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日本におけるベーシック・インカムの形

今回はこの話題で行きます。NPのオフ会でお会いする方々に、僕と言えばベーシック・インカム(の反対派)としてすっかり名が知れたようですので、反対派が語る「日本におけるベーシック・インカムの形」とは?という話をしたいと思います。

まず、ベーシック・インカムとは何か。この定義がいつもブレています。それのどれが出来て、どれが出来ないのか。それをキチンをここで、改めて分類しながら話そうと思います。

① 本来のベーシック・インカム

政府が「全国民に」最低限の生活を保障するためのお金を「永続的に」支給するのが本来のベーシック・インカムです。僕が不可能であると言っているのはこれです。こちらについてはすでに試算した結果があります。

https://newspicks.com/news/2542415

詳しくはそちらをご覧いただければと思いますが、このベーシック・インカムは財源確保の関係から、現行の社会保険を廃止する以外に実施する方法が無く、それゆえ健康保険や国民年金/厚生年金が廃止されでもしない限り実施が不可能です。ベーシック・インカムは社会保障ですから、弱者を保護しなければ意味が無いわけで、老年者に現在と同額の年金を払うように調整すると、どうにも足らないという話。よって、この定義でのベーシック・インカムは日本において絶対に不可能です。

② 実質的に「生活保護」を代替するものとしてのベーシック・インカム

世界各国で導入実験が行われているものには以下のようなものがあります。

https://www.businessinsider.jp/post-528

このほかにも検討中のところとしてハワイがあります。また、導入が検討され国民投票によって否決されたスイスの事例もありますね。対象を絞って実施するにあたり、わざわざ裕福な層を狙って支給する意味は乏しいので、基本的には生活の基盤が弱い層に対して払うのが王道です。ただしこんな実験もあります。

https://www.businessinsider.jp/post-105138

アメリカのベンチャー・キャピタルが大規模な実験を行います。無作為に抽出した人々に対して最大5年間の給付を行います。

後者は基本的に、実験の結果を見てその効果を検証し、①の概念によるベーシック・インカムの実施是非を検討するための実験ですので、どういう結果になろうが財源問題によって、日本では導入が出来ないものです。ま、他国でもできないとは思いますが、そちらまで僕も検証してませんので「他ではできるかもしれんけど」という保守的な言い方してます。

では、実質的な生活保護にあたるベーシック・インカムによって代替される元となる現行制度にはどのようなものがあるでしょうか?

α 生活保護制度

生活保護制度の仕組みについてはタンクトッパーさんのこの記事が詳しいです。

https://newspicks.com/news/2011937

一部ご意見を抜粋しますと、複雑だがキメ細やかということもでき、被支給世帯に対して現金支給以外の支援を行うためにも、この複雑さは不可欠。

そもそも生活保護について報道される際には、負の情報しか伝わってきません。しかし、生活保護受給者213万人 https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_soc_general-seikatsuhogo

に対し支払っている約4兆円の中で、不正支給はわずか0.45%に過ぎません。 https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20170202-OYTET50054/

不正受給自体は非難すべき問題ですが、少なくとも制度が破たんしているとか、不正だらけだからやめるべきとか、そういうレベルには一切無いということがわかります。

ただし大学に進学するのが実質的に不可能だということで、政府が30万円の支給を行うという話になっていて、これにも批判がありますね。僕はこれについては堀江さんに賛成です http://www.huffingtonpost.jp/2017/12/12/horie-hogo_a_23304433/

ただし、生活保護は就労促進する仕組みになっていないことは欠点。病気・障害・育児等の就労不能なことが明らかでない家庭には、生活保護はそぐわないです。そこでそういうところには限定支給の・・・

β 失業保険制度

制度の詳細はこちら https://www.situho.com/cat2/post_20.html 。こっちがあるわけですよね。つまり、制度上はすでに”できている”わけです。

つまり②の観点によるベーシック・インカムは、すでにある制度で行けばよく、あとは微調整の世界です。

ま、ガッカリですやね。結局、今の制度の微調整レベルでやろうよという話なんです。とはいえ、この話は「働かざるもの食うべからず、ただし働けないものも食えるべし」という概念に基づくもの。ベーシック・インカムは働く・働かないにかかわらず生活を保障するべきという考え方なので、本来はやっぱり①なんです。働きたくなくても生活を保障すべきというのが理念。やっぱり②をベーシックインカムと呼ぶのは間違っていると思います。なので僕はこれをちゃんと区別しなさい、と言っているわけです。

というわけで結論。生活保護や失業保険といったセーフティネットは、微調整は行うものの基本的には機能しており、実現不可能なベーシック・インカムの夢を見ることはやめましょう、そして二つを混同しないようにしましょうということです。

なぜ今日という日にこれを書いたか?

初夢に、叶わない夢を見てもしょうがないでしょう?だから今年のうちに、この夢は叶わないことを知っていただくためです。

ではでは。良いお年を。

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