ドラマ「And Just Like That」に自身をノンバイナリーと自認するキャラクター「Che」が登場

「Sex and the City」の続編ドラマ「And Just Like That」が動画配信サービス「HBO Max」で2021年12月9日から配信開始された。日本では、U-NEXT、amazon prime video、Rakurten TVなどの事業者で配信をしている。DVDでも視聴できる。筆者がAnd Just Like Thatを視聴したら、ノンバイナリーを自認するキャラクターを見付けた。今回は、And Just Like Thatに登場するノンバイリナリーを自認にするキャラクターについて紹介する。

「Sex and the City」は、Carrieと友人のCharlotte 、Miranda、Samanthaの日常と恋愛についてコミカルに描くドラマである。「And Just Like That」は、2010年に公開された映画「Sex and the City 2」の11年後を描いたドラマ。今回のドラマではCarrie、Charlotte 、Mirandaと共に新キャラクターの1人としてノンバイナリーを自認するChe Diazが登場する。

ノンバイナリーを自認するキャラクター

And Just Like Thatに登場するノンバイナリーを自認するキャラクターは、Che Diaz(以下、Che)である。

Cheはコメディアンで、Carrieが出演するPodcast番組の司会を担当する。第1話のPodcast番組を収録するシーンでCheは、自身のことを「クイアでノンバイナリー」と言う。

Instagramで公開された第1話でPodcast番組を収録するシーン

第2話のCarrieの夫であるJone James Preston(ドラマ内では、愛称であるMr. Bigで呼ばれることが多い)の葬式でCheは、Mirandaと出会う。Mirandaに「Cheは、Che GuevaraのChe?」と聞かれたCheは、「Cherylの3文字。後ろは取った」と名前のことを説明する。

第3話でMirandaは、コメディアンとして舞台に立つCheに惹かれる。

Instagramで公開された第3話の舞台に立つCheのシーン

その後、CheとMirandaはCarrieを通して度々会うようになり、恋人として付き合うことになる。

Cheの人称代名詞は「they / them」

CarrieとMiranda、Charlotteの3人でCheについて話すシーンが2つある(第5話、第6話)。そのシーンでCheの人称代名詞が何かをCarrieがMirandaとCharlotteに教えていた。

第5話
MirandaとCharlotteは、股関節の先天性の異常のため手術を受けたCarrieの病室に見舞いに行く。Carrieが病室の中にあるお手洗いに行っている間にスマホにCheから電話がかかってくる。Carrieの代わりにMIrandaが電話に出る。MIrandaは、CarrieにCheから電話がかかってきたことを伝える。その時にCheの代名詞を「She」と言ってしまう。Carrieは、MIrandaに「Cheの代名詞は、They」と教える。Mirandaは、「あっ、そうだったね」という感じで苦笑いする。

CarrieがMirandaにCheの人称代名詞について教える時のセリフ
英語:And It's not "she," It's they.
日本語吹き替え:それに彼女じゃなくて、彼ら。単数形の彼らが代名詞。
日本語字幕:それに彼女じゃなくて彼ら。単数形の彼らよ。

第6話
Carrie、Charlotte、Mirandaの3人でランチをする。ランチしながらMIrandaは、手術を受けた病院から自宅に戻った後のCarrieのお世話をしにCarrieの家に行った時にお見舞いに来たCheとセックスしてしまったと話す。その会話の中でMirandaがthemと言う。そしたら、Charlotteが「Them? There are others?(他にもいるの?)」と複数形のthemだと思ってしまう。そこでCarrieは、MIrandaが言うthemがCheの人称代名詞としてのthemであることをCharlotteに教える。Charlotteは、themが複数人ではなくCheのことを指し、複数人と浮気したわけではないことを理解する。しかし、MirandaがCheと浮気まがいなことをしたことに変わりないことから、「OK.」とだけ言う。

CarrieがCharlotteにCheの人称代名詞について教える時のセリフ
英語:She's using "them," as In Che's pronoun.
日本語吹き替え:ミランダが言ったのは、Cheの代名詞としての彼ら
日本語字幕:彼らはチェの代名詞

Carrieは、MIrandaとCharlotteにCheの人称代名詞について第5話で主格がthey、第6 話で目的格がthemと教えている。

英語のセリフとしてノンバイナリーを自認するキャラクターの人称代名詞「they / them」を日本語訳では、「彼ら」となっている。

英語:And It's not "she," It's they.
日本語吹き替え:それに彼女じゃなくて、彼ら。単数形の彼らが代名詞。
日本語字幕:それに彼女じゃなくて彼ら。単数形の彼らよ。

上記の日本語吹き替えのセリフと日本語字幕に元々のセリフにはない「単数形の彼らが代名詞」が追加されている。このことから、日本語版製作者の配慮は伝わる。しかし、日本語訳は再考する必要があるのではないかと思う。「彼ら」と訳さないで、日本語訳はそのまま「they / them」にしてほしい。
英語では性別を特定しない三人称単数の人称代名詞として「they / them」が用いられている。この「they / them」にあたる日本語が一般的に用いられていない現状がある。そのため、現状は「彼ら」と訳さないで、日本語訳でも「they / them」にしておくことが英語のセリフから伝えたいことをできる限り伝える方法になるだろう。
label Xでは、性別を特定しない三人称単数の人称代名詞(例えば「they / them」)にあたる日本語を「彼の人かのひと」や「彼人かのと」にすることを提案している。

Che Diazを演じる俳優

Che Diazを演じる俳優は、Sara Ramirezさんである。NBC NEWSの記事によるとSaraさんは、2020年8月28日にInstagramに ハッシュタグ #Nonbinary を付けた写真を投稿して、ノンバイナリーであることを公表した。
公表後は、Instagramのプロフィール欄に「they/them」を記載して、この人称代名詞を使用してほしいと意思表示している。

Saraさんは、HBO Maxや雑誌「People」のインタビューを受けて、And Just Like ThatのChe Diaz役について語った。

雑誌「people」のインタビュー内容を日本語訳で伝えたELLE girlによると、Saraさんは下記のように語った。

雑誌『ピープル』のインタビューでこの役を演じた感想を語った。「私の本質にしっくりあっていて自然なことに感じられた。ディアズも年齢を経てからノンバイナリーだと告白している。それに本当の自分について遠慮することなく語っている。私の力を停止させるようなシステムに対しても私は力を持っている。この役はその力をどう受け入れるのかについて私に教えてくれた」。

https://www.ellegirl.jp/celeb/a38585048/satcand-just-like-that-sara-ramirez-21-1222/


ここ数年アメリカでは、以前放送していて、一度は終了したドラマの続編やメインキャラクターの中の1人を新たな主人公としたドラマが制作されている。そのドラマの1つであるAnd Just LIke Thatは、自身をノンバイナリーと自認するキャラクターCheを登場させた。Cheの登場で前作のSex and the Cityでは扱わなかったジェンダー・アイデンティティーを扱うようになった。Cheだけでないキャラクターのシーンでもジェンダー・アイデンティティーに関するセリフが出てくる。このドラマを通してジェンダー・アイデンティティーが多様であることを知る機会にしてほしい。

リンク
And Just Like That 公式サイト(日本):https://warnerbros.co.jp/tv/and-just-like-that/
NBC NEWS「'Grey's Anatomy' star Sara Ramirez comes out as nonbinary」:
https://www.nbcnews.com/feature/nbc-out/grey-s-anatomy-star-sara-ramirez-comes-out-nonbinary-n1238692
ELLE girl『サラ・ラミレス、SATCの続編ドラマ「And Just Like That…」でノンバイナリーのキャラクターを演じた心境を語る』:https://www.ellegirl.jp/celeb/a38585048/satcand-just-like-that-sara-ramirez-21-1222/

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記事執筆者:ハマカワアツキ

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