【読むゲーム実況】THE LOVE HOTEL

※この記事は、ゲーム「THE LOVE HOTEL」のネタバレを主な内容としています。ゲームのスクリーンショット等も多用しています(掲載許可はいただいております)。あらかじめご了承ください。

1周目


 タイトル画面を開くと、どっしりとした重厚感のある音楽が流れる。ものものしい空気感だ。

 ゲームは支配人の案内からスタート。暗転がとけると、銃火器頭の男性とビビッドピンクの空間が現れる。フロントだろうか。支配人はどこか慇懃無礼な雰囲気。

支配人から、「客の中には時々言っている言葉がわからなくなる人がいる。そういった客の中は言葉がうまく話せず、相手に何かを伝えるのも困難になり、強い言葉をぶつけてくる人もいる」という説明を受ける。
深い思考ができなくなるような何かがあるのだろうか?

と、ここで最初の選択肢。

個人的には1番上の小ボケ選択肢を選びたいところだが、ここはぐっとこらえる。なんとなく本質を探れそうな、上から2番目を選択。

「あなたが無抵抗だと思ってかけてくる、攻撃的な言葉です」
 
 なるほど。と思っていたらまた選択画面が出てきた。おっと。結局ほかの選択肢も選べるんかい。そういうことなら、と1番上を押してみる。

 銃は撃ったことがないので撃てるかどうかはよくわからない様子。

 3番目の「帰りたいです」も押してみる。ホテルから出る方法は2つあるらしいが、支配人は方法を教えてくれない。ケチ。「お客様自身でお探しください」とのことなので、それがこのゲームの目的らしい。エンド分岐があるということかしら。

 ひととおり話を聞き終わったので、「分かりました」を選択。

 この支配人さん、淡々としていてクールだけど、実はちょっとおっちょこちょいなのではないか疑惑が立つ。と思ったらピストルを渡された。おおっ。
「これがお客様の”力”です。ご自由にお使いください」
 ということは、人をバンバン撃てということだろうか。あるいは脅すのに使ったりするんだろうか。

「次に会うのはあなたが引き金を引いたとき」と意味深なセリフを残して、支配人は立ち去る。


 ホテルの廊下らしきところに出る。カーペットが薬莢なのおしゃれだ。
 どうやら主人公は記憶喪失のようだ。だが、不安がる様子はなく、安心と高揚感を覚えている。ちょっとサイコの素質がありそうだなと思う。
 ドアに部屋番号はついていない。迷子になったら大変そうだ。

 とりあえずルームキーを手掛かりに自分の部屋を探すことになった。


 ここはひとまず手元の手がかりをあたってみよう、と真ん中の選択肢を選ぶ。こういう時「まず人に聞く」のはコミュ力強者のやることだ。

 ルームキーを見たが、部屋番号は読めない。ぐちゃぐちゃっとサインのような線が引かれているだけ。不親切なホテルだなあ……。

 では支配人にあたってみようと思ってフロントに行くも、支配人もいない。が、主人公は全く不安を覚えていない。メンタル強いな。

 じゃあエレベーターに乗ってみよう。それにしても、ラブなホテルって普通二人で来るところだよなあ。なぜ主人公はひとりでいるのだろう。
 と思ったら、主人公が何かを蹴飛ばす。人だったらどうしようと思ってヒヤヒヤしたが、別のルームキーだった。

 選択肢が出てきて、何階にいくか聞かれた。なんとなく「やめる」を選んだら1階を探索することになった。エレベーターに乗ってすぐ引き返す変な人になってしまった。

 1階。とりあえず手前から探索してみよう。

 ためらいなくドアを開ける主人公。ここラブホテルだぞ、お取込み中だったらどうするんだ、ノックしないのかよ。と思っていたら、案の定部屋の主(10代男性)ににらまれた。ひえ。でもどうやらハズレ部屋だった様子。

 気を取り直して、手前から2番目の部屋へ。何もない。3番目もなにもない。4番目はおじさんがいた。またにらまれたのですぐ出た。鍵かけないんだなあ。
 
 1階は何もなかったので2階に行く。にしても、ホテルをうろうろして部屋の扉を開けまくってる主人公、なかなか不審者な気がする。

 こちらも手前から攻める。1番目は鍵がかかっていた。2番目は、なんだか荒れてる部屋。クローゼットや照明が壊れていて、ベッドにはびりびりになった紙が散らばっている。
 クローゼットの大穴は怖かったが覗いてみた。何もなかった。
 紙も見てみた。拙い文体でちょっと切なくなることが書いてあった。「自分もひとりの人間だ」とか「いつもわるものにされる」とか「何かひとつでも、人にかてることがあったら、見くだされないのに」とか。なんか気持ちはわかるけど、果たしてそうだろうかとも思う。何か長所や特技があっても、一つでも欠点があったら、あげつらってくるものな気がするな、人間って。でも、「自分は何も持っていない」と思っている人がこう思ってしまう気持ちはわかる。すごくわかる。

 なんだかしんみりした気分になって部屋をあとにする。ほかの部屋も見てみたが、特に進展はなし。

 3階にいったら、人がいた。お、進展だ。

 拾ったルームキーを渡すと、少女はお礼を言って去っていった。とりあえず敵意はなさそう。

 そしてまた部屋を虱潰しにしていく。
 1番目の部屋には新聞が落ちていた。「難しい言葉が多く、ちゃんと読めない」……これ、元来主人公が活字苦手人間なのか、それともこのホテルの作用で思考が阻害されてるのか、どっちなんだろう。
「犯人は勉強や人づきあいが苦手で、学業や仕事もうまくいかず、親とも不仲で……」
 事件の記事だろうか。なんだか殺人事件っぽい雰囲気。主人公の今後を暗示していそう。
 この階ではそれ以外に特になにもなかった。

 4階へ。虱潰しをしていると、ちょっと意味深な部屋があった。クローゼットに緑の布がかかっている。あとこの部屋だけ絵画がない。
 枕元に日記があった。……ホテルに日記?
「何をしてもおこられるから、何してもいっしょだ。何もない、からっぽな人生。ゴールは二つしかない」
 なにか暗示的。「脱出方法は二つ」という先ほどの支配人のセリフを思い出す。

 真ん中らへんの部屋をのぞいたら、人がいた。


なんかおっさんに怒られたあ……!
と思ったら、このおっさん、どうやら主人公の父親のようだ。

……父親とラブホ???? 

父親はめちゃくちゃチクチク言葉を吐いてくる。「お前が子どもだなんて恥ずかしい」からの「お前の顔を見てると吐き気がする」ときた。まだなんかもにょもにょ言っているが、聞き取れない。心のシャッターを下ろしたのかな。だんだん言っていることがわからなくなってきたらしい。

ここで選択肢。

 わ! 迷う~!

 レストランでメニューを選ぶ時みたいなテンションになってしまった。
 殺意の高い人間なので第一印象は「撃ち殺す」かなと思ったけど、一番この父親をぎょっとさせそうなのは真ん中かもしれない。ゲームを続けたいなら下な気がする。
「自分の頭を撃つ」はなあ……。父親は一瞬ショックを受けるかもしれないけど、なんだかんだ主人公のせいにして居直りそうだし、こういう人につける薬はないからなあ。

 やっぱり殺すしかないんじゃない?
 と、ごく個人的事情で「父親」という生き物に恨みがある私は、なんだかんだ即決してしまった。

 えいっ(一番上を押す)


 おや、なんだか不穏な感じになったぞ。
 一方でBGMは「天国と地獄」が流れ出して愉快な感じ。

 さっきの部屋を見てみた。「死体がある」と書いてある。あっさりしたものだ。

 あっ、しまった、さっき選択肢のところでセーブすればよかった!

 ちょっぴり後悔しつつ、「これで支配人さんに会えるかな~?」と思いながら1階へ。フロントにはいけない。人がいたところのドアを開けると、いきなりこの二択。


 ここ、さっきにらんできた10代男性がいたとこだよなあ。

 どうしよか。
 自分の頭を撃つ理由はないし、とりあえず撃ち殺してみる。

 それからは人がいた部屋で必ずこの二択が出てきた。「撃ち殺す」を選びまくっているうちになんだか楽しくなってきちゃって、無差別銃撃を繰り返す。主人公、完全に狂気の人だ。やば。

 勢いがどんどん増してきたあたりで、BGMが止まった。


 支配人さん再登場。丁寧な言葉遣いはどこへやら。ちょっと怒ってる?
 ヒヤヒヤしていたら「見事だ」とほめられ、VIPルームにつれていってくれることになった。わあい。

 喜んでいたところに「あなたは罪を犯しましたね」と水を差す人がいた。なんだよお、と思っていたら彼女は「死刑執行人」を名乗った。ひえ。
「あなたにはここで、償っていただきます」
 VIPルームってそういうことお……?

 どういうことっすか支配人、と支配人を仰ぎ見ると「代償を払ってきな」と突き放された。そんなー……。

 エンドロールが流れた。ED1「死刑」。
 調子に乗るのはよくないね、という教訓を得た。

2周目

 というわけで別のエンディングを見るために2周目に突入。
 ここのホテル、「ラブホテル」と言ってはいるが、いわゆるセックスをする部屋を提供するホテルではなさそうだ。子どももいたし。もしかしてこの「ラブ」は普遍的な愛の「ラブ」なのだろうか。

 そんなことを思いつつ、PLAYボタンを押す。
 ところどころにある「LL」のロゴは、どういう意味なのかなー。
 
 支配人から説明を聞き、エレベーターに乗り、ルームキーを拾う。改めてデザインをよく見てみた。「KEEP LOVE ON YOUR HEART」と書かれている。「愛を忘れるな」といったところか。

 3階で少女にルームキーを渡してあげて、4階の父親のもとに行く。
 そしてまた怒られる。

 今度は自分の頭を撃ってみた。父親よ、後悔しろ~。

 ここでまた支配人の登場。
「アンタはそっちを選んだんだな。それもまた一つの答えだ」
 なんだかんだ選択を肯定してくれる人だねこの人。
 そしてスタッフクレジット。ED3「旅立ち」を見れた。

 やっぱり「正解」は「黙って去る」だったかー。
 あの父親、支配人の言っていた「うまく言葉が出なくて攻撃的になる人」だったんだろうか。

3周目

 そして3周目。分岐点まで行って、「黙って去る」を選んだら、進展があった。


 あら、美人なお姉さんだ。縦セーターいいね。
「先生」は誰かさんの財布を一緒に探してほしいらしい。

 ということで初めてSTAGE2にたどり着く。
 同級生が4人いると言っていたけれど、もしかして各階にいた客のことだろうか。
 そして彼女は、主人公が通っていた学校の先生らしい。
 家族旅行かと思ったけど修学旅行なのかなー。

 同級生を探せとのことなので、再び虱潰しタイムに入る。間違えて父親のいる部屋を開けたら「邪魔だ」と追い出されてしまった。んだコラ。
 4階の一番奥の部屋に、大量殺人についての記事があった。銃で8人殺したらしい。もしかしてさっきのED? 

 4階を見たので、今度は上から順に下ってみる。
 3階には同級生Dがいた。Dは「僕は財布を盗んでいない」と言っていた。
 2階へ。例の荒れた部屋をのぞいたら、紙片のメッセージが変わっていた。ちょっと不穏な感じ。
 真ん中の部屋にB。「僕はCが財布を盗んでたのを見ました」
 隣の部屋にCもいた。「Dは財布を盗むような奴じゃない」 
 1階へ。Aが「僕は財布を盗んでいないよ」

 全員が正直だと仮定すると、犯人はCだ。しかし、CはDを庇っているので、ちょっといい奴っぽくも見える。となると人間性的に怪しくなるのは告げ口をしているBだが……。

 2階の手前の部屋に、先生がいた。財布を盗んだのは誰か、と聞かれたので、なんとなくBを選ぶと、即座に否定された。そしてまさかの「あなたでしょ? 財布を盗んだの」と言われた。ええ……?

 ち、違うよ! たぶん!

 先生はあろうことか「だってあなたって、あんまり目立たないし、成績もよくないし」と言い出した。えこひいきするタイプの先生だ!
 どこかの部屋にあったあの新聞記事、(犯人は――というやつ)、なんだか主人公のことっぽいな。
 そして現れる3択。2周やって学んだ私は、「黙って去る」ことを選ぶことにした。先生には捨て台詞を吐かれた。嫌な人、と思ったけれど、この人も例の「うまく言えず攻撃的になっている客」なのだろうか。

 部屋から出ると、「上司」が出てきた。書類を紛失して苛立っている様子。主人公はこの人の下で働いていたらしい。
 ここは主人公の精神世界的なところなのかな? とふと思う。
 上司はどうやらパワハラ野郎っぽいので、機嫌をさらに損ねないうちに書類探しを手伝うことになった。再び虱潰しタイム。例の荒れた部屋のメッセージはまた変わっていた。痛々しくてかわいそうな感じ。
 別の部屋(4階)にあった日記も、内容が変わっていた。もしかして学校のときも内容変わってたのかな?? 簡単なことでミスをして殴られた、というようなことが書いてある。やっぱりこれ主人公のことなのかな。

 書類がひととおり揃ったので、上司のもとを訪ねる。ちょっと迷子になったがどうにかたどり着けた。
 そしてやっぱり、感謝されるどころか、罵られる主人公。
 今回も「黙って去る」。

 部屋から出たら、「少女の母親」が出てきた。猫を抱えたセクシーなマダムだ。

 少女ってたぶん、あの三つ編みの女の子だろうな。

 そして探索。例の荒れた部屋を見に行ったら、紙片の文字が「あああああ」と「DDDDDD」になっていた。
 穴を覗いて出るメッセージも「穴?」だけ。主人公、なんか知能下がってる?
 日記も内容が変わっている。人生はかなしい、と書いてある。
 途中、部屋でルームキーを拾った。これで鍵のかかった部屋を探せということか。鍵のかかった部屋、どこだったっけ……。

 だいぶ虱潰しをして、1階の奥の部屋で少女に会った。この子だけだよ、主人公にまともに接してくれるの……。
 連れて行くかどうか選択肢が出たので、「連れて行く」を選ぶ。

 しばらく探して、少女の母親のいる部屋を見つけた。
 少女の母親もやっぱり主人公に冷たく当たる。
 今回も「黙って去る」を選んだ。

 悲しいなあ……。

 何も弁明ができないのは、主人公の性格からだろうか。それとも、ホテルの作用?

 と思って、はたと気づく。この「ホテルの作用」って。このホテルが主人公の精神世界だとしたら、「うまく言葉が出ない」っていうのは主人公の性格(というか思考力?)に由来するんだろうか。深く考えるのが不得手なタイプのようだし。あるいは、彼らの言葉の刺は実は主人公のバイアスによるものだったりしないか。この世界でピストルを渡され、主人公に攻撃するという選択肢があることも含めて、この世界は主人公の認知能力の低さと、それゆえの被害者意識の強さ、そこからつながる攻撃性の強さを表していたりしないか。
 ……認知能力が低い(認知の歪み、バイアスがある)人ほど被害者意識が強く、自衛のつもりで攻撃に走りがちである、というようなことを、前に本で読んだような気がする。あれは確か『ケーキの切れない非行少年たち』だ。境界知能という題材も、本作と重なる気がする。

 そんなことを考えながらまた虱潰しをする。日記には変化がない。とりあえずドアを開けまくっていたら、父親のいる部屋に来た。セリフが変わっている。
「なんであいつが引き取らなかったんだ。邪魔でしかない」
 ここでまた例の「撃ち殺す」「自分の頭を撃つ」「黙って引き返す」の3択。
 もしかして、ほかの部屋の客もセリフが変わっている?
 
 4階から順に下っていると、Dがいた。「仲良いと思われたら迷惑だ、今度から無視しよう」
 2階に先生。「何であの子、私のクラスなのかしら……はあ、本当ストレスだわ」
 B「財布盗みそうって皆言ってたんだよな、日ごろのイメージだよ」
 C「触られて気持ち悪かった……近づかないで欲しい」
 1階。A「あいつ気持ち悪かったな……」
 上司「さっさと辞めるか死ぬかしねーかな、あいつ」

 主人公にかかわったと思しき人たちがみな、主人公に辛辣な言葉を吐く。このホテルが「愛」をテーマにしていることはまず間違いないと思うのだけれど、主人公の周囲の関係性には一切「愛」がない。少なくとも、主人公はそう感じ取っている。

 そんなことを考えつつ部屋をぐるぐると回った。みんな主人公に対して恨み言を吐き続ける。どうすればいいのかわからなくなったので、この段階で改めて全員を殺しまわってみた。
 今回は前回のようにハイにはなっていないので、ごく淡々と。
 そしたらED1にたどり着いた。
 自分の頭も撃ってみた。ED3になった。

 とりあえず父親を殺してから自分の頭を撃ってみた。ED2「放棄」。
 やっと違うEDが見れた。

ED

 煮詰まったかな? と思ったのでちょっと調べてみた。EDは全部で3つと作者の方が言っていたので、これですべてなのだろう。この段階になってしまうと、できることは「全員を撃ち殺す」か「誰かを撃ち殺して8人殺す前に自分の頭を撃つ」か「誰も殺さずに自分の頭を撃つ」かの3択のようだ。どの結末を選ぶかは自分次第。どう転んでも、死刑に処されるか自殺するかして、主人公は死ぬ。

 全編を通して考えたのは、このゲームは「弱者が追い詰められていく過程」を描いたものなのかな、ということだ。主人公は家でも学校でも職場でも邪魔者扱いされ、それ以外の他者からも疎まれ、外界のすべてから拒絶されていた。それだけでなく、自分でも自分のことを認められず、自分は劣った人間だという自己像を抱いていた。主人公は自己の内側にも外側にも居場所を作ることができなかった。
 周囲の人間たちが実際にどの程度主人公に冷たかったかはわからないが、少なくとも主人公がそう感じるだけのものはあったのだろう。あれは実際に主人公がぶつけられた言葉だったのかもしれないし、あのホテルの世界においては、それが露骨になったり、あるいは強調されたりしたのかもしれない。どちらにしろあの世界は、主人公にとっては真実そのものだったのだと思う。
 自身に失望し、他人にも疎まれ、世界のどこにも居場所がないと感じた主人公の末路が「自殺」か「大量殺人」なのかは象徴的だ。ED1と2の主人公は、昨今話題になった「無敵の人」という言葉を体現しているように見える。

 主人公に感情移入をしていたら同情してしまうけれど、現実で主人公のような人間が傍にいたら、私は果たしてどう振る舞うだろうか。客たちが主人公に向けたような冷たい目線を、私は持っていないだろうか。そう思って、少しヒヤッとした。

 現代社会には能力主義が蔓延っている。有能であるか無能であるかというジャッジが頻繁に下され、それによって処遇に差があることがさも当然のように扱われている。
 しかし、人権とは本来、生来の能力によって差があるものではない。その人の能力にかかわらず、誰しもが人間として尊重されなければならない。誰もにとって生きやすい社会を世界は目指さなければならない。
 それはきれいごとかもしれないが、きれいごとが消え去った世界には荒廃だけが訪れる。現に今も、その荒廃に向かって世界は進んでいっているように思う。
 本作は露悪趣味の体裁をまとってはいるが、本質的には「きれいごと」の消えつつある世界に一石を投じた作品であるように感じた。


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