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米国REIT企業の2020年第4四半期決算結果から見えること

米国REIT企業の2020年第4四半期決算発表は、2021年2月上旬までにほぼ半分の企業が出そろいました。増配の企業数が減配の企業数を上回ったこともあり、業績の結果は予想以上に改善していると言えそうです。家賃回収率に関して言えば、店舗セクター以外のすべてのセクターで新型コロナ前の水準まで回復してきました。大型財政出動を後押しするバイデン政権の本格始動が市場の好感を生み、幅広い業種で買いが進むなど、REIT銘柄では、住宅・IT・物流倉庫のセクターの上昇が止まりません。2020年第4四半期は、都心脱出から郊外復活への動きが継続していると言えましょう。

それでは、大手共同住宅REIT企業の業績をみましょう。ニューヨーク、ボストン、シアトル、サンフランシスコなどの都心中心地に物件が集中しているエクィティレジデンシャル社(ティッカー:EQR)、および、アバロンベイコミュニティ社(ティッカー:AVB)は、営業キャッシュフローがピーク時(EQRは2年前・AVBは1年前)から約15%減少しました。稼働率も数パーセント低下しております。

一方、明るい兆しも見え始めました。昨年12月から入居者が退去者を上回り、昨年11月より家賃が上昇し始めました。稼働率については、都心中心地は昨年10月から、都心周辺部は昨年12月から、郊外においては本年1月から、それぞれ上昇が継続し始めました。

それに伴い、これらの企業の時価総額も新型コロナ前の水準まで急激に回復してきております。たとえば、エクィティレジデンシャル社ではマルチプル(EBITDA倍率)がコロナ禍においては20倍を割っていたのですが、20倍を超えました。この水準は1年前の水準まで回復したことを示しています。アバロンベイコミュニティ社についてもマルチプル(EBITDA倍率)が、コロナ禍においては20倍を割っていたのですが、23倍を超えております。これについても1年前の水準まで回復しました。

アバロンベイコミュニティ社の決算資料では、都市圏別にみてみますと、ニューヨーク、サンフランシスコでは家賃の回復は未だ見られておりませんが、同エリアのの稼働率は昨年8-9月をボトムに回復傾向にあります。この傾向が継続すればいずれ家賃上昇に転じるのではないかと考えております。特徴的なのは、郊外においても稼働率は下落傾向にあり、都心から比べると回復が遅いことです。郊外では共同住宅よりも戸建てに住み替える傾向が強いものと考えられます。また、これらの共同住宅のクオリティは高く、家賃の安いクラスC/Dの小型アパートへ住み替えていることも考えられます。

共同住宅系のREITの市場については新型コロナ前まで回復しましたので、割安さで投資するタイミングはすでに終わってしまいましたが、今後は家賃上昇・稼働率上昇・開発等に掛ける成長要因による株価牽引を期待することになるだろうと考えます。

(本記事の内容は筆者個人の分析・見解です。)

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