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美味すぎてしまった「蝦仁炒飯」(つまり番外編)

SNSでエビたっぷりの炒飯の姿が流れるようになって久しい。皆、興奮気味に「ギリギリひと口で頬張れるほど大きいエビ!」と口をそろえる。写真のエビは確かに大きい。しかし塩釜市の丘の上、住宅地に構える店である。「美味い」の期待の前に「美味すぎない」への期待が勝つ。

「中華菜園 干楽(ほうらく)」への到着は12時ジャスト。渋い店先の暖簾、我々以外に誰もいない店内を目にして、それは最早確信となった。

カウンター以外、全席が朱く廻る中華テーブルの100%町中華。店先のアルコール消毒が令和を物語るも、テレビドラマも「やりすぎ」と遠慮するほどに昭和だ。

オーダーはTLを賑わす蝦仁炒飯(850円)。総勢15種のお品書きのうち6種、つまり40%の品がエビ絡みだ。メニューをどけると、聞いたことのないメーカーの黒胡椒が大袈裟に鎮座する。

使い古されたナイト食品の胡椒缶は既にビンテージ。100点の美味すぎない店だ。ニタリニタリとエビ炒飯の到着を待つ。しかしこの気持ち悪い笑顔はこの後絶望に変わるのだ。

美味すぎなくない…。残念だ。残念すぎる。この炒飯はあまりにも美味すぎる。噂通り大振りなエビ。ブリブリ食感に加えてしっかり下味が乗ってているから、控えめな味付けの炒飯の中で大きさ以上の存在感だ。たくさんのエビは食べごろに悩む必要がない。ちょっと遠慮していると、ラストに向けてエビ過多になるほどに贅沢だ。

蝦仁湯麺。スープに浸ったエビはブリブリに加えてふわふわだ。あっさり味の中で、エビが暴力的なまでに主張する。

気がつくと店内は満席。馴染みの客だろうか。若い店員が店主の孫だと知ると、干楽の素晴らしさを得得と語っている。そしてひと言「この味を絶やしちゃいけない」。店内に居た客の全員が、大きく頷いたように見えた。

サポートいただいたお金で絶妙なお店にランチにいきます。