見出し画像

1.1.5. ホットシステムとコールドシステム

 時計などの機械仕掛けは、ある一定の共動を繰り返し引き起こすことができる(ことになっている)。これに対して、たとえば、時限爆弾は、その作動によって壊れてしまうために、時限とともに爆発するという共動性も失われる。つまり、共動の一つの動きとして、〈システム〉としての構造自体を変えてしまう。

 前者のように、その〈システム〉としてのソフトと〈システム〉としてのハードが明確に整層的に区別できる〈システム〉、作動が〈システム〉のハードに許容される範囲に収まる〈システム〉を「コールド」と呼ぶ。これに対して、後者のように、その〈システム〉の作動の一つとして、〈システム〉自体に非整層的に働きかけ、その構造そのものをも改変してしまうような〈システム〉を「ホット」と呼ぶ。

 川で言えば、普通の川は、たまに溢れたにせよ川筋は変わることなく「コールド」だが、平野の蛇行する川などには、その曲がる部分をだんだんと侵食して蛇行を大きくし、やがて洪水のような時に蛇行を押し切って、三日月湖を残して直線になるというような「ホット」なものがある。

 ただし、「ホット」と「コールド」の区別は、〈システム〉を完全に二分しうるものではない。「コールド」に見えても、マクロには「ホット」かもしれないし、また、「ホット」も、ミクロには「コールド」であるかもしれない。また、その逆もありうるだろう。というのは、「ホット」な〈システム〉であっても、その変化の仕方として、一階上のレベルで再び「コールド」な〈システム〉をなすことがあるからである。

 再び蛇行する川の例をもって言えば、蛇行の進行は流れの直線化に連鎖し、流れの直線は蛇行化へと連鎖しているように、両変化を循環する〈システム性〉がある。それゆえ、それは、日常には水の流れとして「コールド」であり、数年では川の位置として「ホット」であり、さらに数十年では流域として「コールド」である。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?