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療養日記 2022年10月16日 『秘境公園』

 「秘境」と言う言葉が人外魔境のみならず到達困難な場所を最近では意味している。例えばよく聞く言葉に「秘境駅」というものがあるがそれは必ずしも人外魔境の駅というわけではなく、鉄道以外での到達が極めて困難かまたは不可能の場合にも用いられる。

 かつて我が家はJR飯田線にある小和田という秘境駅に行ったことがある。どんな場所なのか気になって行ったが、鉄道ファンと違ってその非現実的な空間にわんこを連れて行ってみたかったのが理由。鉄道ファンの方々から見ればきっと「秘境駅なめんな」と言われそうだがいい思い出にはなった。

 今回もそんな意味での秘境駅に行った。それは鉄道でしか行けず、他に行く手だてがまるでない場所。鶴見線海芝浦駅だ。

 この海芝浦駅は結構有名。何が有名かと言えば、

①改札から外には出られない。
②ホームの下はすぐ海。

 とおよそ他の駅では考えられない要素が二つある。そして鶴見線という路線自体もものすごく特徴がある都会の超ローカル線だ。

 ①は駅そのものが東芝という私有地の中にあり、改札から工場が直結している。つまり工場関係者でなければ改札から外には出られない。そもそもがオフリミットな場所。

 ②は場所が京浜運河沿いにありホームの真下はもう海。海が目前にある駅は日本中に幾つかあるが海の上の駅は流石に例を見ないと思う。

 そんな海芝浦駅は昔から変わった駅だったがそこに平成になってからもう一つの要素が加わる。

③この駅と直結した公園がある。

 オフリミットなこの駅に公園があるということはつい最近になって初めて知った。調べてみると東芝が敷地内の一部を公園として開放したのが1997年、公園を拡張して現在の姿になったのが2006年とのことなので結構前から存在していた。改札から外には出られないのに景観が抜群なのはもったいないということで東芝側から公園造成を申し出たらしい。さすが当時の東芝、まだ光り、回り、走り、歌っていたんだ。

 公園の名前は「海芝公園」当然車やバスでのアクセスは不可能。鶴見線に乗らないと行けない公園だ。先週NHKアーカイブスを観てたらこの公園が紹介されていた。

 海芝浦駅は中学生くらいの時興味半分で一度行ったことがあったがその頃は本当に外には出られず乗ってきた電車にまた乗って引き返した思い出しかない。それ以降もこんな場所行く意味もないし理由も見つからないとしか考えていなかったが横に公園があることを知ってわんこを連れて行ってみようと思い立った。

 我が家からJRの最寄り駅まで行き、川崎まで行ってから引き返すように鶴見駅へ。鶴見駅そのものは通勤でもずっと利用していた勝手知ったる場所。しかし鶴見線ホームへ行くのは本当に久しぶりのことだった。以前は鶴見線ホームに入るには改札を通らなければ行けなかったがそれもいつしかなくなっていた。

 やって来た電車も鶴見線専用らしい電車。昔は南武線の黄色い電車のお古みたいな電車だったのに知らない間にだいぶ変わった。

 電車に乗って気がついたが結構多くの人が海芝浦駅まで行く。乗り鉄や撮り鉄みたいな鉄分ダダ漏らしの人からベビーカーにガキを乗せて電車の中で思い切り騒ぐ迷惑な輩、勘違いコスプレイヤーとそれを撮る連中まで様々。特に小さな子を見かけたが親が鉄オタで無理やり連れてこられましたと顔に書いてある可哀想な子が目立つ。

 しかしながら我々以外は全員乗ってきた電車に乗って引き返して行き、残ったのは我々だけ。次の電車が来る一時間半の間は海芝浦駅と海芝公園貸切状態だった。

車窓から海が見える海芝浦駅
ホームの横にある海芝公園

 鶴見駅のコンビニで買ったおにぎりを海の見えるベンチに腰掛けてのんびりと食べながら都会のど真ん中にある不思議な秘境公園のゆったりとした時間を過ごすことが出来た。ここに来るのなら乗ってきた電車にまた乗らないで一本次の電車が来る一時間半ほどの時間を楽しんだ方が絶対にいいと思う…時間か許すのであれば。

(註)一応マナーは守り我々以外は誰もいない時間にのみわんこを外に出しました。


いい思い出になったと思う

 再び鶴見まで戻ると根岸線に乗りそのまま大船へ。乗り換えなしでゆっくり座っての移動を選ぶ。大船から横須賀線に乗り換えて鎌倉へ。実は今日は鎌倉に行く用事もあった。

 せっかくの鎌倉、海芝公園でしっかりお昼を食べたわけでもないので小町通りに出て我が家のお決まりパターンに入る。それは「プリンセスきのこ」のあげマッシュと「腸詰屋」のホットドックだ。

プリンセスきのこ
あげマッシュ。鎌倉に来たらコレを食べるべし

 腸詰屋の方は写真がない。小町通りのいちばん端っこのあたり。横を通ればすぐわかる。わからないのはプリンセスきのこでこれは鎌倉駅方面から小町通りをずっと歩くと左手に「雪の下テラス」という場所があり奥まったところで飲食店が数店舗固まって営業をしているその中の一つ。雪の下テラスに入って一番最初にある店。雪の下テラスの目標は同じ左手にある「まめや」よりもさらに50メートルほど先にある。

 適当にお腹を満たすと小町からは離れて裏鎌倉(鎌倉駅西口)から御成通りへ。まずはいつも行くカフェ、The Good Goodiesへ、

The Good Goodiesでは多くの人が注文するカフェラテフロート

 今日御成通りに来たのはこの通りにあるトルコ雑貨専門店「ミモザ」か店舗を仙台に移転させる事になったのでご挨拶に。

 御成通りににはわんこが縁で仲良くさせてもらっていたお店が二軒あった。ひとつは一昨年に閉店してしまった「くろぬま」という知る人ぞ知るレトロなおもちゃ屋さん。そしてもう一つがこのミモザだ。両方ともわんこを連れて行くととても可愛がってくれた。

うちのわんことミモザのオーナーさん

 我が家のわんこは名前がトルコ語というところからのつながりで御成通りに行けばいつも立ち寄っていた。移転というニュースはまさに青天の霹靂だった。

 そこで我が家はこれまでわんこをとても可愛がってくれたご縁もあるのでトルコランプをひとつ買う事に決めた。

このランプを買いました

 ランプは買ったけど御成通りでお店を営業する間はお店に置いてもらうようにお願いをした。なのでしばらくの間は写真だけ。

 こうしてミモザで色々と話し込んでいたらすっかり真っ暗になっていた。日中は照りつける陽射しと高い湿度のおかげで汗ばかりかいていたが夜ともなると少しは鎌倉も涼しくなっていた■


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