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仔羊の火入れ

私が仔羊を焼くときに心がけていること

脂と筋にガッツリと火を入れ、周りをグッと引き締めて肉汁を表面に滲ませる
骨をつけたまま焼くが、提供時には骨を外してご提供する
正確にいうと、理想の火入れをする時に骨を最大限利用するので、ご提供時は骨は焦げ焦げなのでお客様にはご提供できない

私の肉全般の火入れに共通することは、火入れの85%にいくまではなるべく肉の表面を縮ませないよう低音のオーブンでゆっくりと火を入れる
お客様にご提供する直前に高音の鉄板【フライパン】で香ばしく焼く
更に稲藁を使い、炎と煙を纏わせながら肉の表面に焦げ味と香ばしい香りをつけることもある

脂と筋の部位と中心の芯は分けて火入れ
稲藁を使い肉を燻す
しっかりと脂と筋に火を入れ切った状態

仔羊に限っては骨付きで焼くので骨に接している部位、カットした断面は焼かないので、コントラスト出すために仕上げの焼きをかなり強めにすることを心がけている

真空包装機、低温調理器の普及でご家庭でもしっとりとした焼き上がりにすることができるが、そこからの肉を引き締める行程こそが美味しさのレベルを左右し、シェフの考え方が反映される

仔羊は香りが苦手という方が多いが、主な原因は脂、筋の加熱不足、またそれにより口の中での食材の咀嚼回数が増え、味や香りが薄まる分、肉本来の生々しい野生味を感じることによると私は考える
わかりやすい表現をすると、固い肉をご飯や汁物で飲み込むように食べた経験があると思うが、肉を美味しいと思える咀嚼回数を超えて、口内から胃に移動させたいと思う時であると思う

以上の理由から、私は肉の火入れは勿論最大限に気にするが、火入れ以前に肉の筋、脂をどのように調理するかに力を入れている

今回の仔羊の料理で使用しなかった肉の端材はミンチにして賄いやイベントでパスタなどに加工している。無理やり一皿で全てを表現させようとすると、一皿の作品に調和が取れなくなる

イベント【無限パスタ】でご提供した白いボロネーゼ

今回の春のディナー、メインディッシュの仔羊
主役の芯の部位にあわせるのは

筍、山椒、スナックエンドウ、レモンの皮の塩漬け、自家製粒マスタード、牛蒡のソース、オリーブオイル

春の食材の青々しさ、苦味やエグ味、深みを組み合わせ、一口食べるごとに仔羊の美味しさの引き出しをあけていくような一皿

ソースは鶏手羽と牛蒡、玉葱、ニンニク、水だけで作るシンプルなジュ
そこに付け合わせたマスタード、レモン、山椒などが混じり合うごとにソースも様々な味わいに変化していく。盛り付けもその動作が自然に行われるような配置に意図的に盛り込む
沢山食材が羅列しているが意味のない食材は全く入っていない

完成度の高い料理を一皿作るのは難しく、とても時間がかかるが、レストランでレギュラーメニューともなると同じ料理を何千回と作り、沢山のお客様がお召し上がりになり、スタッフも長期間その料理を作り続けることが、修行でのベースであり、勉強であり、能力にもなるので一切妥協することはしない、超自信作といいきります

だいぶ長くなりましたが、すごく思いのこもった作品です

noteでは、YouTubeではお見せすることが出来ない私の料理感の芯の部分を表現していきます

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