見出し画像

2023/12/26 Vlogのテキスト版①

InstagramにVlogを投稿し始めた。
推しアイドルが遠征のオフショットを動画で編集して上げていたのを見て、その動画自体が見てきた景色を追体験させてもらえているようで面白かったので、自分も遠征の動画を撮影して上げたら楽しいのではないかと思いやってみることにした。
紀貫之風に言えば「アイドルもすなるVlogといふものを、オタクもしてみむとてするなり」である。
正直な話をすると推しには見てもらいたくて、でも後はインスタのフォロワーのうち10人くらいに見てもらえて、「あいつやってんなぁ」と思ってもらえれば御の字ぐらいに思っている。
収益化とかは全く考えていないけど、見てもらえることはシンプルに嬉しいので紹介というか宣伝も兼ねつつ、Vlogの尺では触れられなかったことについてつらつら書いていきたい。

推しに接近で「Vlog見たよ!」と言われた時に真っ先に言われたのが「見て初めて知ったんだけど電車で来たの!?」だった。
推しと一緒にVlogを見たらしいメンバー(ありがたいし嬉しいけどアイドルが2人で見るようなコンテンツか?)からも「ずっと電車乗って来たの体力ヤバいね」って言われたので、やはり18きっぷを使った電車での遠征というのは普通では考えもしないのだろう。
自分からしたら彼女達も本州の遠征であれば車移動が主で、移動してからすぐライブに出ているそっちの方が体力すごいよと言いたくなるし、移動中はスマホで漫画なり動画なりTwitterなりをして疲れたら寝るだけなので、疲れはするけどそこまででもない。乗り換えもネットで調べればすぐに出てくるし、時間を使う以外は体力も金も何もほとんど使わない移動手段だと思っているが、18きっぷ旅行は単なる貧乏旅行の手段には収まらない楽しさがある。

今回は東京から京都まで9時間半をかけて移動したが、これは普段自分が働いている時の拘束時間と近い。
普段やりすごしている仕事の時間を使えば京都にだって行けるという、自分を社会の一員たらしめている労働を休んで、その時間でやってやったぞと中指を立ててやったような気持ちのような、でも有給を使って平日の昼間に、もう仕事に触れないような場所まで行くという、社会の歯車としての背徳感、罪悪感を抱えながら、知らない景色を眺める。

新幹線を使った旅行で非日常に突入していく楽しさは何年か前に書いた。近場の駅では駅弁を食べないようにしているとか、とにかく「強制的に日常から自分を遠ざけて、非日常に突入するスリル」を味わうことを楽しんでいた。
かたや18きっぷ旅行で使うのは普通電車である。普段外に遊びに行くときや仕事に向かう時に使うのと同じ電車に、普段の遊びや仕事よりも早く乗る。普段は使わないグリーン席でビールを飲む。終電で乗り過ごしたら絶望するような終点に着き、自分にとっては非日常だけど、そこに住んでいる誰かの「普通電車」に乗り込む。
そんな日常と非日常が溶け合うグラデーションを味わうのに18きっぷ旅行はちょうどいい。
18きっぷ旅行は「全部放り投げてどこかに行く」ということを気軽に叶えてくれる。もちろんそれは車でも飛行機でも新幹線でも叶うことなのだけど、一番自分にとって身近で日常的な手段である普段遣いの電車で、会社とは違う方向の電車に乗って、普段仕事をしている時間をかけて移動することが「普段の日常を全部放り投げている」という気持ちに拍車をかけている、のだと思う。
とにかく、18きっぷってそんなに苦じゃないし、それでしか味わえない楽しさがあるのだ。
行きと帰りで使ってあと3回、どこへ行くか考えるのが楽しみだ。

そういえば、あの小説も京都が舞台だった。宇治には行けなかったけど。

「でもさ、たまにこういうあほなことしたくなるねん」
麗奈はそう言って、照れたように頭をかいた。秘密がばれてしまった子供みたいな表情で。
「制服着て、学校行って、部活行って。それで家帰って勉強して……なんかさ、たまにそういうのを全部捨てたくなんの。青春18きっぷ買って、理由もなく旅立ちたくなるわけ」

武田綾乃「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」より


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?