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深読み:井戸の底

前にも漠然と書いたかもしれませんが、ドラマ「シャーロック」と村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」は深いところで共通点があるように思います。
「シャーロック」ではシャーロック・ホームズ自身が過去の記憶に蓋をしてしまっていた事件「赤ひげ」を自分自身で解決することが最終的な仕事です。少々、荒治療ではありますが。幼き頃の友人「赤ひげ」少年を失ったことと、現在の相棒ワトソンが重なり合います。水の入った井戸の底で溺れそうになるワトソンをなんとか助けようとするプロセスが、過去の赤ひげ少年を失ったことによるトラウマを解消する、記憶の蓋をこじ開けるきっかけとなります。
一方、ねじまき鳥の主人公も色んな意味で行き詰まった時、偶然見つけた空井戸に自ら降りて行き、真っ暗闇の中で自分と向かい合い、向こうの世界と行き来したかのような体験をします。
「シャーロック」では、文字通り、火事場のくそ力的に、危機一髪のスリリングな展開で、みている側もハラハラさせられます。頭脳明晰なホームズでさえ、行き詰まります。時には、何日も瞑想をする場面もあります。しかし、彼だけでは解決出来ない難問が最後に残されていました。
一方、「ねじまき鳥」では、主人公は平凡な一般人です。物語も、なんだったのかわからないまま、収束に向かいます。
「シャーロック」と「ねじまき鳥」のどちらが、我々の日常に近いか、どちらも近いくないか、まだ僕にはわかりません。

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