雪降るだけの街

冬が終われば春が来るのだと思っていた。疑いようもなく。
夏を堪えれば秋になる。そういうものだと、信じていた。
身体の奥底からカビてゆくような夏も、ひび割れた箇所を隠しながら暮らすような冬も、得てして持て余すばかりで、春と秋だけが救いだった。

過去に思いを馳せたところで、何が変わるでもなく、現実はずっとそこで雪を降らせている。轟々という音とともに、寒さと汚れを可視化したような雪は、街の灰色を濃くしてゆく。――漫然と終わっていくとは、こういうことを言うのだろう。意識の端で、小さく鈍い音を立てながら、細かい網目状のヒビが、指先を震わせている。指先をこすり合わせれば、はらはらと細かい欠片が零れ落ちていった。

いつか見た、白い雪のようだと思った。

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