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本当にあった怖い話

 日本では自動車保険の詐欺が話題なようだが、少し前、友達が愛車のBMWの調子が悪い、と話していたのを思い出した。そういえばあんた車、どうしたの?ときいたらびっくりな話が出てきた。

「腕のいい人が安くやってくれるとこあるよ」
と、言ってきた知り合いがいたんだそうだ。
あぁ、それ?うんざりなやつだ。
そういう売り込みに会うことがある。とくに小さい国の出身の人が良く使う言葉だ。彼らは同郷出身者とのつながりが密で、あたりまえのようにそこで利害を融通しあう。非常につよく知りあいを推薦してくるが、そこ受けるサービスの質が良かった経験はあまりない。たいていはそこにお金をはらっても領収書は出ないし、なんだったらサービスを提供した人の身元があやしい。無許可でなんとかとか、みたいな話が出てくる。トラブルのはじまりだ。

今更なんでそんなとこに愛車を預けたかというと親しい人の知り合いだったからだそうだが、気を許してしまったのだろう。しかし、話はここから長くなる。車は修理に結構長い時間がかかるといわれたそうだ。まず三週間。三週間たっても知らせはなく、連絡してみるとまだ終わっておらずもう少し待つことになった。しばらくすると、何通も交通違反の罰金の知らせがきたそうだ。おかしいと思って警察に電話して、今私の車は修理にだしていて手もとにないからこれは何かの間違いだ、というと警察はすぐ、闇の修理屋がよくそういう商売をやるんだけど、あなたの車はおそらく修理先でレンタルされてます、と言ったそうだ。
 私はこの話にすごく驚いた。なんだったらそんなせこい商売を編み出した人が賢いと思ったくらいだ。ないところからお金を生み出そうとする知恵がすごい。
 警察との電話を切った友人は、慌てて修理屋から車を取り返すべく催促の電話をしたが、そこから手もとに戻るまで大分時間がかかった。修理屋は交通違反の話をしても当然しらばっくれる。帰ってきた車は、相変わらず不調で、なんだったら前訴えていた場所とは違う箇所がおかしい。結局いつもの正規店に修理をたのんだら、ところどころ部品がおかしなものにすげ代わっていたそうだ。
 預けてから数か月、その間、レンタルで他人に高級車を使いまわされ他挙句、なんだったら正規部品もとられて調子わるいまま手もとにもどってくるというとんでもない事になっていたわけだ。今でも後部座席の窓が開かない、などと言っている。訴えるそうだが、いかにも怪しいところに預けた弱みもある。正規の店に頼んでいても技術者の腕が悪いとか時間を守らないとか、不満はしょっちゅうあるが、少し金を惜しむともっと訳の分からない収集つかない事態になるという聞いただけで嫌になる例だ。
 大体、交通違反から裏側が発覚したが、その交通違反だって私は犯罪の被害者で、この違反は私の物ではない、という証明をするのがそもそも厄介だ。証明しなければ自分の免許に悪い履歴が残る。もうめんどくさいこと極まれり、考えただけでぞっとする。
 高いもの預けるなら、信用のないところに渡すほど怖いことはない。ちょっとした気のゆるみで、心労と時間と金の浪費としょい込むという泣きたくなるような話だ。


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