読書メモ 「ビジネスダッシュボード 設計・実装ガイド」
読んだ目的
ダッシュボードを作る業務に携わっているが、メンバーによってダッシュボードの品質が大きく異なると感じる。よい本を使ってダッシュボードのプロセスを標準化し、品質の底上げを行いたい。
書籍の概要
使われるダッシュボードを作るためのプロセスを丁寧に述べた書籍。ダッシュボードの受託開発を生業にしているだけあり、各プロセスが明確に定義されており、成果物のドキュメントがはっきりしている。SIerっぽい空気感がある。
特に力を入れている事項として、要件定義の重要性や、運用の重要性について述べている。確かに運用は疎かになりがちなので、そこを強調しているのは非常にいい。
テンプレートダッシュボードの考え方や、グラフの密度による分類など、細かいテクニックも意識していなかったものがあり、実務者にも嬉しい一冊になっている。
読書メモ
ダッシュボードの種類と課題
アクションにつながるダッシュボードが良い。ダッシュボードの種類を「モニタリング」「戦略・方針立案」「効果測定」の3つに分類している。それぞれ組織内に代表例を持ちたい。
使われないダッシュボードの事例として、「重い」「指標が足りない」「指標の定義がわからない」というのはささった。これは運用に問題があるとされており、納得感がある。ただ、そこまでダッシュボードに工数がさけるのかという疑問もある。
ダッシュボード構築プロジェクトの全体像
ロールを兼任する際の組み合わせについて書いてあるのが面白かった。実務経験豊富そう。会議体の設定の重要性に触れていた。
ダッシュボードの要求定義・要件定義
要求定義では、観測・改善するKPIを決める。想定ユースケースを整理するのが重要。図3.2.3のKGI, CSF, KPIのツリーはもっと作っていきたい。
ダッシュボードの全体構成として、全体サマリダッシュボード、テーマ別ダッシュボード、詳細分析ダッシュボードに整理している。テーマ別ダッシュボードの考え方はもっと取り入れていきたい。このテーマをどう切り出すかをKPIツリーから導く方法がある。
ダッシュボード設計
「どのような問いに答えられるようにするのか」を明確にし、そのためにどのKPIを見るのか整理する。分析内容の充実と使いやすさはトレードオフにあるため注意する。
ダッシュボード設計は「将来起こりうる課題を想定する」というところに大きな特徴があるとしている。ただ、これは受託開発だからでは?という気もする。
指標の検討の具体例が非常によい。新規ダッシュボードをつくるときに見返したい。
また、指標の比較軸の検討についても述べられている。目標値と比べたり、時系列でみたりしている。目標値と比べる際に、差を値で見るのか割合で見るのかのメリット・デメリットもおもしろい。周期性をとりいれたグラフはちゃんと作りたい。
ダッシュボードデザイン
現代的なBIツールにそったデザインの議論をしており非常に良い。ここだけでも社内で読んでほしい。
ダッシュボード共通のテンプレートデザインを作る、というのは魅力的なアイデア。
縦長ダッシュボードは3画面分ぐらいにしたい。また、配色ルールは決めたい。分析の順序を考慮してチャートエリアは配置する。
チャートの情報の密度にメリハリをつける、はやりたい。
図5.4.9の棒グラフの例も知らないパターンがあり使いたい。差分との表示とかLookerでもできるんだろうか。
データ準備・ダッシュボード構築
そこまで目新しい話はなかった。
運用・レビューサポート
ユーザー向けに説明会をやる。継続的に利用状況を見る。デザインは部外者にレビューしてもらう。
総評
self-containedを目指しているためか、少し冗長さは感じるものの、実務者にも良い書籍に感じる。社に展開するには、必要部分だけをテーラリングしたいが、初学者には通しで読んでもらいたい一冊。
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