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アートのみかた

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図工や美術の授業が少なくなる日本。ですがどうやら世界では、サイエンス重視の意思決定では不十分だと感じ美意識を鍛える上位層がいるようです。このブログは、歴史上の偉大な画家たちをテー…
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#アートのみかた

【アートのミカタ30】シャガール Marc Chagall

【概要】100年前のアバンギャルド 絵画にイラスト、舞台デザインに陶芸、タペストリー、版画、ステンドグラス。さらには絵本まで。ジャンル問わずに活躍したロシア出身の画家。 さらにアウトプットが多彩なだけでなく、影響を受けたスタイル(インプット)も多彩です。 キュビズムにフォービズム、表現主義、シュルレアリズム…。 様々な前衛芸術に触発され、独自解釈から展開していたシャガールの作品は、どれも独創的でまさにアバンギャルドと言えるのではないでしょうか。 時代的にはエコール・ド・パ

【アートのミカタ29】ジョット Giotto di Bondone

【概要】暗黒時代の巨匠 何世紀も失っていた芸術に再び日の目を見せたフィレンツェの輝き。 そう賞賛したのは14世紀の小説家ボカッチィオです。(『デカメロン』というインパクト大のタイトルを書いた人) 現代の私たちにとってもっとも難解な芸術の時代であると言っても過言ではないかもしれません。なにせこの中世時代に描かれた絵画には、現代には見慣れてしまった写実性や内容の意味深さを全く感じられないからでしょう。 しかしこの中世(あえて暗黒時代と使いましたが)において、ジョットの存在はと

【アートのミカタ28】イワン・クラムスコイ Ива́н Никола́евич Крамско́й

【概要】北のモナリザを描いた人彼の名がマイナーなのは、我々日本人がまだロシア美術をあまり知らないからでしょう。 彼の代表作『見知らぬ女 Unknown Lady』を語るだけでも充分一記事かけてしまいそうなほど素敵な作品です。この邦題がとっても素敵ですし、この女性に隠されたストーリも、なんともロマンチック。 見知らぬ女 Unknown Lady 1883 ですがこのストーリーは後半にとっておき、まずはクラムスコイの生きた背景から芸術の軌跡を辿っていきましょう。

【アートのミカタ27】クリムトGustav Klimt

【概要】エロい女と金ピカ装飾前回、モローのという画家の紹介に「ファム・ファタル(悪女)」の話に触れました。今回題材とするグスタフ・クリムト(1862-1918)もまた、ファム・ファタルをテーマに掲げた作品が目立ちます。 クリムトの作品は、女性自身はとっても写実的に描かれている反面、装飾や背景がとっても平面的です。これはモローの時にも似たような感覚がありましたが、クリムトとモローの違いといえば、何と言ってもこの豪華な装飾です。 ユディト(1901) この作風に至ったウ

【アートのミカタ26】モローGustave Moreau

【概要】悪女の達人モローという画家を語るには、「サロメ」について語る必要があります。 何故ならこの神話に登場する、どちらかというと母親にそそのかされた慎ましやかな娘が、モローの手によって悪女へと堂々イメチェンを果たしたからです。 サロメとは(詳しくはリンク先をご覧ください。) 洗練者ヨハネにイビられた女性が、腹立たしさの末に「あいつの首チョンパしたいわ」と娘に告げて。その娘(サロメ)が本当に皿に男の首持ってくるというエピソードがあります。 西洋絵画は得てしてあまり喜怒哀

【アートのミカタ25】ボッティチェリ Sandro Botticelli

【概要】初期ルネサンスの巨匠彼の名は知らなくとも、この代表作に見覚えのある人は多いのではないでしょうか。15世紀前半から16世紀、正にルネサンスがノリに乗ったイタリアで活躍した画家です。ルネサンスといえば、レオナルド・ダ・ビンチより7歳年上ですね。 当時の基準からは珍しく、多彩なジャンルを描いていたマルチな画家だったそうです。宗教画・神話・寓話・肖像画・さらに文学的テーマを描いた作品など。教会や公的機関、王侯の一族など、依頼主も素晴らしいものだったようです。 現在では知ら

【アートのミカタ24】万葉集

【概要】令和で注目の和歌集新元号が決まり、その繋がりから万葉集が注目を集めています。 中国から借りてきた漢字を、自分達が使っていた口語言葉で読まれることで発展しました。その歴史の中で生まれた日本最古の歌集ですね。 「万」とありますが、実際には一万首もあったわけではなく、約4500首(全20巻、当時は巻物)なのだそうです。 さて何故、この「アートのミカタ」で歌集を取り上げるのかと言うと。 「美術」という言葉は元々輸入されたものです。西洋では人々の意識統一のために宗教を使い、

アートのミカタ全集

美術が好きだけど苦手意識のある人に向けて、芸術の本質を書きながら解説していく【アートのミカタ】。 毎週書き溜めていますが、今回は目次としてご活用いただけるような記事を作成します。(随時更新) 年代順:現代 年代順:20世紀

【アートのミカタ17】増田 セバスチャン Sebastian Masuda

【人物】きゃりーちゃんを支える芸術家篠原ともえ、きゃりーぱみゅぱみゅなど、日本独自の「かわいい」を発掘したアーティストです。 1995年に"Sensational Kawaii"がコンセプトのショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン以来、20年以上「かわいい」を追求し続けています。その作品は、どれも蛍光色をボリュームたっぷりに盛り付けたものばかり。 ファッショナブルな分野こそ、アートに苦手意識のある人たちには「これのどこがオシャレなのかさっぱりわからない」との声が大

【アートのミカタ16】五美大展DM

【概要】Twitterバズり案件 毎週書いているブログですが、今回はちょっと異質な題材で行こうと思います。 「五美大展」とは、多摩美術大学、女子美術大学、東京造形大学、日本大学芸術学部、武蔵野美術大学といった、東京の私立美術大学が合同で行う卒業・修了制作展です。 私はデザイン系の学科だったので、ゴビテンは関係なかったのですが。 これまで美大出身者、またはそのご家族にしか恐らく認知されていなかったであろう卒展が、今年は恐ろしく話題に上がっているようでした。 思わず二度見して

【アートのミカタ15】ルーベンス Peter Paul Rubens

【人物】超王道インテリ17世紀で最も国際的な名声を得たバロックの画家、ルーベンス。 貴族画家として肖像画や神話画などを描いていただけでなく、建築家・外交官など、彼の才能は多岐にわたり発揮されたと言います。 絵に描いたようなインテリ人生を歩み、絵に描いたように貴族に賞賛され、他の画家とは一線を画した人物です。 「フランダースの犬」のラストシーンでおなじみの画家といえば、多くの方に伝わるでしょうか。 ペーテル・パウル・ルーベンス「キリスト降架」1633年 しかし、当時の

【アートのミカタ14】宮本武蔵 Musashi Miyamoto

【人物】剣術/兵法/芸術家江戸時代初期(天正 12年/16世紀-17世紀)の大剣豪であったことを知る人は多いと思います。 しかし宮本武蔵が剣術を教授する兵法家であり、はたまた剣術を極めた行先に芸術的思想を見つけ、芸術家としての才能を開花させた事実をご存知のかたはどれほどいるでしょうか。 江戸後期の書物『画道金剛杵』の『古今画人品評』という項に、数々の画家と名を連ねる程でした。 「気象を以って勝るものなり」 と評されていたとのこと。現代訳するならば「気性によって成功した」とこ

【アートのミカタ13】フセイン チャラヤン HusseinChalayan

【人物】動く服?光る服?腐る服?斬新で先進的な服を追い求めるファッションデザイナー。 どれもコンセプチュアルな作品ばかりで、衣食住を満たすものという以前にアートであることを強く感じさせられます。 しかし同時に、その服にこめられた思いは自己表現の一端ではなく、社会や環境を投影し訴えかけるようなデザイン思考から形成されているのではないでしょうか。 ブランド「Hussein Chalayan」現在のChalayanを立ち上げ、今もエッジの効いた服を発表し続けています。 これまで

【アートのミカタ12】ジョルジュ・スーラ Georges Seurat

【人物】新印象派の点描画家19世紀の新印象派主義の画家として知られているスーラ。 『グランド・ジャット島の日曜日の午後』が象徴的で、明るい点描画を好んで描いていた画家と言えるでしょう。 とっても若くして(31歳)亡くなってしまったのですが、それを感じさせぬほど大作を世に残してくれました。彼が髄膜炎で倒れなければ、一体どれほど大きなな功績を残していたでしょうか。 「新印象派」と名前からわかる通り、彼は印象派(*1)の影響を大きく受けていました。彼が点描に行き着いた経緯や、これ