「年下に興味ないですか?」


PCに向かう私の右側から、コウキが覗き込んできた。
うすい口びるでペラッと笑う。
口角を上げて、もう一度覗き込んできた時、胸元のネックレスがさらりと鳴った。

こういう男は例外なくモテる。
しかもそれを自分で知っているから厄介極まりない。
だから邪険にしたいけど、可愛いからムリ。
横に座らせておいて、言うとおりに動くサマを、人様に見せつけたくなる子だ。

「仕事が立て込んでいてそれどこじゃないのよ」
「締め切りが近いんだから」
半ば苛ついてキーボードを打ち続けていると、大きな手が私の指を覆う。

「いいじゃん、外いこ」
コウキの手に押されてキーボードがデタラメ変換を始めた。
だgmb:いpぐいおmぁdmふぁpみあd;
画面には意味のない文字列が続いている。

「ネコか…」

コウキは息子の大学の同級生だ。
何度かうちに遊びに来た時に、会話を交わしているうちに、この子は共犯者だとわかった。

一世代も二世代も年が離れているのに、そんなものはお構いなしに、ヒョイとこちら側へ越えてくる。友達の母親のわたしを「ようこ」なんて、ふざけて呼んだりする。

時々いるのだ。
何もかも超越してしまう子が。

家のカギをジャラつかせて玄関へ向かうコウキを追って、しょうがないからコートを羽織る。外へ出ると、空気がつんと冷たかった。

「ちょっと待ってよ、靴履けてない…」
早足のコウキに声を掛けるも、どんどん先へ行ってしまう。
ローカットのコンバースをトントンと履いて、追いかけた。

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つづく。

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