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柱間を壁で覆うのは愛だった。

柱間というものをご存知だろうか。建築用語なので初めて出会う方も多いかもしれない。ここはインスタントに辞書から引用する。

はしら-ま【柱間】
〔名〕柱の中心と次の柱の中心との距離。また、柱と柱の間の空間。
精選版 日本国語大辞典

とあるように、今回の柱間は後者の建物の柱と柱の間の空間を取り上げ、それが「愛だ」の空間であることを述べてみようと思う。

1 . 危ないから塞ぐ

危ないから塞ぐ。言ってしまえば単純かつ自明なことではあるが、詳しくみてみたい。

もし、柱や筋交が全て露出したままの家であったらどうであろうか。
建物の縁を掴めず落ちてしまう危険性も去ることながら、柱や筋交とぶつかって怪我をする可能性も大いにある。

では仮に筋交を多めにいれて建築の縁、どこまでが建物なのか体感できるようにした上で、柱や筋交を滑らかに仕上げ、触ったりぶつかっても危なくないようにしたらどうであろうか。

正直、暮らせると思う。暮らせるけど他にも問題(詳しくは以下で述べる)がある上、工程としても効率が悪く面倒な作業ばかりになってしまう。

したがって、柱間は危ないので壁で塞いでおくのが面倒なく、安全安心である。

2 . 隠したいから塞ぐ

次も単純自明ではあるが皆様と共有するべく丁寧にみていく。

もし、前述の柱と筋交のみの“壁“の家を効率よく施工できる工法が開発されたらどうであろうか。コストパフォーマンスについて考えなくてよくなったらどうであろうか。

いや、それでもまだ問題は明らかに残っている。まず外から中が見えてしまう。文字通りのスケルトン建築となってしまう。時折、スケルトン風の仕上げの家が作られることもあるが、大抵はカーテンをつけてしまうそうだ。

閑話休題。とにかくガラスがあっても隠したくなるのが人間の性であり当然の感情、当然欲しいプライバシーである。

また、どこからでも何でも入ってこれてしまう。虫でも人でも勝手に建物に入られては困ってしまう。ここはなんとしても守っておきたいところである。

となると、どんなにコストパフォーマンスがあがろうともスケルトン建築にはせず、柱間は壁で塞いでおくのが安心安全である。

3 . 快適のために塞ぐ

最後に快適性。急に漠然としたテーマに感じられるかもしれないが、温熱環境のことである。すなわち暑すぎたり寒すぎたりしないように塞ぐ。というこれまた単純かつ自明の理由ではあるが、最後なので何卒お付き合い願いたい。

前述までの柱間の塞ぎ方をすると、コストパフォーマンスのために、ほぼ紙のようなただし透けはしない壁を設置する可能性も出てきてしまう。
もしそうなったら何が困るだろうか。

まず寒いと思う。そしてなんと暑い。どういうことか。
壁が薄いと外の環境に影響をもろに受けてしまうのだ。

では逆に壁を厚くしまくって保護しまくったらどうなるか。
まず家が狭くなる。また通気性も悪くなり壁の中でかびたりする可能性が増えそうな気もする。壁の中で温度差ができすぎてしまうのもよくないのだ。

さらに単純にお金がかかる。壁代としても、厚い壁の中で生活空間を維持するための広大な敷地代としても。これはコストパフォーマンスに欠けてしまう。現実的でなく経済的でない。

とにかく厚くしすぎてもダメなのだ。ではどうするか。
断熱すればいい。

どういうことか。壁を二重構造にして間に断熱材を仕込み温度差による影響を緩和させるのだ。温度差による影響を緩和できると、断熱という防寒のような工程を踏んでも、冬は暖かく夏は涼しく過ごせるのだ。

身近な例をあげると、地下室の温度が一定であるという有名な話。その理由は、地面の中にあり地面で断熱されているから。つまり壁を外壁内壁と二重構造にした上で、間を断熱することで建物内の温熱環境をコストパフォーマンス良く一定に快適に保つことができるようになるのである。

したがって、柱間は壁(と断熱材)で塞いでおくのが安心安全である。

4 . まとめ

以上で述べた通り、柱間というのはうまく塞いでおくのが愛であり、アイデア(であ)り、間である。間は愛だった、というお話でした。


文責  宵陶子 (YOIMACHI Toko)

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