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我が愛しのアポロ

19歳と8ヶ月。獣医さんに「人だったら丁度100歳ぐらいだった」と教えてもらった。8月28日13時10分ごろ、我が家のアポロが天に旅立った。大往生だ。でも悲しい。寂しい。正直どうにかなってしまいそうだ。

子どもが居ない我が家。気難しくて人見知りで、喧嘩っぱやいのにすごく甘えん坊で。飼い主に似てしまったスムースコートチワワは、若干毛深いながらも、少し鼻が黒いながらも、紛れもない「我が子」だった。世界一かわいく、よく出来た子だった。よく噛まれたけれども。

そんな小さな小さな我が息子は20年弱の時を経て、あっという間に私たち夫婦の年齢を越えてしまった。まるでタイムふろしきに包んでしまったかのように、よぼよぼのお爺ちゃんになってしまった。キレイな牛柄は白髪混じりになった。目も見えなくなり、呼びかけても耳は遠い。ちょっとした散歩も厳しいほどに足腰は弱った。

だから脳裏には過っていたんだ。しっかり覚悟はしていたんだ。でも頑なに拒み続けたその日が遂にやってきてしまったと言う事実に正面衝突し、その出どころを不穏に思うほど留めどない涙が出てくる。嗚咽を上げるなんていつ振りだろうか。口に出す言葉が言葉に成らない。この週末で妻はひと回り小さくなってしまった。あんなに苦労したダイエット、こんなことで達成したくなかっただろう。

愛息が天に召されて2日が経った。現実に向き合うのが嫌だけど、そろそろ文章に認めることにする。これは前に進むためだ。

今日はラベンダーの香りの線香を買い求め、そのための香炉を探してきた。買い物途中に「アポロは幸せだったかなぁ?」と夫婦で有りがちな問答したのだけれど、当然私たちにその答えを知る由はない。そもそも犬なのでワンワンとしか言わないのだけれども。でもアポロが「パパとママはボクと一緒に居て幸せだったかなぁ?(ワンワン!ワンワンワワワワン!?)」と聞いてくれるのならば、笑顔で大きく頷きたい。何回だって、首が千切れるほどに頷こう。

だからアポロもきっと同じように頷いてくれるかなって。何となく、そう思うことにした。

恐らく近い未来に別の子が我が家にやって来ることだろう。新しい愛犬の姿を通して、もう一度アポロの姿を追おうと思う。ただ歳を取るごとに彼の記憶を失ってしまうのが怖いから、覚えている限りに夫婦と一匹の思い出を書き留めよう。

世界一かわいく、世界一気性の荒いアポロの思い出を暇を見つけて綴っていこう。

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