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虫歯から学んだ歯磨きの重要性

今日は4ヶ月に一度の歯の定期検診だった。毎回お陰様で特に注意されるところもなく、自分でも歯の健康には自信がある。何か食べると直ぐに歯を磨くことを習慣にしているのが良いのだと思う。

しかしこの「食後直ぐの歯磨き」という習慣、昔から持っていた訳ではない。実は、とんでもない虫歯をきっかけに身についた。

アメリカから帰国後直ぐ東京にいた頃、何となく奥歯が痛む日が続いた。たまたまかもしれないと数日様子をみたが、やはりどうしても痛い。

土曜日でも診療している歯医者を見つけ、早速予約を入れる。当日、まずは問診票を記入。そして次にレントゲン室へ案内され、口の写真を撮られる。

診察室で寝そべっていると、先生が出来たてほやほやのレントゲン写真を持って入ってくる。椅子に座るなり、「ねえ、あなた歯が痛み出したのってここ最近?」とかなり驚いた表情で尋ねられた。

「はい、ここ1週間近く、奥歯が痛むんです」。

「あなた、上の歯も下の歯も、奥歯殆ど虫歯だよ。それもかなりの重症。何本かは神経抜く必要があるかもね。今まで本当に痛くなかったの?これだけの数が虫歯になるって、結構年数かかってるはずだよ」。

「えっ…?」

まさか自分の歯がそこまで大変な状態になっているなんて、想像もしていなかった。しかし何故こうなってしまったのか、私は記憶を辿る。そして、ある事を思い出した。

高校生の頃、友人に紹介されて学校の近くの歯医者に行った。その先生はとても感じの良い方で、「無駄な治療はしない」をモットーにされていた。

ある日、家の手鏡で口の中を覗き込んだ時、奥歯に黒い点があるのを発見した。虫歯であれば早く治療してもらおうと、翌日直ぐに先生のところへ行った。

診てもらった結果、やはりそれは虫歯だった。しかしその先生は、「それはね、言ってみれば虫歯の赤ちゃんよ。しっかり歯磨きすれば取れるから。こんなことでいちいち治療なんかしなくていいよ。アメリカとかイギリスなんてね、みんなちょっとした虫歯は歯磨きで治すんだから」、と言われ、結局治療してもらえなかった。

恐らく、あの時の小さな虫歯を私の歯磨き技術では落としきれておらず、そこからどんどん虫歯が巨大化していったのだろう。そして先生の「ちょっとした虫歯は歯磨きで治る」という言葉を盲信していた私は、それ以来、少々のことでは歯医者に行かなくなってしまっていた。

大学生の頃、アメリカでも歯医者には全く行かなかった。何故ならアメリカでの歯科治療は高額。定期検診なんて行く訳ない。アメリカ人には一部、歯の保険を持っていない人もいる。

だからあの先生が「アメリカ人は虫歯を歯磨きで治す」と言っていたのは嘘ではない。一部のは簡単に歯医者にかかれない人々のために、少々の虫歯は歯磨きで退治できるよう、向こうの市販の歯磨き粉には日本の歯磨き粉よりもフッ素が多く含まれている。

走馬灯のように私の歯科歴史を思い出しながら、レントゲン写真を手に持つ先生に一言、「虫歯は歯磨きで治るって聞いたんですけど。だから小さい虫歯は治療しなくても良いって…」と言ってみる。

当然だが、先生は物凄く呆れた表情をしていた。「歯磨きじゃ治りませんよ。虫歯が出来たら直ぐに治療しないと」。

「そりゃそうですよね。私もそうなんじゃないかと薄々思ってましたよ」、と心の中で答える。

「治療、毎週来れる?かなり重症だから時間もお金もかかるけど大丈夫?」

「はい。折角なので、残らず治療してください」。

それから私は毎週末、数ヶ月に渡り、その歯医者に通い続けた。2〜3本は神経も抜かれた。

一通り治療が終わり、最後の数回は徹底的な歯磨き指導だった。歯間ブラシにフロス、通常の歯ブラシに加え、先の細いブラシ、電動歯ブラシと、何種類もの道具を使って歯を磨くよう教えられた。ブラシを動かす時の力加減まで叩き込まれた。

月に一度はブラシを交換すること、また、何かちょっと口にしても歯を磨く事を徹底するよう言われた。

この先生の熱心な歯磨き指導のお陰で、今の私は虫歯とは無縁だ。そして残念ながら、この先生の歯科医院は閉院されてしまった。

先生がご高齢だったというのもあるが、あまりに徹底した歯磨き指導のせいで、誰も虫歯にならなくなり、患者さんが来なくなってしまったそうだ。

先生には本当に感謝している。そして長年歯磨きに拘って一つ気づいたことがある。それは、高級な歯磨き粉やフロスを手に入れるより、兎に角食後直ぐに磨くことが一番大切だということ。

昔は、一本何千円もする歯磨き粉や、一つ600円ぐらいするアメリカ製のフロスを使っていたが、今使いつけの歯磨き粉は安いクリアクリーンと、フロスもダイソーの物。だけど、歯科検診の結果は、高級グッズを使用していた頃と何も変わらない。

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