いライブに行く」というのは確かに暇つぶしには妙案に思えた。
しかし、会場近くの道路や駐車場で小声でネタ合わせを行う芸人コンビの迫力に負け、「暇つぶしでこの人達の芸を見に行くこと」「おそらくそこまで人がいないであろう会場に行くこと」に気圧されてしまった自分たちは、会場近くに引き返してパフェの列に並んだ。
何年か前だろうか、下北沢で推しの舞台を見に行った時、昼公演と夜公演の間に手紙を書こうと近くの喫茶店だかファストフード店だかに入った事がある。
(今更隠すことでも恥ずかしいことでもないけどそのぐらいアイドルに真剣な時期もあったのだ!)
隣に金髪にスカジャンのイカツい人ともうひとりが座っていてなにやら話している。
手紙を書きながら耳をそばだてていると、金髪の方がいきなり
「俺もう辞めたいんすよォ……!」と、半泣きから全泣きぐらいのテンションで話していた。
話から察すると、この金髪の人は芸人のようで、もう一人はマネージャーみたいだ。
「うわ、修羅場に居合わせちゃったよ……」と心の中で思ったものの、自分は手紙を書くので精一杯だし、そもそも芸も見たことない、誰だか知らない、なんかめちゃくちゃヤンキーみたいな見た目の人にアドバイスなんてできるはずもなく、そそくさと手紙を書き上げて店を出たのだった。
翌日も舞台があったので、電車を降りて駅前に降り立つと(2日連続で同じ舞台に行くぐらい真剣な時期だったのだ!!!)、あの金髪の兄ちゃんが駅前でライブのチラシを配っているではないか。
昨日はあんなに真剣に、それこそ泣くほど「辞めたい」と言っていた人が、表面だけでも立ち直ってお笑いに打ち込んでいるのがなんだか嬉しかった。
芸も見たことないのに、だ。
ちなみにその後、その芸人さんを見たのはテレビだった。
ネタ番組ではなく、芸能人が知識を競い合うクイズ番組に「東大卒芸人」の括りで出場していたのだ。
あの金髪とスカジャンは変わっていなかったが、昔見た時も掛けていたメガネにはイカツさと知性が同居していた。
東大卒ヤンキー芸人の澤山さん、という名前もそのテレビで初めて知ったぐらいなのに、ビラ配りをしていたのを見つけた時よりも嬉しかった。
「俺らがパフェ食ってる隣でオタクが特典会やってるんですよね」
友達がいちごパフェを突きながら、なんの気もなしに言った。
もしかしたら「推しグループの最後のイベントだ」と思いつめている人もいるかもしれないなぁと思いつつ、そんなに思いつめている当事者ではないので「うーん、見た感じ半地下っぽかったし真下かもしれませんね」と応えた。
もしこのパフェを食べる代金でお笑いのライブを見て、少しでも笑ったら誰かが救われたかも……とか、アイドルのライブを見ていたら真下でやっているライブのタイトルは「ラストライブ」じゃなかったのかも……とか、なんとなく思いながら柑橘パフェを食べた。
グレープフルーツの苦味も、柚子シャーベットの酸味も、デコポンと生クリームの甘みがかき消していった。
1週間分のビタミンCをいっぺんに摂っているような気がするぐらい美味しかった。
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