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特殊建築物用途変更面積拡充による弊害

 これからは業務上日々感じる事を文章にする事で自分自身の考え方のまとめと発信をしていきたいと思います。専門的な事が多いので少しかみ砕いて書いていきたいと思います。同業の方で認識相違がございましたらご指摘頂けますと幸いです。今回の内容は正に現在対応中の事例です。

 令和元年6月25日に建築基準法が改定されました。改定内容はインターネット上に多く出ておりますので割愛致しますが、弊社の業務で一番影響が出た部分が

「特殊建築物の用途変更の面積改定」

 飲食店、店舗、福祉施設等、いわゆる特殊建築物と属される用途に変更する場合、100㎡以下は用途変更に伴う確認申請が不要でしたが、基準法の改定により200㎡に拡大されました。
 先に断っておきますが今から書くグレーゾーンを助長するものでは決してございません。
 これにより用途変更でテナント等に入る場合、ほとんどの場合200㎡を超えない為、確認申請が不要になりました。
が、そもそもなぜこの改定が行われたかというと、

「戸建住宅の用途変更による空家対策」

 これが目的です。戸建住宅の空家。200㎡以下であれば戸建住宅はほとんどがこの規模に含まれる為、確認申請が不要になり店舗、飲食店、シェアハウス等有益に活用されるだろうと見込んで施行されている認識ですが、実際はこの用途変更ではなく、東京都内等テナントが多く建つ事務所ビルの用途変更に活用されてしまっているのが現状だと思います。
 インバウンド需要も含めた用途転用により、空家活用を見込んでいると思われるのですが、実情は木造の場合、構造躯体劣化が激しく転用出来なかったり、空家を活用する目的で使用されていません。勿論全国の状況を把握していないのであくまで弊社の関わる部分でのお話になります。
 弊社も現在用途変更の御相談を頂くので対応させて頂くのですが、行政、消防協議に行くと現在の状況が分かりやすいです。実際、行政担当の方にお話を聞かせて頂いたのですが、問題、訴訟が発生して対応に追われているとの事。

 お恥ずかしい話ですが確認申請を行わないと建築基準法を満たさなくても良いと思う設計者、または施工者が居る様で、用途変更不要により適当に内装工事を行い、後で行政指導等入り建築主と揉めてるそうです。
 弊社では建築主様には必ずお話しておりますが
・建築基準法は用途変更を行わなくても厳守しなければならない
・消防法上の届出は通常通り必要
・各地方自治体による条例等は通常通り申請が必要
 
これから用途変更をお考えの建築主様は是非ご理解頂きたいのですが、上記3点は設計者、施工者が言ってこなくても確認してください。申請、届出を怠るとほぼ高確率で揉めます。確認申請上用途変更を不要にして手続きを簡略化しているだけで、建築する上では必要な事です。
 最悪なことに結果建築主と揉めた場合、事前に行政協議を行っている場合その要因を行政に押し付け、訴訟に発展させる事例があるそうです。行政担当者も本来協議が必要な人達へも責任を持てないからか、基準法改定後、質問には答えてくれますがそれ以上は指導していただけません。
 緩和したことによる弊害が他の部分で発生している事は本末転倒です。

 実際今対応している案件は設計者がきちんと対応しなかった為、建築主様がテナントオーナー様から指摘を受け問題になり、後任として対応させて頂いている状況です。
 前述で揉めると言ったのはあくまで建築主になられる方は賃借人であるケースが多いと思いますので賃借人として責務を果たしていないことになります。最悪な場合、内装をおしゃれに費用をかけて工事したのに、届出等怠り賃借契約破棄という事例も発生しかねません。これだけコンプライアンスが必要な世の中。ビルのオーナー様の立場でしたら当然だと思います。

 これから用途変更をお考えの建築主様に少しでも参考になれば幸いです。
弊社でご相談も受付ておりますので是非お気軽にご連絡くださいませ。

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