スリラーのトラウマ
5、6歳の頃の話。
父にマイケルジャクソンのMVをYouTubeで見せられたことがあった。
いきなり大事な用事を思い出したかのように、いや、ひっそりとした計画性があった、
彼なりの隠遁趣味ともいうべきものである。
ゾンビの世界、堕落の世界に
放り込まれた私は、無抵抗の状態にあった。
一人で向き合わなければならなかった。
でも子供の私にはそれが何か、すぐには理解できない。
父はスリラーを見せ続ける。
我が子という概念すらない怪物が
せっせと子を悪の実験場にする。
今でもふと思い出す。
父が掛けていたメガネの名はなんなのか。
彼の病み方には、現代特有の目を張るものがあった。
幼い子供は道連れの目に遭う。
人類を呪ってきた不幸な親子の歴史。
父の目を見れば分かる。
頑固で独りよがりな癒えない悲しみが。
ある愛をもらい損ねた少年がそこに居座っている。
彼は彼なりに愛の、時代の、犠牲者である。
どう一人で耐えるべきなのか、教えてくれる人も知恵も何一つない。
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