見出し画像

紅麹サプリは何が悪かった?

小林製薬の紅麹サプリで、世間が賑わっていますね。

恥ずかしながら、私、紅麹について、あまりよく知りませんでした。

紅麹は蒸した米に紅麹菌(ベニコウジカビ/Monascus属カビ)を混ぜ入れ、発酵させた米麹。GABA(γ-アミノ酪酸)やモナコリンKなど高い有効性が実証された機能性成分が含まれているのです。モナコリンKはコレステロールの抑制作用が、GABAは血圧低下、リフレッシュ効果などが知られています。(小林製薬HPより)
実際、悪玉コレステロールが高め(120~139mg/dL)の成人男女60人を、紅麹を含む食品を飲むグループと紅麹を含まない食品を飲む(プラセボ)グループに無作為に分け、毎日、12週間続けて飲んでもらったところ、紅麹入りの錠剤を飲んだグループのL/H比(悪玉コレステロール/善玉コレステロール)が有意に下がったという報告があります。
紅麹の成分でコレステロール抑制作用があるモナコリンKの化学構造式は、主流のコレステロール薬であるスタチン系と類似しています。

日本古来の麴は黄麹。紅麹は中国福建省、台湾、沖縄の一部の地域のみで作られています。紅麹菌は非常に弱い菌で、ある特定の環境下でなければ育たず、さらに雑菌に弱いので培養するのが難しい菌。そのデリケートさから、紅麹を工業的に扱うのは難しいとされてきましたが、グンゼが従来の培養法に手を加え開発し、その技術を小林製薬に譲渡しました。ニュースでは小林製薬は技術を譲渡されるまでやったことがないと報じていましたが、成分を薬にする技術者や共同で研究する大学をHPにて公募していたり、もともと化学会社であることなどから、「製薬会社」であれば、当たり前のノウハウが欠けていたのではないかと、私は推測しています。
被害が出てからの対応も、遅すぎました。

紅麹で発酵させた米に由来するサプリメントの摂取が原因と疑われる健康被害は、欧州で報告されています。EUでは、紅麹菌から生産される有毒物質「シトリニン」のサプリメント中の基準値を設定しており、また、スイスでは紅麹を成分とする製品を巡り、食品や薬品として売買することは違法としています。これらのことからも取り扱いに難しい商品であることがわかります。このような商品をノウハウをもたない会社が扱っていたことが、問題なのではないでしょうか。

また、サプリ大国であるアメリカでは、サプリは、FDA(U.S. Food and Drug Administration)の監視下にあります。サプリについても、同一性、純度、濃度、組成を確保するために、企業が従わなければならないgood manufacturing practices(医薬品製造基準:GMP)を確立しています。
商品製造工場や販売メーカーへの抜き打ち検査や消費者からのクレームの処理も行っており、しかもネット上で情報を公開しているとのこと。

2019年に日本の国民生活センターが市販のサプリメント100製品を調べたところ、42製品が規定の時間内に溶解しないということがわかりました。実際、かなり昔の話ですが、病院勤務の知人が、サプリを溶出試験(胃や腸の環境下で溶けるかどうか)の機器で試験してみたところ、お手頃価格のサプリを扱う某メーカー(製薬会社ではない)は溶けずに残っていたそうです。
つまりサプリを摂取しても、効果が十分ではないということです。

日本はサプリは、あくまでも食品であり、医薬品のような厳しい安全性試験が義務付けられていません。紅麹は機能性表示食品で、効果については、研究があげられていますが、安全性については義務付けられていません。安全性についての論文はありましたが、商品の特性上、継続的に確認しなければならないことを怠っていた可能性もあります。これは今後の調査が待たれるところです。

国がやるべきことは、サプリについても、安全性に一定の基準を設けることなのではないでしょうか。

参考)https://www.suplinx.com/shop/e/e20000019/

https://www.kobayashi-vs.co.jp/benikoji/about.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?