見出し画像

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』を全話観た感想(原作未読)

 いやあ、意表を突かれた。とてもいい意味で。観始めたときは所謂”きららアニメ”でしょう?と上段に構えていたものでして。

 まず言うと、めっちゃ面白かった!

 しかし、面白かった、という表現が適切かどうかが不鮮明。いや面白かったんですけどね、それを感想の中心に据えていいのかどうか悩んでまして。

 もう少し踏み込んで考えてみると、印象深いのは複数回見返す行為に対するストレスの少なさ。けっこうリピートしてます、作業用BGM気味に。

 それはなぜだろうか? と考えたときに、「全体のテンポ感の良さに起因するのではないか」と思い浮かんだ。言い換えれば構成の妙とでも表現するのだろうか。この辺を、素人の身振り手振りで掘り下げてみたい。


 恥ずかしながら原作未読ではあるが、原作が4コマ漫画であることは前提知識として把握している。そしてその前提がアニメへの期待値を下げることにもつながっていた。

 4コマ漫画の良さは区切りの短さに起因したストレスの少なさである、と個人的には考えている。それをテレビアニメの各話30分全12話という形式に落とし込んだ時、それらの噛み合わせは悪いと考えているためである。

 30分続く映像(CM等を考えると全体24分、前後半パート10分前後に区切られるのだが便宜上1話=30分とさせてください)に4コマ単位で区切りのつく話を真っ正直に詰め込んだとしても、それでアニメが成立するとは思えない。それがなぜかを一目に納得させられるような説明をここで繰り出すことは叶わないが、ともかく思えない。感覚の話である。

 そこをいともたやすくクリアしてくれたのだ、『ぼっち・ざ・ろっく!』は。……『ぼっち・ざ・ろっく!』はちょっと長い。頻発した際に備えて、以下では『ぼざろ!』と表記する。こういう愛称みたいなやつはあんまり好きではないのだが、便利に使っていきたい。

 まぁ、つまり、その辺が肝である。4コマ漫画のテンポ感をテレビアニメに落とし込むことに成功しているのではないだろうか、それがアニメ版『ぼざろ!』の面白さの核なのではないだろうか。
 
……と言いたいのだ。肝がふわっとしていて申し訳ない。

 これが各話単位で構成された作品であればまだいい。4コマでの区切りがもっと明確な、ギャグ要素の強い作品だともっといい。テンポ感のチューニングを合わせやすいからだ。

 例えば『キルミーベイベー』なんかはこの枠だ。最初は恐ろしくテンポ感の悪い作品だったが、徐々にチューニングを合わせて、最終的にはかなり手触り良く観て楽しむことができた。そうやってチューニングを合わせることができたのは、あくまで4コマ単位で計上できるギャグの歯切れ良さが核になる作品であるからではないだろうか。

 ところが『ぼざろ!』はそうはいかない。……と思う。先述したが自分は原作未読。この話に必要な補強である『原作を読んだうえでアニメと比較する』が全く成立しない。それを理解したうえで読んでいてほしい。ここまでもこれからも。

 『ぼざろ!』は、かなり縦軸の要素が強い作品だ。もうなんかいろんな負の表現の当てはまるギタリスト後藤ひとりが、自ら不意に起こした行動をきっかけに結束バンドというバンドへ加入して少しずつ環境や自信を変化させていく(のだが、結局ひとり自身が大きく変化することはないのがいいところ、あくまでほんの少しだけ)。

 要所要所ではギャグやシリアスが表現として差し込まれる。一言で歯切れよい台詞も多い。それは、元が4コマ漫画であるためにオチの必要な回数が増えるからだろう。

 それらを包括してなお、後藤ひとりと結束バンドを取り巻くストーリーは縦軸として成立するくらい強いのだ。そのうえで、アニメはきちんとまとまっている。それがすごいと思ったのだ。


 ……なんて素人考えをこねくり回してしまいたくなるくらい、普段見ないジャンルを開拓できたような快感を伴う面白さだった『ぼざろ!』。
 でもこれで”きららアニメ”の良さ分かった!とは言えない気がするので気をつけたい。

 アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』はAmazonプライムビデオ等いろんなところで配信中。たぶん大体見られる。詳しくは公式をチェック。
 ↓配信サイトがチェックできるページ↓

 アニメを観てハマった人やとりあえず金を突っ込む剛毅なオタクには結束バンドのフルアルバム「結束バンド」がおススメ。全14曲は普通にロックバンドのフルアルバムじゃないですか? すごい気合だ。みんな買おうぜ。
 ↓アルバム情報が載ってるページ↓

 こんなところでしょうか。

 『ぼざろ!』、万人に受け入れられる「努力、挫折、成功」という面白さを鼻につかない程度に漂わせた良作ではないでしょうか。アニメ2期に期待したいところ。とりあえず自分は原作を買ってきます。

 それでは失礼いたします。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?