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父が私にずっと言えなかった、もう一人の妹の存在。

父は底抜けに明るく面白く、背が高く、かっこいい。音楽家を目指していたが、これじゃ食べていけないと気付いてビジネスを始め、成功。スキーにゴルフにピアノにトランペット。金払いも良く、お人好しで、誰からも好かれる人だった(いや、まだ元気に生きてる)。

「男は稼いでなんぼ。家族にはお金の心配だけはさせない」というのが彼の信条だった。
しかし、それ以外の心配は散々させる。
家族が住む自宅以外に、一人で住むマンションを持ち、基本は一人暮らし、時々家族、時々愛人という三重生活をしていた。

私から言わせれば、「最も結婚に向かない男」だ。

ヤツは、友達だったらサイコー。
家族としては辛い。
夫とかマジありえない。
父親としては、教育費にガッツリお金を出してくれたところは感謝。散々寂しい思いをさせられたし、修羅場も多かったけど。

父は、自分がまぁまぁサイテーだと自覚があったためか、偉そうなことは決して言わず、子どもに理想を押し付けることもしなかった。人間の弱さ強さを自分自身で経験しているので、アドバイスにはいつも人間味があり、素直に聞けるものが多かった。

なぜか私の男友達からも人気があった。
息子がいなかった父は、息子とお酒を飲む憧れもあったんだろうな。「男友達を沢山連れてこい!」と言って、学生では飲めないような高級なお酒を沢山うちに用意して、父と母もフル参加で朝まで飲むような家だった。

そんな自由人な父も、私には言えないことがあった。

私が20歳を過ぎてから、二人で飲みに行く機会が増えた。

ある日、いつものお店で二人で飲みながら、ふと父は真剣な顔をして、
父:「実はな、お前にはもう一人妹がいるんだ。」
私:「知ってる」
父:「え?!」
私:「は?!(バレてないと思ってたのかコイツ)」
父:「いつから?」
私:「小学校3年生くらい」
父:「え?!そうかそうだったのか。ママはもう話してたのか。」
私:「いや違う。昔、知らない人から電話がかかってきて、あなたにはもう一人妹がいるって言われた。」
父:「え"ーー!!!お、おいマジかよ!」
私:「その電話のことは誰にも言っちゃいけない気がして、今まで誰にも言ってない。今初めて言ったわ。重かったわーー」
父:「え”ーーー」
私:「え、じゃないよ、まったく今更。あれだけ家に帰って来なくて、知らない女性から電話はかかってくるし、他に愛人がいるんだなと分かるでしょ、いくら子どもでも。」
父:「そうか・・・そうだったのか・・・」
私:「あーでもこれでもうパパに知らないフリしなくていいんだと思ったら気が楽だわ~。」
父:「すまなかったな・・・」
私:「だな。パパ、結婚に向いてないよ、マジで。」
父:「だよな。オレもしてから気付いたんだよ。」
私:「www」

深夜の六本木。

心を初めてパンツ一丁にした親子の会話は続く。

私:「どんな子なの?」
父:「とってもいい子だよ。お前に似てるな。頭も良いし、ピアノが上手い。」
私:「へぇ~そうなんだ。」
父:「お前に会ってみたいって言ってるよ。」
私:「そっか。」
(この20年後、私はその妹は会うことになるんだけど、それまた別の機会に。)

父が家に全然帰って来なくて、私と母が散々寂しい思いをしてきたこと。
母の泣き顔を見るのが辛かったこと。
母と祖母の期待に応えねば!というプレッシャーが重たかったこと。
色々話した。

最初の方こそ神妙な顔をして聞いていた父だが、お酒も進んで、だんだん心が立ち直ったようで(立ち直りの速さは天下一品)、最後は晴れ晴れとした顔でそれぞれ帰った(父は自宅以外に一人で自由に生活するためのマンションを持っていて、そこに帰るのであって、自宅じゃないw)。

私じゃなかったらこんなに明るく受け止められなかったと思うぞ。感謝しろよ、オヤジ。


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