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美味しすぎない「ラーメンセット」

泣く子も黙る仙台の甘味処「彦いち」である。創業昭和51年。最早老舗と言いたいところだが、私の年齢とほぼ変わらない。互いにまだまだ頑張りましょう、と中年の嫌な連帯感で老害への道を一歩、また一歩と進む訳です。

この準老舗を「美味すぎない」扱いしたら仙台マダムに怒られそうだが、該当するのはラーメンであるからどうか許してもらいたい。でも、甘味処で食べるラーメンセット(900円)が美味すぎる訳がないのだ。

セットになるのは飯ものでもサラダでもなく、選べる甘味である。今日はあんみつをオーダー。粒あん・黒蜜のコールが必要だった。

琥珀色のたっぷりスープの底に、ダムに沈んだ集落の屋根の如く麺がうっすらと覗く。ネギやら海苔やらの散らかり具合が、美味すぎない界王道の見てくれだ。濃い目の醤油味。ツルツルの麺を無心で食べるが、味の感想など特段無い。口の中がいい塩梅に塩味に染まったのを見計らい、黒蜜をたっぷりかけたあんみつに手を伸ばす。甘ったるくなった口でラーメンのスープを飲む。脂分を失ったチャーシューを食べる。箸をスプーンを持つ手が∞(無限大)の軌跡を辿る。このループが延々と止まらない。

遅れて席についた男子大学生の二人組。フルーツパフェと宇治抹茶のかき氷を頼んだ仲良し二人組。「甘味処でラーメンなんて」と馬鹿にした君たちはいつの日か知るのだろうか、美味すぎないラーメンセットが永久機関にもなり得ることを。ゆっくり歳をとるといい。甘味処の塩っぱい味の魅力を知るがいい。

サポートいただいたお金で絶妙なお店にランチにいきます。